ひと昔前までは計器進入方式といえばNDB(ADF)アプローチ、VORアプローチ、ILSあるいはLOCアプローチぐらいのものでした。
ところが最近はあまり聞いたことがないアプローチがチャートで設定されていることがあります。RNAVアプローチはどこでも行われていますが、RNAV(RNP)アプローチは運送事業の航空機でよく使われています。進入経路に曲線を設定できるので便利です。このブログや動画でも何回か取り上げています。
しかしRNAVにしろRNAV(RNP)にしろこれは衛星のデータ(GNSS、一般にはGPSとよく言われます)を使いますが、衛星のデータの精度を上げる機能は航空機自身が持っています。ただこれだとILS進入のような精密進入並みの精度が出ません。そこで衛星のデータの補強を補強衛星で行う方式と、地上からVHFの電波で行う方式があります。前者がSBAS、後者がGBASで、SBASを使うのがLPVアプローチです。LPVアプローチはこのブログでも紹介しましたが、非精密進入でありながら精密進入並みあるいはそれ以上の低い決心高度を設定できます。これはRNPのように特に許可がいらないので自家用の操縦士でも飛ぶことができます。
そして今日紹介するのがGBASを使ったGLSアプローチです。FAAのHPに出ていますが、地上に設置した複数のアンテナを通じて衛星および航空機との通信を行い、VHFの電波を使って正確な航法データを提供します。ILSと違うのはILSは滑走路ごとに電波設備が必要ですが、GBASを使ったGLSアプローチでは複数の滑走路への誘導を1セットの電波設備で行えるという点です。しかもそれは1つの空港に限らず、半径23マイル以内の空港をカバーします。そして精度は現在はCAT1ですが将来的にはCAT2/3の精密進入まで可能です。したがってILSに比べて設備の設置が大変安上がりですし、当然保守もずっと楽です。さらにこの方式だと滑走路の中央部に接地させる進入経路を設定することが可能です。離陸用に滑走路が長い場合、着陸はもっと滑走路の中央寄りにした方が効率的なことがあります。さらにそうすれば降下中の高度が高くなって騒音防止にも役立ちます。こういう場合もGBASを使ったGLSアプローチで設定することができます。
さらにICAOの資料にあるように最終進入に気圧高度計を使わないのでQNHの設定や気温と独立に降下経路が決まるため、極寒の進入時に役立つはずです。
で、X-Plane11では何とZIBOのB737-800にこのGLSで進入する機能が備わっています。ZIBOのB737-800はこのブログや動画でも何回も紹介しています。たとえば日本では羽田空港で試験運用が始まっています。GLS RWY 34Rアプローチです。IAFがKAIHOの4000フィートで、そこから降下・左旋回しながら滑走路まで誘導されます。GLSはタテ・ヨコ両方の誘導ですから、GLS進入中は進路も高度もこのチャートのように誘導されます。この試験運用では決心高度は1000フィートと高めになっています。興味深いのが進路が338度になっているところで、滑走路の方位は337となっていますからなぜか1度ずれています。またILSのローカライザー周波数に相当するSBASのVHF電波は周波数で指定するのではなく、5桁のチャンネル番号と4桁の識別符号で設定されています。
では早速これを飛んでみましょう。まず機体の設定が必要です。操縦席の脇に下の写真のようなEFB(電子飛行鞄)があります。そのメインメニューの2ページ目の左上に設定のページがあります。
これをクリックすると以下の画面が出てきます。
その左上にディスプレイの設定があります。その2ページ目です。このなかにMULTI MODE RECEIVERという項目があります。これをYESにします。
そして1つ前の写真の設定の画面に戻ってVISUAL EFFETSからGAUGES REFLECTIONをオフにしておきます。
それでZIBO B737-800の機体を読み込んでペデスタルを見ると、NAV周波数の受信機がマルチモード受信機に変わっています。
たとえばこれを上のチャートのチャンネルに設定するにはMODEの^あるいはvを動かして下段にGLSを選びます。そして数字に上の5桁の番号を入れます。ここでは22307です。
そして左側のACTとSTBYの切り替えボタンを押して下段の内容を上段に持っていきます。必ず上段にGLS 22307が来ていなければなりません。
今日のコースですが、羽田のRWY 16Rを離陸して、横須賀VORまで飛んで、そこからKAIHOに行き、GLSコースに乗ってRWY 34Rまで行きます。巡航高度は4000フィートです。
そしてFMCはRTEページで出発RJTT、到着RJTTを指定。離陸はRWY16R、SIDは指定せず。途中経路は横須賀VORのHYDだけにして、到着はGLSY 34RアプローチとKAIHOを選び、STARは指定しません。
そして巡航高度は4000に、LEGページは次のようになります。
千葉までのゴーアラウンドコースも同時に設定されます。
では早速離陸します。
4000フィートで横須賀VORまで巡航しているところです。
MCPの左側のCRSを338にします。GLSを設定するとPFDの左上にその内容が表示されます。識別符号はチャートにある4桁。さらに方位、滑走路名、距離が出ます。GLSとはっきり出ています。既にタテ・ヨコのポインターが出ています。
ちょっと雲があります。
横須賀VORの直上を通過してから左旋回、KAIHOに向かいます。高度の設定は最終進入の1500まで下げておきます。そしてアプローチ・ボタンをオンにしておきます。KAIHOから最終進入までの誘導もGLSが行いますので。
進入速度も設定します。
もうすぐKAIHOです。
KAIHOです。写真にはありませんがFMCを見ると次、その次のポイントの速度が大きく下がっています。VNAVで飛べばフラップを下げるとそれに合わせてどんどん自動的に減速していきます。そこでKAIHOを過ぎたらどんどんフラップを下げていって、速度を急激に下げるためにスピードブレーキをいっぱいに引きます。PFDをみるとGLSによる誘導はILSと同じVOR/LOCとG/Sです。
スピードブレーキを引いてどんどん減速します。
タテもヨコもGLSのコースに乗って降りていきます。
最終進入コースに乗るところでちょうど1500フィートになります。ギアダウンのフラップ15度に対応した速度まで自動的に減速していきます。
これもなんとなく奇妙です。GLSのコースは338度、滑走路の方位は337度です。
既に最終フラップまで減速しています。もうすぐ最終進入が始まります。
このように飛んでいます。
順調に降下していきます。
今回の試験運用は1000フィートまでの誘導です。あとはビジュアルでの進入・着陸です。
そのまま降りていきましたが、GLSのコースはぴったりなのにPAPIは下過ぎると出ています。
そこでゴーアラウンドして先ほどのゴーアラウンドコースを千葉まで飛び、羽田の横風滑走路RWY22に設定されているLDAアプローチで羽田に戻ってこようと思います。
既に機は千葉を出てRWY22のLDAコースの最終進入フィックス、TAYASに向かっています。
LDAはローカライザータイプの進路支援装置と言って、ILSと同じローカライザーが、滑走路端ではないところに航空機を誘導するところに設置されています。羽田の横風滑走路のRWY22と23はその例です。
既に最終フラップで3000フィートを飛んでいます。
TAYASから降下を始めます。高度3000フィート。進路はLNAVで設定、降下パスはV/Sにして降下率を動かして、ND上の緑の円弧がちょうど降下終了地点に来るように調整します。E/Dとあるところで、ここの高度が1000フィートです。着陸する滑走路がND上に白線で表示されています。ゴーアラウンドは青い点線にあるように、その手前の空港上空を飛んでいくことになります。
さらにチャートを見るとマル1のところ、MAPとあるところまで左旋回するなとあります。
今日は毎分900フィートでの降下でした。
さて1千フィートです。オートパイロットを解除して左旋回しながらRWY22まで飛びます。ND上のマジェンタ色のラインはゴーアラウンドのコースで、着陸する滑走路とその延長線は白色で示されています。
もうすぐ着陸です。
オートブレーキ3でも結構走ります。
ということで今日は羽田のGLSアプローチとLDAアプローチを飛びました。ユニークなアプローチは世界にたくさんあります。シミュレーターの楽しみですね。
(おわり)