ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【中国の修復腎移植】難波先生より

2014-06-09 22:24:41 | 修復腎移植
【中国の修復腎移植】
 高橋幸春さんから「医薬経済6月1日号」のご恵送を受けた。お礼申し上げます。連載「修復腎移植の真実」の第5回「世界の腎臓移植」が載っている。
 3/18松山地裁での証人として「中国で間もなく修復腎移植をやり始めるだろう」と証言した。ふと思いついてPubMedを検索したら、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24349123
PLoS One. 2013 Dec 9;8(12):e81745. doi: 10.1371/journal.pone.0081745. eCollection 2013.
Benign and malignant renal cells are differentially inhibited during prolonged organ preservation.
という中国からの論文が見つかった。このJinanという都市は、この前どなたかに「山東省済南市」だと教わった。今回は中国製地図でも見つかった。済南市にある「軍司令部総合病院」からの論文だ。北京の「がんセンター病院」も協力している。
 「PLoS One」というのは創刊8年目の「オープン電子版医学専門誌」で、誰でも投稿でき、査読があり、パスしたものは電子版に掲載され、誰でも無料で読みかつコメントできる。「Restored Kidney」(修復腎)で検索をかけてあるのだが、論文テキストにこの用語がなく、発見が遅れた。西オーストラリア・パースのB. Heの論文(2013)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23726568
を引用した論文を探していて、見つかった。

Yu N1, Fu S2, Liu Y1, Fu Z3, Meng J4, Xu Z5, Wang B6, Zhang A1.
Author information:1Urology Department, General Hospital of Jinan Military Command, Jinan, Shandong, China.
3Orthopedics Department, General Hospital of Jinan Military Command, Jinan, Shandong, China.
4Blood Purification Department, General Hospital of Jinan Military Command, Jinan, Shandong, China.
5Urology Department, Qilu Hospital, Jinan, Shandong, China.
6Oncology Department, General Hospital of Jinan Military Command, Jinan, Shandong, China.
「Abstract: The worry of potential residual renal cancer cells in donor kidney after resection of small renal cancer impedes the extensive use of such controversial donor source. To explore the impacts of organ preservation process on the survival of renal cancer cells, we detected cell proliferation and viability of benign and malignant renal cell lines and clinical renal samples after treated with simulated organ preservation process. It was found that the viability and proliferation of malignant renal cells are inhibited much more than that of benign renal cells during prolonged organ preservation. The inhibition of proliferation in benign renal cells is fully reversible, while in malignant renal cancer cells is not fully reversible after a certain time. So potential residual renal cancer cells could be partly inhibited and eliminated by organ preservation process.」
要するに、「摘出した腎臓から小径腎がんを切除し、移植前に冷却保存液で潅流し、6~24時間冷蔵保存すれば、仮に残存したがん細胞が残っていても、がん細胞はKi-67を指標とする増殖能力失うが、正常細胞は死なない」というものだ。
 「保存液」とはUW(University of Wisconsin)液のことで、万波誠が留学していたウィスコンシン大学のベルツァー教授が開発したものだ。「修復腎移植」の腎臓はみなこの液で潅流後に保存、移植されている。1例も腎がん再発がないのは、UW液処理も関与しているかもしれない。
 いずれにしてもこの論文のアイデアは面白い。実験に使った腎臓は6個で、うち癌の直径が4.3~4.8cmのものが3個あり、結果は変わらないとしている。中国は径5cmまでの腎がんを修復腎移植の対象に考えているようだ。要は「径5cmまでのRCC(腎細胞がん)の腎臓を切除し、UW液で潅流した後、がんを切除しないでクーラーで遠隔地に運び、そこでがんを切除し修復して24時間以内に移植すれば、輸送中にがん細胞が死ぬので安全に移植できる」というものだ。
 宇和島の修復腎移植は、開発に病理医がからんでいないから、こういう基礎的な部分の研究が遅れた。万波医師の勘と技量に基づいた、ポランニーのいう「暗黙知」の産物だ。しかし、元病理学会理事長、阪大名誉教授の青笹克之氏が「徳洲会病理最高顧問」に就任したから、これからは変わるだろう。
 いずれにせよ中国は近々、「修復腎移植」に大々的に乗り出すだろう。死刑囚の臓器利用を止めたら、腎臓ドナーとしてもっとも可能性があるのは「廃物利用」だろう。日本の10倍の人口があるから、本気でやれば年10万件の腎臓がん手術がおこなわれ、50%が小径腎がんとすれば、5万件の腎移植が可能になる。このインパクトは大きい。日本移植学会も急いで態度を改めないと、修復腎移植の「環ニッポン包囲帯」が形成されてしまうだろう。そうなると高原理事長は「和田寿郎とともに日本の移植医療を押しとどめた男」として、歴史に名を残すことになろう。
 CKDで修復腎移植の再開を待っている患者さん、もう少しの辛抱ですよ、頑張って下さい。
小川先生、論文はどうなりました。徳洲会の関係者のみなさん、再申請はどうなりました。
ぜひメールでお知らせ下さい。

 この「医薬経済」の評論・記事は実に面白く有益だ。医学、薬学の業界裏情報が満載されている。月2回刊、年間購読料3.6万円と高いが、病院の医局に置いておくにはもってこいだろう。
「話題の焦点」欄には「全国の病理診断科診療所が10施設に達した、札幌の皮膚病理クリニックは2012年に4万3,000件の皮膚病理標本を診断した」とある。そういえば「呉医療センター」に病理医の院長が誕生するそうだ。今後、そういう事例が増えるだろう。
 記事は「米国の病理専門医は、ほとんどが病院内で仕事をしながらも雇用の形態ではなく、ドクターがグループをつくり高額な収入を得ている。日本の病理医も、今は地味な存在ながら、いずれは人気化することだろう」と結ばれている。
 6年制の養成課程になった薬剤師試験の結果が報道されている。合格率を上げるため、どこでも落ちそうな学生は留年させるのだが、入学後の歩留まりが表になっている。つまり入学時の人数を分母とし、そのうち卒業後に国家試験に合格したものを分子とした数値だ。
 それによると私学のトップは「神戸薬科大学」の75.7%、ボトムは「第一薬科大学」の9.3%。なんと10人に1人しか合格しない。広島県にある私大では、「福山大学」50.3%、「安田女子大学」48.0%、「広島国際大学」26.2%となっている。
 今年の問題は「基礎学力と思考能力」を問う問題が多く、「偏差値と合格率が見事に相関した」そうだ。つまり受験勉強は役に立たず、東大は合格率100%だったという。これで作りすぎた薬学科の定員割れが進むな…。
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-06-11 02:42:24
アフリカでも臓器移植をやりたい、日本人グループがいますが、またそれが、医療ビジネスとなり利権の温床になりそうです。暑い国ですから冷蔵施設がかかせませんから、白物家電の利益減少から、日本のメーカーが乗り出すようです。ただアフリカでは停電が多く、電力供給が問題です。原発でも作るのでしょうか?
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