ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【トノサマガエル】難波先生より

2014-08-04 18:28:59 | 難波紘二先生
【トノサマガエル】
 このあたりには大型のカエルとして、ウシガエル(食用ガエル)、ヒキガエルがいる。中型のものにトノサマガエル、ダルマガエル、アカガエル、ツチガエルがいる。小型のものに、シュレーゲルアオガエル、アマガエルがいる。モリアオガエルは池のほとりにはいるかもしれないが、卵泡を見かけたことがない。
 小川から20メートルは離れているのに、このところ裏庭でトノサマガエルを見かける。上の孫を呼んで見せたら、「大きい、黒い!」と喜んだ。ハワイにどんなカエルがいるのか知らないが、アマガエルのような緑色の小型種しか見たことがないのだろう。トノサマガエルには緑色の地に、縦に黒い縞ないし斑点が入っている。脊椎の棘突起に沿って、一本の縦に延びる緑線がある。下は今年生まれの小さい奴。これがないのがダルマガエル。

    
 トノサマガエルの学名はRana nigromaculataで、これが「難しい」と思うのは、日本の大学でラテン語の基礎を教えないからだ。娘に聞いたら、アメリカの大学でも生物学専攻の学生に古典語は必修でないそうだ。この点が英国のオックスフォードやケンブリッジと違う。
 ラーナ(rana)は英語のカエル(frog)のことである。ニグロはかつて黒人を意味したことばで「黒い」の意、メラノ(melano)も黒だが、これはギリシア語。今はメラニン(melanin)、メラネシア(Melanesia)、メランコリー(melancholy)に残っている。
 マクラ(macula)は「斑点」で、maculataで「斑点のある」を意味する。全体として「黒い斑点のあるカエル」という意味だから、和名の「トノサマガエル」よりよほどわかりやすくて、記述的である。正確な記述(description)はすべての科学の基本である。
 生物学の辞典として、平嶋義宏「生物学名概論」(東大出版会)、「生物学名・命名法辞典」(平凡社)、永野為武(編)「英和/和英・生物学用語辞典」(三共出版)を利用しているが、いずれもラテン語とギリシア語の基本がわかっているとは思えず、不満である。いやしくも「辞典」である以上は、語根の由来についての解説がないといけないのに、それがない。医学辞典では「ドーランド図解医学辞典」、大矢全節「医学英和辞典」には、ちゃんと語源解説がついている。
 大学の教養部に面白い生物学助手がいて、「<大根足>といったら失礼になるから、ダイコンの学名Raphanus sativusを覚えて、<ラファヌス・サティーヴス足>と言ったらよい」と教えてくれたので、すぐに覚えたが、この方法では意味がわからない。
 これもRaphanusが英語のラディッシュ(radish)のことで、sativusがsato(種を撒く)という動詞の過去分詞で、「栽培された」という意味だと知れば、丸暗記する必要がない。ついでに稲の学名をオリザ・サティヴァ(Oryza sativa)というのは、オリザが「イネ科植物」で、形容詞のsativaは、oryz-aという女性名詞に係るから、-usの代わりに-aがついて女性形になっているだけで、やはりsato由来の「栽培された」という意味だ。事実アフリカにはオリザ・グラベリマ(Oryza glaberrima)という別種の稲がある。グラーベル(glaber)「ヒゲのない」という意味だから、籾に毛がないところから命名されたものだろう。ニジェール川流域デルタ地帯で2000年以上前から栽培されたとされ、古代マリ王国は黄金と稲作文化で栄えた。
 チェホフの小説だったかに、「私が愛する(amo)」というラテン語動詞の格変化を「amo, amas, amat, amamus, amatis, amant」と暗誦する娘が出て来るが、ラテン語の基本的な品詞の語尾変化くらいは、大学で教えておくべきだと思う。ラテン語は動詞の主格(amo, cogito)に主語が入っているので、独立主語が要らないのは古典日本語と似ている。
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