漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

梅川・忠兵衛

2009年01月07日 | せけんばなし
きのうの続き。

「浪花の恋の物語」には、原作者が登場するなど、
映画化のため、
様々に脚色されているのは当然として、
一番大きい脚色が、主人公の忠兵衛の人物像。

原作では、年は二十四と若いながら、
仕事もこなし、教養もあり、遊びごともひと通りはこなす、と云う一人前の若主人。

処が、映画の中の忠兵衛は、
生真面目だが世間知らずの「ぼんぼん」として登場する。

梅川と馴染むきっかけも、
嫌がる忠兵衛を悪友が女郎屋へ誘い込み、

帰ると云う忠兵衛に、
一夜を過ごさず帰られては、私が責められます」と、
相方となった遊女梅川が、頼み込むところから始まる。

このあたり、落語の「明烏(あけがらす)」を思わせ、
錦之助の忠兵衛も、
そう云う純情な男が、
誠意のある梅川に入れ込むと云う設定になっている。

ふだん温和しい男が、
一旦思い込むと、
周囲も手が付けられぬほどのめり込む、と云う脚本でこれはこれで説得力がある。

同じ内田吐夢監督と組んだ「宮本武蔵」のような、
錦之助が得意とするいつもの役とはがらりと違う役柄です。

実は近松のこの名作は、
江戸時代から様々に脚色されている。

当時は著作権と意識のない時代、
盗作さえも自由だったから、原作者に無断で改作もできた。

現在でも、文楽と歌舞伎では微妙に違う。

例えば、忠兵衛の友人、八右衛門、

原作では、忠兵衛の目を覚まそうと云う男気から、
廓で忠兵衛を笑い者にするのだが、

歌舞伎の方では、トコトン悪役、
女郎たちにも「ゲジゲジの八つぁん」と嫌われる嫌な男になっている。

映画が終わったと、
そんな処を比べながら、しばらくは楽しんでおりました。




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