社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

がん緩和ケア最前線 坂井かをり(岩波書店 2007)

2008-05-22 11:38:32 | その他
癌研有明病院の取材をもとに、「緩和ケア」の現状と今後のあり方について、レポート。

引用
・(癌研有明病院の緩和ケア病棟は)「看取る病棟」から「前向きに生きる手助けをする病棟」へ脱皮しようとしている(P.84)。
・がんの医療には2つあって、がん自体を攻撃する医療と、がんに伴う苦痛を取り除く治療、つまり緩和ケアがある(P.139)
・緩和ケアは、「苦痛を取り除きながらの、がんとの共存をめざす医療」であって、「死に向かって、することを減らしていく」というマイナスの医療ではない(P.185)。



「緩和ケア」は苦痛を取り除くことは理解していたが、それは楽に息を引き取るためだ…と認識している部分があった。本書を読み、「緩和ケア」も積極的な医療の一形態であることを知り、正直、目からウロコが落ちた感じがした。
本書に登場している患者さんや家族は、癌研病院の前医から「もう手の施しようがない。緩和ケアの対象です」とマイナスの要素を全面に出したムンテラを受けている方が多いようだった。それは恐らく、今の日本では「当たりまえ」のムンテラになっているだろう。

命の期限が病気によってある程度決められてしまっても、「可能性にかけて、やり尽くしたい」と希望する人も多いはず。
診療報酬や法律の絡みで、緩和ケア病棟では受けられる、所謂「積極的な治療」には制限があるとのこと。
様々な可能性を試したうえで、納得して亡くなっていくのも、「スピリチュアルペイン」へのアプローチとも言えるだろう。
「緩和ケア」1つをとっても、まだまだ病院単位で取り組みに違いが大きいと感じた。

本書での「緩和ケア」は、取材先がガン専門病院であったためか、ケアの対象は「ガン患者」に限定されている。老衰であったり、その他の疾患であっても、治療方法の差こそあれ、思想としては同一できるのか?

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