漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

雷の夕立屋

2009年08月09日 | ものがたり
有名な宮沢賢治の詩、「雨ニモマケズ」の中、
彼が、寒さの夏にオロオロ歩くのは、
冷夏では、稲が実らず、不作を怖れるからですが、

古代の人も、
夏のイナビカリが、稲の穂に実を入らせると信じていたようです。

「申」と云う字は、イナヅマの象形文字で、
古代は、この字で「神」の意を表わしたのだと、白川静博士の「字解」にある。

後に、「申」が申すの意味で広く使われるようになり、
混乱を避けて、
新たに、
神を祭る時に使う机の意味の「示」をヘンに加えて、「神」と云う字を拵えた。

「稲妻」と云う字は、
夏のイナビカリが実りをもたらす事を表わしているし、
「神鳴り」と云う言葉は、
カミナリが神のなせるワザであると云う意味から来ている。

「雷」と云う字も、
元々は、
田を三つ並べた字に雨を組み合わせたもので、
これもイナヅマの象形文字に発しているのだそうです。

ただ、
「カミナリさん」が、今のような鬼の形、
ツノの生えた虎皮の褌姿になったのは、案外に新しいようで、

狂言の「神鳴」では、
空から落ちてきたカミナリさんを、人間の医者が手当てしてやるのですが、
このカミナリ、
太鼓は持っているが、ツノはないし、衣装も着物と袴姿での登場です。

もっとも、この時使う「武悪」と云う面は、鬼のような顔ではありますがネ。

 (尚、能・狂言の面は「オモテ」と云います)

では、おしまいに上方小咄をひとつ。
  
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「夏こそ我が季節」と、張り切りすぎたカミナリ、
雷太鼓を鳴らした拍子に力みすぎ、足を滑らし雲から落ちた。

仕方がないので、
「夕立を降らす」と云う商売を始めた。

町内を、
「エ、夕立屋、エー、夕立降らそ」と、流していると、声が掛かった。

「夕立屋とは珍しいが、どんな商売じゃ」

「注文受けたら夕立降らそ、
 今も隣町で請け合うて、一両がとこ降らしたばかり」

「へえ、こいつはおもしろい」と云い合う処へ

十歳ぐらいの女の子、

「もし、夕立やはん、
 三文がほど、降らしとくなはれ」

「三文ぐらいのこと、何にする」、

「アイ、この朝顔の鉢へサ」。

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