「疾中」は宮沢賢治が肺病で死ぬ前に書いた詩集だそうです。
「眼にて云ふ」はその中の一編、それを抜き書き。
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どうも間もなく死にそうです
けれどもなんといい風でしょう
もう清明が近いので
あんなに青ぞらからもりあがって湧くやうに
(中略)
こんなに本気にいろいろ手あてもしていただけば
これで死んでもまづは文句もありません
血がでているにかかわらず
こんなにのんきで苦しくないのは
魂魄なかば体を放れたのですかな
ただどうも血のために
それを云えないがひどいです
あなたの方からみたら
随分 惨憺たるけしきでしょうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青ぞらと透き通った風ばかりです。