ぴよこ日和

いらっしゃいませ。
きたむーです。
お芝居、ライブ、お笑い大好きです。

吉原御免状2

2005年10月21日 | 観た
あまりにも書く事が多すぎて、前回はスタッフの事しか書けなかった。
今回は役者について。

まずは主役、松永誠一郎役の堤真一さん。
原作の設定が26歳なので、大丈夫かなーと思っていたが、
そんな事観ている内にすっかり忘れてしまった。
役者ってすごい。
ただそんな言葉しか思い浮かばない。
初っ端からかなりの殺陣があるのだが、見事に斬って斬って斬りまくってた。
宮本武蔵を師とし、剣の達人として育った設定を裏切らない。
また、26歳までを肥後の山で暮らし、人間と交わる事の少なかった青年で、
その心は「どこまでも明るく透きとおった白い虚空があるばかりで、常人に必ず見られるどす黒い翳りがない。(原作:吉原御免状より)」という、難しい役どころ。
でも、あっけらかんとした台詞の言い回しと、柔らかい微笑みで
原作を読んだ時にイメージした松永誠一郎がそこに居ると思った。
野獣郎の時とも、アテルイの時とも違う堤真一が、そこに居た。

柳生義仙役の古田新太さん。
もうすごい極悪。
極めて、悪。
めっちゃ悪い。
怖い。
髑髏城の天魔王とも、阿修羅城の邪空とも違った極悪さ。
実際、原作も情け容赦のない、憎しみの塊として義仙を描いてあるので、
古田さんは全くもって忠実に義仙だった。
殺陣もすごい。
やっぱ、ものすごく速いんだよね。
長いこと公演していると、殺陣がどんどん速くなるってどこかで仰ってたけど、
東京公演を1ヶ月間こなして来ての、大阪公演。
だいぶ慣れてきてたのかもなー。

今回、松永誠一郎の恋の相手として描かれていたのは、勝山太夫役の松雪泰子さん。
一番いい出来だったんじゃないかしら?
花魁道中で出てきた時は「はぁっ」とため息が漏れてしまった。
「湯女あがりの礼儀知らず」という勝気な花魁。
実はくの一の勝山太夫。
そんな彼女が誠一郎に惚れてしまった為に、破滅への道を辿ってしまう。
命がけで男に惚れた女の役に、見事にはまっていた。

アカドクロにも出演し、今回も非常に楽しく演ってたのは水野十郎左衛門役の梶原善さん。
最初っから、最後まで常に楽しそう。
原作だと、戦乱の世が終わり、死に場所を失ってしまった若者として描かれているが、
この作品の中でも、常に死を覚悟しながら生きている、さっぱりとした生き様のもののふだった。
善さんのはしゃいだ感じが、そういう覚悟を下地にした潔さに見えて良かった。
ただはしゃいでいただけなのかも知れないケド・・・?

笑いのないじゅんさんを観たのも、なかなかいい収穫だったと言えるかも。
柳生宗冬役の橋本じゅんさん。
抑えに抑えた芝居で、宗冬を好演。
本人がどう思っているかは知らないけど、こんな渋い芝居が出来るんだったら、
テレビの時代劇とかもやって欲しいなぁ。
でも、観ている間中、「あれがいつか轟天に変わるかも?」という不安は常にあった事は白状しておこう。

高田聖子ちゃんは八百比丘尼。
熊野の山に住み、死者と語らってきた謎の女性、おばばさま。
二幕にほんのちょっと出てきただけで、聖子ちゃんファンの私としては大不満。
誠一郎に夢を見せる為に、着物を脱ぐおばばさまのその背中!
色っぽーーーい。
背中一面に刺青が施してあり、長く垂れた髪は銀色。
誠一郎の上に覆いかぶさっていくのを見て、うっとりっす。

謎の老人、幻斎役はおひょいさんこと、藤村俊二さん。
もう出てくるだけで和む~。
20日、昼の部はちょっとカミカミが多かったけど、
おひょいさんだもんね。しょうがないよ。

義仙の部下、狭川新左衛門役は粟根まことさん。
どんな芝居の時も、そのメガネをはずした事のない粟根さんが
今回初めてメガネをはずして舞台に立ったとかで、
こりゃちゃんと見とかなきゃと、粟根さんのシーンでは凝視してしまった。
今までホントにどんな芝居の時も、必ずメガネをかけるのを許してきた新感線が
やはり原作を大事にして舞台化したんだろうなと、思わせるエピソードだ。
「ええい、引け引け」はマイブームになりそうです。

高尾太夫の京野ことみさん。
素敵だったんだけど、まるっきりイメージじゃなかった。
ここだけ残念。

こんなに豪華な配役だと、新感線のメンバーはあまり出て来ないのが悲しい。
よしこ姉さん、カナちゃん、エマちゃん、さとみちゃんは
局見世の年増女郎役。
有り得ない化粧でドハドハ笑って、気持ちのいいシーンだった。
でもあまり出てこないから悲しいの。
悲しいのよ。

同じくインディさん、いっそん君、メタル君、河野さん、右近さんなんかもあんまり出てこなくて悲しい。
吉原の首代とか、揚屋の主人とか、神祗組とかやってた。
その中でも河野さんは、首代耳助として舞台を最初から最後まで走り回って、いい仕事してました。
インディさんは勝山子飼いの首代で、やっぱり最後にはばっちりやられてました。
やられっぷりサイコー!
「~ザンス」を言わない右近さんも初めてかなぁ?

準劇団員とも言われる川原正嗣さん、前田悟さん、村木仁ちゃんなんかも
出ては来るけど・・・。
もっともっとみんなのシーンが観たかったよー。

役者もスタッフも、それぞれが自分達の仕事をきっちりやり遂げた、
素晴らしい舞台だった事はもはや疑いようがない。
こんなに満足したのも久しぶりだ。
こんなに見ごたえのある、いい芝居がたったの45公演とは・・・。
ううううぅ、勿体無い。
もっといろんな人に観て欲しいし、私も2回と言わず、3回4回と観たかった。
そして、この路線をぜひこれからも進んでいって欲しいと思った。
もちろんおバカ路線も期待してますよ。
おバカといのうえ歌舞伎があれば、劇団☆新感線は無敵だ!
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吉原御免状

2005年10月21日 | 観た
劇団☆新感線の吉原御免状を観て来た。

予習の為に隆慶一郎原作の「吉原御免状」を読み、
続編の「かくれさと苦界行」まで読んだ私としては、
この込み入った内容を、
2時間40分のお芝居で果たしてどの程度、客に理解させる事が出来るか少々不安だったが、
どうしてどうして。
脚本としてばっちり作り上げられ、練り込まれた物になっていて原作と遜色なく楽しめた。

中島さん、随分苦労されたんじゃないかな?
でも、中島さん自身大変な隆慶一郎ファンでもあり、
今までの作品の中にも明らかに隆慶一郎のエッセンスを含むストーリーの多かったいのうえ歌舞伎が、
いよいよ本領を発揮したと言えるこのお芝居。
新感線ファンはもちろん、隆慶一郎ファンも納得できる素晴らしい出来だったと思う。

さて、その舞台はと言えば、もうびっくりの連続。
かなりの場面転換があるのだが、
回り舞台を上手く使って、街道、切見世、茶屋、揚屋、お歯黒どぶ、柳生宗冬の座敷、屋根、風呂屋などなど、
数分おきの場面転換。
それはそれは大変な作業。
大道具のスタッフさん達が、力技でセットを押したり引いたりして転換させていた。
そのプロの仕事っぷりに脱帽。

加えて照明の見事さ。
部屋の中に居る設定の役者に、ぴったりと上からのサスが当たったのを見た瞬間、
あの複雑な舞台装置を縫って、正確に役者にライトを当ててくる照明スタッフの力量と、
芝居を演じ続けながら、段取り通りその位置に居る事が出来る役者の力量を感じた。
二つの力があわさってこその効果は、並じゃない。

そしてまた舞台を盛り上げる為の特殊効果の多さも、新感線の特徴だが、
本火、レーザー、白煙、スモーク、血糊・・・・
これらを安全に、且つ確実に舞台効果として舞台に乗っけられるスタッフの存在も大きい。

音響も素晴らしい。
殺陣に合わせて、「カキーン」だの「シャキーン」だの「ズバッ」だの、
半端ない数のSEが用意されているのだが、
その音を出すシステムのキーボードが、7、8台は並んでいると言う。
音を出すスタッフは、舞台を見ながら、それに合わせて相応しい音を出さなくてはいけない。
稽古を何度も観て、流れが大体つかめているとは言え、
役者が台詞を言うのと同じ位、間合いやリズムを掴んでいなくては
とても出来る仕事ではないと思う。

更に衣装。
今回は吉原の話なので、花魁やそれに続く新造や禿達の、豪奢で繊細な衣装が膨大に必要だ。
主役、松永誠一郎役の堤真一でさえ、(おそらく)4度の衣装換えをしている。
50人以上が登場するこの芝居の中で、一体何着の衣装が用意されたか、想像だに出来ない。

とまあ、スタッフの事ばかりを取り上げてきたが、
新感線の舞台は、そこに思いを巡らさずにはいられない程、全てが完璧に素晴らしい。
それをまとめる演出、いのうえさんの素晴らしさは言うまでもない。

今回の吉原御免状は、原作のイメージを壊さず、
それでいて新感線らしさも出さなくてはいけない、難しい作品だったと思う。
笑いは一切無し、と聞いていたが
実際にはくすっと笑わせるシーンも幾つかあった。
原作に忠実に従っている台詞でも、役者のイメージが大きすぎて
つい穿った見方をしてしまい、笑いの起こる場面もあった。
「大笑いして、観終わった後に何にも残らない芝居がしたい」が信条の新感線にしては
これはかなりの冒険だったと思う。
だけど、新しい新感線の始まりでもあった。
20代の劇団員がいなくなってしまった(らしい)新感線の、大人の舞台をこれからも観てみたい。
もちろん、おバカ路線も突っ走って欲しいが・・・。
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