「人間 誰しも死ぬ。
そして誰しも死ぬのは怖い。
しかし、自分が必ず死ぬと云うことは知っている。」
そう書き出すのは
医師・石飛幸三氏著、「平穏死のすすめ」。
そして さらにこう続ける、
「そうであるならば、
せめて苦しまないように、取り乱さないように死にたいと願っている。」
この本の副題は、
「口から食べられなくなったらどうしますか」、
老衰による天寿をまっとうしようとする高齢者に対し、
「近代医学は何もするべきでない」と説いている本である。
高齢者が食べられなくなると云うことは、
もはや体が食べ物を必要としていないのだ、
ここからは、
最新近代医学の出番はなくなり、あとは介護の領域だと説いている本である。
具体的には、
「もはや食べられなくなった高齢者に対する胃ろうの問題」を主として扱っている。
「胃ろう」は、「胃瘻」、
食べ物を飲み込む力がなくなった人に、
体外から胃へ、チューブでつなぐ手術をして、人工的に栄養を補給すること。
強制的に栄養を補給すれば 確かに、
幾許かの寿命は延びるが、
肺炎など余病を併発して、本人は よけいに苦しむことが多い。
私は二十年ほども前、長く寝たきりだった母を看送った。
当時、私が感じた矛盾は、医師にとっては 疑うべくもない正義だった。
やっと、日本でも、
「医師がこう云うことを書いて出版する時代が来たのだな」と思う。