ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【梅にウグイス】難波先生より

2015-03-24 23:32:27 | 難波紘二先生
【梅にウグイス】
 今年はウグイスの初音が遅く、ひな祭りの頃家内が「ケキョ、ケキョ」という下手な鳴き声を聞いたそうだ。昨日は「ホッ、ケキョ」という不完全のさえずりを聞いた。
 昼前、用足しに仕事場の外の庭に出ると、西の林から「ホー、ホケキョ」という初めて完全なウグイスのさえずりが聞こえた。樹上にいるのを撮影しようと、カメラを構えて探したが「声はすれども、姿は見えず」だった。
 
 ふと足元を見ると、テングチョウが日光浴をしていた。これも1週間ほど前から姿を見かけるのだが、なかなか動きがチョコマカとしていて、撮影のチャンスがなかった。(写真1)
(写真1)
 頭の先から「天狗の鼻」のような口吻が飛び出しているからテングチョウである。見ていると、何とすぐ傍にある馬酔木(アセビ)の樹に咲いた花から吸蜜している。馬酔木は、南側にあるサンサーラ脇の雑木林のものは、陽当たりがよく先週咲いたが、ここはやや遅れて咲いた。
 見ていると、2匹(頭)のテングチョウが、馬酔木の花にやってきて、そのうち空中戦を始めたので、吸蜜だけでなく求愛もしているのだろう。テングチョウが馬酔木の花で吸蜜するとは知らなかった。(写真2)
(写真2)
 テングチョウを追いかけたり、庭の雑草の花を撮影したり、家内がテーブル岩の上に敷いた新聞紙に並べられている、見事なシイタケの撮影をしているうちに時間がたった。

 母屋に戻り、新聞を読みながら少し早めの食事をした。マックス・ウェーバーの伝記を読むと、若い頃自炊をしたことがあり、夕食に「牛肉450グラムと卵4個を食った」とあった。それに比べると私の食事は「卵2個と牛肉200グラム」がメインで、大したことないな、と思う。
 食後、今日は晴れていて陽光がさんさんと注いでいるので、ベランダに出て日光浴をしながら「中央公論」4月号の「ピケティの罠」という特集記事を読もうと思い立った。

 庭を見下ろしてみると、先日までつぼみだった梅が花を咲かせ始めていて、まだ冬枯れた木々のなかで、唯一白色が目立っている。近づいてみると、梅の花から吸蜜するハナアブの一種が忙しく動いていた。(写真3)
(写真3)
  ベランダの八角テーブルに就いて、ピケティの論文を読みながら、ふと庭の梅の樹に目をやると鳥がとまっている。(写真4)
 ベランダの柵の隙間から、気づかれないようにこっそり写真を撮影した。
(写真4)
 せわしない鳥で、しょっちゅう飛び立っては梅の小枝をつついている。まるで花びらでもつまんでいるように花枝が揺れる。恐らく花に来た虫をついばんでいるのであろう。

 咲いた梅の枝にとまる鳥というと、てっきりウグイスだと思いこんだ。
 「鳴き声をあげないかな…」と思ったが、ついに鳴かずに馬酔木の近くにある、つぼみだけの木の枝に飛んで移動した。ここはまだ虫がいないので、つぼみを喰っているのだろうかと思った。それではウグイスとしてはおかしい。

 この鳥は木の枝にとまる際に、足を縮めて枝にうずくまるような止まり方をする。だから目立ちにくい。シルエットでしか撮影できなかったが、写真5のようになる。
(写真5)

 天候がよかったせいもあり、今日は短時間に100枚近くの写真を撮影した。24枚撮り35ミリフィルムに換算すると、4本も撮影したことになる。昔なら、フィルム代に現像・プリント代で軽く1万円を突破するところだが、今はそれがほとんどタダでできる。便利な世の中になったものだ。

 「ピケティ特集」を読み終え、仕事場に戻って「野鳥図鑑」をめくったら、ウグイスではなく、腹にある特徴的な斑紋からみて、ヒヨドリのようだ。
 ヒヨドリは虫でも木の実でも野菜でも食べる雑食性の鳥で、いつもは灰色の背中しか見ていないので、こんなくちばしや羽根の模様をしているとは知らなかった。沢山撮影した写真の中に、梅の太い枝に留まったものがあった。(写真6)
 要は「梅にウグイス」という先入観があるから、たまたま梅の木の枝にやってきた小さめのヒヨドリを遠見して、「ウグイス?」と思っただけのことだった。双眼鏡がなかったので、もし望遠撮影していなかったら、ウグイスだと思いこんでしまうところだった…。
(写真6)
 まるで眼の下から頬にかけて、褐色の耳がぶら下がっているように見える。

 図鑑には学名と英語名が載っているので、それを見たら、
 ウグイス=〔ラ〕Cettia diphone、〔英〕Bush Warbler
 ヒヨドリ=〔ラ〕Hypsipetes amaurotis、Brown-eared Bulbul
とあった。

 ウグイスの英名「ブッシュ・ウォブラー」のWarblerの方はSongsterともいい、「鳴く鳥の総称」だと「永野・生物学用語辞典」にはある。
 属名のCettiaは、語義が「岩波生物学辞典」や「平嶋・生物学名命名法辞典」を見てもよくわからない(載っていない)。(ご存知の方に、ご教示いただきたいものだ。)
 Cetusならギリシア語のKetos(クジラ)に由来し、「鯨類」を意味する。
 種名のdiphoneはdi-(二つの)、と鳴き声(phone)を組み合わせたもので、「ホー」という長音と「ケキョ」という短音の特徴から来たものであろう。

 ヒヨドリは上記「用語辞典」にも、「命名法辞典」にも項目がない。
 英語名のブルブルは「英和辞典」によると、ペルシア語由来で、「夜鳴きウグイス(ナイチンゲール)」の一種だという。Brown-earedというのは、鳥に耳があるわけがなく、頬が茶褐色をしているのを「耳」に見立てたものだろう。
 ラテン語の属名は意味がよく分からない。ギリシア神話に「ヒプシペ」という王女が出てくる話があるが、あるいはそれと関係があるかもしれない。
 種名のamaurotisは「黒内症amaurosis」と語根が一緒で、ギリシア語のamauros(暗い)に由来していると思われる。但し、夜行性を意味するのか、色が灰黒色であることに由来するのかはわからない。

 梶島孝雄『資料・日本動物史』は優れた本で、ヒヨドリの日本固有種は一種だったが、室町時代に中国産のシマヒヨドリが輸入され、江戸中期にジャワ産のコシジロヒヨドリとヒヨドリ科シロガシラが輸入されたと記している。掲載されている図版で見るかぎり、今日、撮影したのは日本固有のヒヨドリのようである。
 この本に「学名の起こり」まできちんと説明が載っていたらなあ、と思う。
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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-03-25 00:10:01
昨年6月6日の記事に、
「テングチョウの伸びている部分はパルピ(下唇髭)。口吻じゃないです。」
と指摘しておいたのですが、ご覧にならなかったでしょうか?
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Unknown (Mr.S)
2015-03-25 06:53:05
「梅に鶯、松に鶴、朝吉親分にはモートルの貞。」

という大映映画「悪名」シリーズにおける田宮二郎扮するモートルの貞のセリフを思いだしました。
返信する
Unknown (Unknown)
2015-03-25 13:48:41
>属名のCettiaは、語義が「岩波生物学辞典」や「平嶋・生物学名命名法辞典」を見てもよくわからない(載っていない)。(ご存知の方に、ご教示いただきたいものだ。)

チェッティーは、18世紀のイタリア人動物学者Francesco Cettiの名に由来。ヨーロッパウグイス(Cetti's Warbler)の学名はCettia cetti。
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Unknown (Unknown)
2015-03-25 14:01:36
>ヒヨドリ
>ラテン語の属名は意味がよく分からない。
単純にギリシア語で、Hypsi-=high、petes=flyでは?
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うぐいす (九天)
2015-03-25 18:33:49
ウグイスは樹上にはなかなか現れないのでは?
当地でも、ヒヨドリが満開の玉縄桜の花と遊んでいます。

ウグイスは傾斜した藪のなかによくいます。藪から出てくる時も飛ばずに歩いています。数羽で連れ立って山道を横切ったりもしています。

カメラは地面に向ける方が良いのではないでしょうか。見ると、茶色っぽいさえない鳥です。
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