【書評など】
1)「買いたい新書」の書評No.336に、平木英人「慢性疼痛:<こじれた痛み>の不思議」(ちくま新書)を取り上げました。
「他人の痛み」という言葉があるように, 五感の中で「痛み(痛覚)」ほど, 客観的な測定が困難で, 主観的な感覚はない。よって他者の痛みの理解は難しいのである。恥ずかしながら評者はこの本によって, 「心因性疼痛(慢性疼痛)」の詳細を初めて知った。
「慢性疼痛症」は日本でどのくらいあるのか?腰痛症, 肩凝りなどの痛みをふくめた「慢性疼痛保持者」は全国推計(06年)で1700万人と, 国民の7人に1人となり, 加齢にともなって増加する傾向があるという。決してまれな病気ではなく, 頭痛, 偏頭痛, 関節炎, 椎間板ヘルニア, 挫骨神経痛などの「病名」に隠れているだけだという。
著者は1935年生まれ, 日本で最初に開設された九大の心療内科(池見酉次郎教授)で研鑽し, 心療内科一筋の道を歩いてきたベテランだ。作家の夏木静子の慢性疼痛を「絶食療法」で治癒させたという話も面白いし, 絶食療法の生理学的説明にある「グルコース代謝からケトン体代謝」へ切り換えると, 脳波にアルファ波が出現するようになり, 患者が素直になってくるという指摘など「ケトン食」を唱道している評者には大いに参考になった。
2)麻野涼氏から贈られた「死の臓器2:闇移植」(文芸社文庫、2016/8)を少しずつ読んでいる。最初に、麻野涼「死の臓器」(文芸社文庫、2013/2)を読んだ時に感じた「松本清張に似た社会派ミステリー」という印象は今回も変わらない。
今回は海外における渡航臓器移植とそれを斡旋して巨額の利益をえるブローカーとその餌食となる渡航移植患者とその家族を真正面から見すえた作品だ。
「イスタンブール宣言」により、各国は移植用臓器を国内で調達することが義務づけられている。例外的に前年実績数の5%を海外からの渡航患者の移植に当てることが認められている。
ところが、今や米国で小児の心移植を受けようとすると3億3000万円もの資金を、カンパで用意しなければいけない。
どうしてこんなに高額なのか?その金はどこに支払われ、最終的に誰に渡っているのか?
大メディアが報じようとしない、この大問題について、著者はミステリーの形式を利用して深く解明して行く。これは、いますでに起こっている事実かもしれないが、日本の移植事情が今のままでは将来必ず起こることだ、と断言できるだろう。
これは警世の書であり、できるだけ多くの人に読んでもらいたいと思う。
1)「買いたい新書」の書評No.336に、平木英人「慢性疼痛:<こじれた痛み>の不思議」(ちくま新書)を取り上げました。
「他人の痛み」という言葉があるように, 五感の中で「痛み(痛覚)」ほど, 客観的な測定が困難で, 主観的な感覚はない。よって他者の痛みの理解は難しいのである。恥ずかしながら評者はこの本によって, 「心因性疼痛(慢性疼痛)」の詳細を初めて知った。
「慢性疼痛症」は日本でどのくらいあるのか?腰痛症, 肩凝りなどの痛みをふくめた「慢性疼痛保持者」は全国推計(06年)で1700万人と, 国民の7人に1人となり, 加齢にともなって増加する傾向があるという。決してまれな病気ではなく, 頭痛, 偏頭痛, 関節炎, 椎間板ヘルニア, 挫骨神経痛などの「病名」に隠れているだけだという。
著者は1935年生まれ, 日本で最初に開設された九大の心療内科(池見酉次郎教授)で研鑽し, 心療内科一筋の道を歩いてきたベテランだ。作家の夏木静子の慢性疼痛を「絶食療法」で治癒させたという話も面白いし, 絶食療法の生理学的説明にある「グルコース代謝からケトン体代謝」へ切り換えると, 脳波にアルファ波が出現するようになり, 患者が素直になってくるという指摘など「ケトン食」を唱道している評者には大いに参考になった。
2)麻野涼氏から贈られた「死の臓器2:闇移植」(文芸社文庫、2016/8)を少しずつ読んでいる。最初に、麻野涼「死の臓器」(文芸社文庫、2013/2)を読んだ時に感じた「松本清張に似た社会派ミステリー」という印象は今回も変わらない。
今回は海外における渡航臓器移植とそれを斡旋して巨額の利益をえるブローカーとその餌食となる渡航移植患者とその家族を真正面から見すえた作品だ。
「イスタンブール宣言」により、各国は移植用臓器を国内で調達することが義務づけられている。例外的に前年実績数の5%を海外からの渡航患者の移植に当てることが認められている。
ところが、今や米国で小児の心移植を受けようとすると3億3000万円もの資金を、カンパで用意しなければいけない。
どうしてこんなに高額なのか?その金はどこに支払われ、最終的に誰に渡っているのか?
大メディアが報じようとしない、この大問題について、著者はミステリーの形式を利用して深く解明して行く。これは、いますでに起こっている事実かもしれないが、日本の移植事情が今のままでは将来必ず起こることだ、と断言できるだろう。
これは警世の書であり、できるだけ多くの人に読んでもらいたいと思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます