【書評】エフロブ「買いたい新書」書評にNo.209呉善花「韓国併合への道・完全版」,文春新書 を取り上げました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1395619868
この問題については、
山辺健太郎「日韓併合小史」(岩波新書, 1966)
海野福寿「韓国併合」(岩波新書, 1995)
趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波書店, 2012)
という研究書も出ているが、最初のものは共産党系の思想に基づき、後の2冊は在日の思想に基づいており、客観的記述とはいいがたい。
本書は,押し寄せる西洋列強の圧力に屈するかたちで開国した日本が,明治維新(1868)後,急速に国力を蓄え,わずか一世代のうちに日清戦争(1894),日露戦争(1904)を戦うに至った。これに対して,同じ鎖国政策をとっていた朝鮮は日本より約50年遅れて開国した。日清戦争の結果,宗主国清から独立し,「大韓帝国」を名乗ったにもかかわらず,なぜ国際社会から孤立し,日露戦争後の1910年,日本に併合されてしまったのか,という問に答えを与えるものだ。
「変わらないで生き残るには,変わらなければならない」。イタリア映画「山猫」で,シシリア島の老貴族がつぶやく。まさに朝鮮近代史を要約したような言葉だ。
日清戦争後、清国からの独立を得た朝鮮の旧支配層は、日本が主導する急進的改革について行けず,今度は帝政ロシアの庇護を頼った。朝鮮半島への南下を目論むロシアにとって願ってもない事態だ。96年,国王がロシア公使館に移り,そこで政治を執るという異常事態となった。かつて清国の属国だった朝鮮は,今度はロシアの属国になる道を選んだ。これが日露戦争(1904)の発端である。
こうして長い鎖国のはて,国際情勢にも西洋の学問技術にも溟い朝鮮は,「変わるまい」として自ら亡んだ。G.アキタ他「<日本の朝鮮統治>を検証する」(草思社)との併読をお薦めすします。
【献本など】
1)「買いたい新書」書評で取り上げた、「いつか罹る病気に備える本」
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1392448000
の著者、塚崎朝子さんから「新薬に挑んだ日本人科学者たち:世界の患者を救った創薬の物語」(講談社ブルーバックス, 2013)の著者献本を受けました。お礼申し上げます。
「メディカル朝日」連載記事をもとに執筆されたそうで、最近日本製の医薬品の開発物語と薬の説明が(ちょっと専門語が多いが)よく説明されています。私は全体の流れが知りたいので「日本人と創薬」、「薬のできるまで」という総論(これが後にある)の2章を読みました。皆さんも、ここから読むとわかりやすいかと思います。何ごとも総論が重要です。
索引を見ていて「垣生園子」という懐かしい名前を見つけた。慶応大の病理学におられ、後東海大の教授になった方だ。臓器移植用の免疫抑制剤としてひろく利用されているタクロリムス(商品名プログラフ)を開発した藤沢製薬(現アステラス)の木野亨氏が、垣生さんの下で免疫学を勉強したのだそうだ。
高橋是清は少年の頃、維新前に渡米しサンフランシスコで奴隷に売られ、ほうほうの体で帰国後、森有礼の書生となり大蔵省の役人になった。初代の特許局長(自分でこの局を作った)だったが、南米で銀山を経営するため辞職して、明治22年ペルーに渡った。日系ペルー移民は、この時に始まったのではないかと思う。(「高橋是清自伝」, 中公文庫, 2冊本)
破産して再起不能と見られていたが、日銀に入り、のちに大蔵大臣、首相を歴任した。
二代目の局長鈴木梅太郎の名前は索引にあるが、本文にはある高橋の名が漏れているのは残念だ。
2)「週刊文春」3/27号をお送りいただいた。記者の方にお礼申し上げます。
「STAP細胞」事件が、8頁の特集に組まれている。取材には応じたものの文脈を無視して、発言の一部だけが別の文脈にはめ込まれたら困るなと心配したが、安心した。
「再生医療に詳しい難波紘二…」とあるが、正確には「1ヶ月勉強したから詳しくなった」というだけです。
なかなかよい特集だが、この記事からも「日本科学史上最大のスキャンダル」のヒロインがどういう人物なのか、その性格、個性、家庭環境などが見えてこない。
引き続き、他のメディアも含め、続報に期待しています。
3)「新潮45」4月号をお贈り頂いた。お礼申し上げます。
取材があったのは女性記者だったので、この「小畑峰太郎」というのが本人かどうかわからない。
https://www.shinchosha.co.jp/shincho45/newest/
あるいは小畑氏はアンカーマンで、記者はデータマンだったのかも知れない。
それはともかく、冒頭にある、1/29「報道ステーション」を見た旧知の脳神経外科医が電話をかけて来て、「(小保方の)机上に、論文に登場するドイツライカ社製の20年前のアンティークな顕微鏡が見あたらない」と指摘する話はフィクションだと思う。
なぜなら、小保方ネイチャー第1論文の「方法」の「核型分析」の記述がGuo論文(2005)からのコピーだと判明したのが2/26 (水)の10:10。
その後、「電子機器に詳しい人が、小保方第1論文の核型分析の項に、使用したと記載されている機材に絞って調べた。その結果、
1)落射蛍光顕微鏡(ライカ社=ドイツ、型式DM RXA RF8)
2)CCDカメラ(フォトメトリクス社=アリゾナ、型式Sensys CCD カメラ)
は <1990年代末から2000年代前半に販売されていたもので既に製造中止になっている機種です。 また、Sensys カメラのウェブサイトには、 “Then turn your computer back on and boot Windows 98/2000/ME/XP again.”と記載されており、Win 98が現役だったような時代の懐かしい製品です。よって、小保方氏らが研究室を立ち上げるときに、このような古い実験機器を新規に購入することは不可能であり、また中古品も出回っていません> と報告された。」
http://blog.goo.ne.jp/motosuke_t/e/b3c84398793dd11554e8076eca49b9a9
これらは疑惑を追及するネットユーザーが手分けして調査した結果、判明したもので、1/29「報道ステーション」の直後に、これが分かる人は日本にも世界にも1人も居なかったといってよい。 よってこの「知人からの電話」は架空の話だと思う。
ペンネームはしばしば「別人格」をつくる。だから想像力が飛躍する利点はあるが、ノンフィクションでそれをやったら小保方さんと変わらない。要ご注意。
【STAP報道】
「ウートピ」(WomanTopics)という雑誌が、疑惑発覚以前のメディア報道と以後の「手のひら返し」報道を比較している。
http://wotopi.jp/archives/284
やはり按じたように日本の科学への不信だけでなく、「メディア不信」の増大という問題も派生しそうだ。新聞、テレビ、週刊誌ともに、十分な自己検証をお願いしたいもの。
そもそも高度の科学的問題を理解できる科学部の記者もいないのに、社会部が速報するという取り組み方がおかしい。「他紙に抜かれては」という気持ちでそうなるのだろうが、今どきの読者は「一斉記事」はやらせではないか、と思うぐらいのメディアリテラシーはある。
もっと質の高い記事を書いてほしい。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1395619868
この問題については、
山辺健太郎「日韓併合小史」(岩波新書, 1966)
海野福寿「韓国併合」(岩波新書, 1995)
趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波書店, 2012)
という研究書も出ているが、最初のものは共産党系の思想に基づき、後の2冊は在日の思想に基づいており、客観的記述とはいいがたい。
本書は,押し寄せる西洋列強の圧力に屈するかたちで開国した日本が,明治維新(1868)後,急速に国力を蓄え,わずか一世代のうちに日清戦争(1894),日露戦争(1904)を戦うに至った。これに対して,同じ鎖国政策をとっていた朝鮮は日本より約50年遅れて開国した。日清戦争の結果,宗主国清から独立し,「大韓帝国」を名乗ったにもかかわらず,なぜ国際社会から孤立し,日露戦争後の1910年,日本に併合されてしまったのか,という問に答えを与えるものだ。
「変わらないで生き残るには,変わらなければならない」。イタリア映画「山猫」で,シシリア島の老貴族がつぶやく。まさに朝鮮近代史を要約したような言葉だ。
日清戦争後、清国からの独立を得た朝鮮の旧支配層は、日本が主導する急進的改革について行けず,今度は帝政ロシアの庇護を頼った。朝鮮半島への南下を目論むロシアにとって願ってもない事態だ。96年,国王がロシア公使館に移り,そこで政治を執るという異常事態となった。かつて清国の属国だった朝鮮は,今度はロシアの属国になる道を選んだ。これが日露戦争(1904)の発端である。
こうして長い鎖国のはて,国際情勢にも西洋の学問技術にも溟い朝鮮は,「変わるまい」として自ら亡んだ。G.アキタ他「<日本の朝鮮統治>を検証する」(草思社)との併読をお薦めすします。
【献本など】
1)「買いたい新書」書評で取り上げた、「いつか罹る病気に備える本」
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1392448000
の著者、塚崎朝子さんから「新薬に挑んだ日本人科学者たち:世界の患者を救った創薬の物語」(講談社ブルーバックス, 2013)の著者献本を受けました。お礼申し上げます。
「メディカル朝日」連載記事をもとに執筆されたそうで、最近日本製の医薬品の開発物語と薬の説明が(ちょっと専門語が多いが)よく説明されています。私は全体の流れが知りたいので「日本人と創薬」、「薬のできるまで」という総論(これが後にある)の2章を読みました。皆さんも、ここから読むとわかりやすいかと思います。何ごとも総論が重要です。
索引を見ていて「垣生園子」という懐かしい名前を見つけた。慶応大の病理学におられ、後東海大の教授になった方だ。臓器移植用の免疫抑制剤としてひろく利用されているタクロリムス(商品名プログラフ)を開発した藤沢製薬(現アステラス)の木野亨氏が、垣生さんの下で免疫学を勉強したのだそうだ。
高橋是清は少年の頃、維新前に渡米しサンフランシスコで奴隷に売られ、ほうほうの体で帰国後、森有礼の書生となり大蔵省の役人になった。初代の特許局長(自分でこの局を作った)だったが、南米で銀山を経営するため辞職して、明治22年ペルーに渡った。日系ペルー移民は、この時に始まったのではないかと思う。(「高橋是清自伝」, 中公文庫, 2冊本)
破産して再起不能と見られていたが、日銀に入り、のちに大蔵大臣、首相を歴任した。
二代目の局長鈴木梅太郎の名前は索引にあるが、本文にはある高橋の名が漏れているのは残念だ。
2)「週刊文春」3/27号をお送りいただいた。記者の方にお礼申し上げます。
「STAP細胞」事件が、8頁の特集に組まれている。取材には応じたものの文脈を無視して、発言の一部だけが別の文脈にはめ込まれたら困るなと心配したが、安心した。
「再生医療に詳しい難波紘二…」とあるが、正確には「1ヶ月勉強したから詳しくなった」というだけです。
なかなかよい特集だが、この記事からも「日本科学史上最大のスキャンダル」のヒロインがどういう人物なのか、その性格、個性、家庭環境などが見えてこない。
引き続き、他のメディアも含め、続報に期待しています。
3)「新潮45」4月号をお贈り頂いた。お礼申し上げます。
取材があったのは女性記者だったので、この「小畑峰太郎」というのが本人かどうかわからない。
https://www.shinchosha.co.jp/shincho45/newest/
あるいは小畑氏はアンカーマンで、記者はデータマンだったのかも知れない。
それはともかく、冒頭にある、1/29「報道ステーション」を見た旧知の脳神経外科医が電話をかけて来て、「(小保方の)机上に、論文に登場するドイツライカ社製の20年前のアンティークな顕微鏡が見あたらない」と指摘する話はフィクションだと思う。
なぜなら、小保方ネイチャー第1論文の「方法」の「核型分析」の記述がGuo論文(2005)からのコピーだと判明したのが2/26 (水)の10:10。
その後、「電子機器に詳しい人が、小保方第1論文の核型分析の項に、使用したと記載されている機材に絞って調べた。その結果、
1)落射蛍光顕微鏡(ライカ社=ドイツ、型式DM RXA RF8)
2)CCDカメラ(フォトメトリクス社=アリゾナ、型式Sensys CCD カメラ)
は <1990年代末から2000年代前半に販売されていたもので既に製造中止になっている機種です。 また、Sensys カメラのウェブサイトには、 “Then turn your computer back on and boot Windows 98/2000/ME/XP again.”と記載されており、Win 98が現役だったような時代の懐かしい製品です。よって、小保方氏らが研究室を立ち上げるときに、このような古い実験機器を新規に購入することは不可能であり、また中古品も出回っていません> と報告された。」
http://blog.goo.ne.jp/motosuke_t/e/b3c84398793dd11554e8076eca49b9a9
これらは疑惑を追及するネットユーザーが手分けして調査した結果、判明したもので、1/29「報道ステーション」の直後に、これが分かる人は日本にも世界にも1人も居なかったといってよい。 よってこの「知人からの電話」は架空の話だと思う。
ペンネームはしばしば「別人格」をつくる。だから想像力が飛躍する利点はあるが、ノンフィクションでそれをやったら小保方さんと変わらない。要ご注意。
【STAP報道】
「ウートピ」(WomanTopics)という雑誌が、疑惑発覚以前のメディア報道と以後の「手のひら返し」報道を比較している。
http://wotopi.jp/archives/284
やはり按じたように日本の科学への不信だけでなく、「メディア不信」の増大という問題も派生しそうだ。新聞、テレビ、週刊誌ともに、十分な自己検証をお願いしたいもの。
そもそも高度の科学的問題を理解できる科学部の記者もいないのに、社会部が速報するという取り組み方がおかしい。「他紙に抜かれては」という気持ちでそうなるのだろうが、今どきの読者は「一斉記事」はやらせではないか、と思うぐらいのメディアリテラシーはある。
もっと質の高い記事を書いてほしい。
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