漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

牢抜けの者の事 ④ 逃亡

2009年11月20日 | Weblog
きのうの続き。

さて、首尾よく牢から抜け出した五人、

あとは逃げるだけ・・・。
  
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順に抜け、五人出揃うといなや、

堀の溝の際(きわ)にある
拷問場(ごうもんば)の柱へ飛び付き、

ひと跳(は)ね 跳ねて、
塀(へい)に取り着き、
易々と塀を乗り超えて、散り散りに行方知らずに逃げ失せぬ。

しかるに同類の内、
庄八、
つらつらと思案しけるは、

「かくまでは仕遂(しおお)せぬれども、
 御上の事なれば、
 面目にかけ、定めて草の根をを分けても捜されなん、

 さすれば、ついには天の網遁れ難し、

 さても遁れぬ命を 今一度思い究めて、
 速やかに注進せば、
 その褒賞に命を助るやもしれず、

 所詮裏返らばやと独り頷(うなづ)きて、
 余の者と別れ、
 直ちに、町奉行 向井伊賀守役所へ馳(は)せ来たり、

「御注進の者にて候(そうろう)」と呼ばわる。

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悪い奴ですネェ、
裏切り者や、一人 抜け駆けする奴、

でも、どこの会社にもいますよねぇ。 (笑)

尚、「御注進(ごちゅうしん)」は、「申し上げます」、

又、「天の網」は、天の神が張りめぐらした網、

ことわざの、
「てんもう かいかい そにして もらさず」、

「天網恢恢 疎にして漏らさず」は、
天が張りめぐらした網は、
一見、目が粗く、容易に抜けられそうに見えて、実は悪人を見逃さぬ、

つまり、
「どんな悪事も、天が承知しており、所詮、その報いは逃れられぬ」、の意。

老子サンの言葉なのだそうな。







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