ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【治療的臓器提供(TOD)】難波先生より

2015-11-11 16:27:28 | 修復腎移植
【治療的臓器提供(TOD)】
 米国の臓器移植ネットワーク(UNOS)が「治療的臓器提供(Therapeutic Organ Donation):TOD」という新しい方針(policy)を採用する方向で動いていることを、米ユタ州の藤田士朗先生からの情報で知った。詳細はここにある:(米政府のサーバだ。)
http://optn.transplant.hrsa.gov/media/1185/0815-05_Therapeutic_Donor.pdf
 治療的臓器提供とは、治療目的で患者から取り出した臓器を、ICをえて移植に利用することをいう。「修復腎移植」もその中に入る。驚いたのはこのリー・ボルトンというUNOS政策部の担当者が書いたものによると、もう米国では「小径腎がんを利用した修復腎移植」は各病院が自由にやっているので、全国統計がないそうだ。つまりUNOSが関与していない。
 ごく最近の論文が引用されていたので、それを紹介する。
 マイアミ大からの報告で、
Lugo-Baruqui, JA et al.: Living donor renal transplantation with incidental renal cell carcinoma from donor allograft. (偶発的腎細胞がんのあるドナー腎臓を用いた生体腎移植)
Transpl Int. 2015 Sep;28(9):1126-30
という最新の論文がある。
 これによると、腹腔鏡を用いて腎摘出して腎移植をおこなった生体腎移植435例中に、4例の小径腎がんがあった。(いずれも術後の病理診断で確定。)いずれも臨床病期(TNM分類)はⅠ期で、病理組織学的分類は淡明細胞がん2,乳頭状がん1,多発性腎細胞がん1となっている。
 バックテーブルでがんを切除し移植に利用している。経過観察の中央値は36ヶ月で4例ともがんの再発はないという。著者のルゴ=バルキらは<Partial nephrectomy before transplantation could offer a cure for the disease without risks for the recipient with therapeutic benefit for the donor.(移植する前にがんを部分切除すれば、レシピエントにはリスクなしに病気の治癒を、ドナーには治療という利益を提供できるかもしれない。)>と結論している。
 前から修復腎移植については「世界の常識、日本の非常識」だと指摘してきた。米政府の準公的機関であるUNOSがもう修復腎移植の全国統計を取っていないのに、日本ではまだ「臨床試験」の段階だ。
 「愛媛」「産経」に続いて11/5「毎日」が「修復腎移植」再申請方針という記事を報じたがこれは「愛媛地方版」だけに載っている。
http://mainichi.jp/auth/guide.php?url=http%3A%2F%2Fmainichi.jp%2Farea%2Fehime%2Fnews%2F20151105ddlk38040578000c.html

 メディアは不当なバッシングに対する謝罪の意味を込めて、きちんと全国報道すべきだ。さもないと「新聞離れ」は加速するだろう。

 「サンデー毎日」に千葉県鴨川市にある「亀田総合病院」の小松秀樹副院長が懲戒解雇された事件の「真相追求」記事がトップ記事で載っている。小松先生は元虎の門病院泌尿器科部長で、定年退職後にこの病院の副院長として招聘された。
 10月から「医療事故調査制度」が発足したが、小松先生は
『慈恵医大青戸病院事件:医療の構造と実践的倫理』(日本経済評論社, 2004/9)
『医療崩壊:「立ち去り型サボタージュ」とは何か』(朝日新聞社, 2006/5)
などの著書を通じて、医療事故におけるエラー(単純なミス、いわゆるヒューマン・エラー)とフォルト(システム上の欠陥あるいはルールの無視)を区別することを主張して、この制度の発足に大いに寄与された。
 病気腎移植事件についても、2年前に、「MRIC医療ガバナンス学会」のメールマガジン
 「2013年 Vol.12 医療事故調問題の本質6:日本のアンシャンレジーム」で、
http://medg.jp/mt/?p=1902
「この事件(移植学会による病腎移植の問題化)は、ギルドの中で生じた政治権力が、自らの権威の維持のために学問研究の進歩を阻害した不祥事として記憶されることになろう。
当時、日本病理学会の代表が、「病気腎移植に関する学会声明」の議論に参加していたが、最
終的に名前を連ねなかった。これは、称賛されてよい。」
 と書いておられる。(千葉のO先生からの情報。)
 「サンデー毎日」の記事によると「鉄蕉会・亀田総合病院」は病床数865、診療科数34で、大学病院に匹敵する巨大な民間病院だ。人口が約3万人の鴨川市に、これだけの総合病院があるというもの珍しい。日本の医療界にとって貴重な人材である小松先生のご健勝を祈りたい。
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