『駅から5分』 くらもちふさこ作 集英社刊
くらもちふさこ……高校生の頃はよく読んでたなぁ。
別冊マーガレット。通称別マ。
『いつもポケットにショパン』『Kiss+πr2』……なつかしい。
で、連作短編集の形をとっている本書です。
物語はすべて、舞台が共通している。
花染町という町の、駅から半径5分以内のところで起きる出来事。
それぞれの話は一見独立しているんだけど、実はどこかで人間関係がつながっている。
時には本人たちすら知らない関係が、生まれてる。
例えば幼なじみを捜しに花染町へやってくる36歳の女性を描く第2話は、
中学生の初々しい恋の始まりを描いた第1話とはまったく関係のない話に最初は思えるが、
第1話の男の子をはねてしまうタクシーの乗客が、実はその女性だったことがわかる。
第4話で、女子高生が友達の男の子に何の気なしに出したメールが、
第5話の女子大生の恋の行方に密接に関わってくる。
物語はすべて『始まり』を予感させるもので、それだけでも面白そうなのに、
一見無関係な話が実はすべてどこかでつながっていて、妙にスリリング。
人が殺されるわけでもない、隠された宝の存在が匂わされるわけでもない、
天才ピッチャーが登場するわけでも、未来からやってきた自分の子孫が現れるわけでもない、
なんてことのない日常を描くスケッチ風の話ばかりなのに、
なぜかドキドキする、この先どうなるんだろ??って気になる。
すごい、くらもちふさこ。
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