ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評など】野坂昭如「エロ事師たち」/難波先生より

2016-01-11 15:51:42 | 難波紘二先生
【書評など】
1)エフロブ「買いたい新書」の書評にNo.303:野坂昭如「エロ事師たち」(新潮文庫)を取り上げました。
 昨年12月に85歳で亡くなった作家のデビュー作だ。直木賞受賞作の「火垂るの墓」と「アメリカひじき」が代表作として知られ,前者はアニメ映画化もされている。これらは自分の戦争体験を書いた作品だが、作家としての野坂の特性がよく出ているのは本書だろう。題名通りエロ商品(録音テープ,エロ写真,エロ本,ブルーフィルム,張り型にダッチワイフなどの大人の玩具)の製造販売やコールガールの斡旋などに,生き甲斐を見出している男たちの物語だ。
 こういう商売は一旦始めると顧客の要求に応じて次第に過激になるもの。最後は16ミリのカラー・ポルノ映画製作まで始め,乱交パーティの主催もする。これらの創意工夫,発展の仕方が面白い。ところがこの小説には嫌らしさもわいせつ感もない。逆に読みながら吹き出してしまうような笑いが随所にある。その秘密は大阪弁の会話やモノローグが多く,地の文も大阪の現代口語で書いてある点にある。
 その結果,明治の初め牛鍋屋に集まるさまざまな客の言葉を書きとめた,仮名垣魯文「安愚楽鍋」(岩波文庫)にも匹敵する傑作が生まれた。これは久しく絶えていた滑稽本の伝統を受け継いでいる。以下、詳細はこちらに…
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1450226982

2) S. Kubrickの発音=
 以下「Nekogu」さんの書き込みから:
<「カブリック」って誰? (Nekogu)=2016-01-09 10:02
 今回の記事の「カブリック」に目が止まりました。映画「攻撃」はかなり前に見たことがあり、主演のカークダグラスが、直角に?曲がりくねった塹壕を延々と歩く様子をワンショットで写した映像に感心したのを思い出しました。
「2001年宇宙の旅」の監督でもあるKubrick は、日本では「キューブリック」と表記されています。それを先生は「カブリック」とされていますが、いったい何故、「カブリック」が正しく「キューブリック」は間違い?
 そこでWeb辞書で調べたら、(中略)Kubrickは「キューブリック」の表記で問題なさそうです。「クーブリック」でもよさそうですが、「カブリック」はまずいように思われます。>

 Stanley Kubrick(1928-99)はオーストリア系ユダヤ人のアメリカ二世(ニューヨーク市生)で、父は医師だったのでドイツ語とイディッシュ語ができたものと思います。Kubrickという姓は珍しく人名辞典に類例が見あたりません。
 Kubrick監督の映画を初めて見たのは「スパルタクス」(1960)ですが、初めて彼の映画監督としての才能に気づいたのは「2001年宇宙の旅」(1968)です。その頃は、「スタンリー・カブリック」と呼ばれていました。
 1993年になっても、クラーク、アーサー・C.(伊藤典夫訳)「2001年宇宙の旅・決定版」(ハヤカワ文庫,1993/2)では「クーブリック」と表記されています。
 クラーク、アーサー・C.(山高昭訳)「2061年宇宙の旅」(ハヤカワ文庫,1995/3)でも、「クーブリック」表記になっています。「クーブリック」表記はSF界に多いようです。

 映画関係では、双葉十三郎「外国映画ぼくの500本」(文春新書, 2003/4)が「キュブリック」、猪俣勝人「世界映画名作全史」(現代教養文庫、1975/11)では「キューブリック」と表記されています。
 私も最近のDVDジャケットには「キューブリック」と書いてあるのを知っていたのですが、ついうっかり昔の「カブリック」と書いてしまいました。これは、今はもう使われていませんね。申し訳ありません。

 この問題についてはWIKI「スタンリー・キューブリック」にこうあります。
<名前の表記について:
 イギリス英語による発音/'kju:brik/に基づく「キューブリック」のカナ表記が定着しているが、かつては「カブリック」「クーブリック」とも表記されていた。
「カブリック」表記についてはキューブリック自身から訂正依頼がイギリスから発せられたといわれる。
 各種のインタビューによる限り、最もアメリカ英語による発音/'ku:brik/[8]に近い「クーブリック」表記の提唱者は、アーサー・C・クラーク著『失われた宇宙の旅2001』の訳者あとがきに明記されているように翻訳家の伊藤典夫であり、その意向を受けた月刊『STARLOG』誌(ツルモトルーム版)が、「今日からクーブリックと呼ぼう」というキャンペーンを展開。以後、同誌では「クーブリック」表記を使用することになったため、SFファンを中心に「クーブリック」表記が広まった経緯がある。>
 まあ、この問題はロシア人名の英語表記(アントン・チェホフはAnton Chekhovと表記し、「チェコフ」と発音する)のようにKubrickと原綴りを書き、好きなように発音したらよいのではないでしょうか…
 Kubrick自身、米国から英国に移住した後に、発音にやたらこだわるようになったようです。
 トラブルを解消するにはやはり横書きへの移行が必要です。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1-11-2016鹿鳴荘便り/難波先... | トップ | 1月11日(月)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事