ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【府立医大事件の構造】難波先生より

2017-02-17 09:18:14 | 修復腎移植
【府立医大事件の構造】
 自宅には朝6時頃、朝刊が配達される。だから東京や大阪・京都で配布される午前7時の最終版記事が載らない。2/15「毎日」7:01配信の最終ニュースをネットでみつけた。
 <周囲の医師らの反対押し切る形で病院幹部の判断で実施
 病気を理由に刑執行が停止された暴力団組長を巡る虚偽報告書作成事件で、京都府立医大付属病院(京都市上京区)で行われた組長の腎移植手術に、同大学の吉川敏一学長(69)が立ち会っていたことが14日、捜査関係者らへの取材で分かった。専門外の学長が手術に立ち会うのは極めて異例という。手術は周囲の医師らの反対を押し切る形で病院幹部の判断で行うことが決まっていたことも判明。京都府警は組長と病院側とのつながりも調べる。
 腎移植手術は2014年7月、暴力団側からの依頼を受けて府立医大病院で行われ、吉村了勇(のりお)病院長(64)ら3人が担当した。病院関係者によると、外科ではなく消化器内科が専門の吉川学長も、執刀には携わらなかったが立ち会った。病院関係者は「一患者のために学長が手術に立ち会うことは考えられない。特別に個人的な関係があるのではと思った医局員は多いのではないか」と話す。
 病院側は、高山受刑者が暴力団組長であるため入院を断ると決めていたが、幹部の方針転換で一転して受け入れていたことも分かった。府警は14日、病院や大学の学長室に加えて吉村病院長の自宅も家宅捜索し、関係資料を入れた段ボール箱を次々と押収した。>
http://mainichi.jp/articles/20170215/k00/00m/040/163000c#csidx8771dec9546046f9ab5665bbf1121f6

 これを読むと病院長だけでなく、学長も「虚偽診断書」作成に関与していたこと、手術は現場の医師の反対を押し切って行われたこと、などがわかる。

 さて「毎日」が報じた「学長が暴力団組長への腎移植手術にわざわざ立ち会った」という事実は、何を意味するのであろうか?以下は京都府立医大の学長HPのURLである。
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/sun/kyoushitu/index2-yoshikawa.html

1973: 京都府立医科大学 卒業後、同病院内科医として勤務
1984: 米ルイジアナ州立大学に留学
1993: 東大先端科学技術研究センター情報機能材料分野教授(併任)
1995: 京府医大 助教授(第一内科学教室)
2000: 京府医大 第一内科学教室 教授
2003: 京府医大大学院 医学研究科 生体機能制御学(大学院再編のため名称変更)教授
2003: 京府医科大学 東洋医学講座教授(併任)
2004: 京府医科大学 生体安全医学講座 教授(併任)
2005: 京府医科大学 生体機能分析医学講座教授(併任)
2006: 東大大学院農学生命科学研究科 アグリバイオインフォマティクス 特任教授(兼任)
2006: 京府医大、予防医学センター長
2007: 京府医大大学院 医学研究科 免疫内科学(名称変更)教授
2007: 京府医大学 健康予防医学講座 教授(併任)
2008: 京府医大・大学院 医学研究科 消化器内科学 教授
2008: 京府医大、 がん免疫細胞制御学 教授(併任)
2008: 京府医大・消化器先進医療開発講座教授(併任)
2009: 京府医大・医療センター所長(兼任)
2011: 京府医大学長
 普通の内科専門医ではなく、東洋医学、農学(薬草学など?)、予防医学、免疫学、がん免疫学などでも活躍していた。学問の幅が広ければ当然人付き合いの範囲も広くなる。 関西は暴力団の本場だから、多数の友人知人の中に暴力団組長がいても不思議ではない。

 2/15ロイターの報道によると、<京都府警OBが数年前、府立医大の吉川敏一学長(69)と幹部の指定暴力団の総長高山受刑者(60)を引き合わせていた。高山受刑者は2014年7月に府立医大病院で腎臓移植の手術を受けており、府警OBはこの直前に紹介したとみられる。診断書を作った府立医大病院の吉村了勇病院長(64)も高山受刑者と数年来の付き合いであることが判明、府警は病院側と暴力団の関係を調べる。>(元記事は「共同」)とあった。この「数年」というのは、<2014年の手術の直前以来>という意味だから、長くて2〜3年前のことで、紹介は学長—病院長の順だと思われる。
 「産経」によると<病院長の意向で一転して手術受け入れ、当初は暴力団幹部の手術を拒否>、<府立医大病院は当初、指定暴力団の総長、高山受刑者(60)の腎臓移植手術を拒否していたが、吉村病院長の意向で一転して受け入れを決め、平成26年7月に手術を実施したという。>と報じている。

 移植前にどこで人工透析を受けていたのか?という疑問を持ったが、これが府立医大系の「武田病院」だった。高山受刑者の実父(同じく指定暴力団組長、故人)がこの病院の常連患者だったという。(2/15「毎日」)その縁で高山受刑者も武田病院を透析病院として選んだようだ。
 今夜(2/15:21時)のNHK TVニュースは<吉川敏一学長が高山総長と京都市内の飲食店でたびたび会食する姿を目撃されていたことが、捜査関係者への取材でわかりました。高山総長は指定暴力団・山口組の直参と呼ばれる幹部の1人で、公立大学のトップが会食するのは極めて異例です。>と報じた。

 こうして報道内容を時系列で整理し、未確定情報を切り捨てれば、学長と病院長の圧力の下で、医大と武田病院の部下が「虚偽診断書」を書かざるをえなかった構図が浮かび上がって来る。吉村臨床腎移植学会理事長は 2/15、神戸での学会総会を欠席し、重要なシンポジウム「腎移植を巡る新たな問題点」の司会代役を剣持敬教授(藤田保健衛生大学教授)に依頼したという。高原史郞学会長(大阪大学寄付講座教授)による「学会発足50周年記念講演」(2/16、11:10〜11:40)の司会も吉村了勇が予定されているが、これも司会交代になるだろう。
 「五十周年記念」の会長講演は台無しになったが、これも修復腎移植を拒否されて裁判中に亡くなった腎移植待ち透析患者の無念を思えば、やはり「祟り」ではないかと思う。

 同日午前のシンポジウム(8:20〜9:50)はアステラス製薬がスポンサーで「アジア諸国における移植を巡る現在の諸問題(英語)」が開かれ、「チャングン記念病院」のヤンジェン・チアン(Yan-jen Chiang) 医師が司会を担当している。
 Chang Gung Memorial Hospitalは中国北京の西隣の省にある「海外渡航移植」で資金稼ぎをしている軍病院か?と思ってネット検索したら、台北にある「長庚記念医院」という大きなチェーン病院の本拠だった。

 2/16(木)最終日には、会長講演の前に特別講演「腎移植:過去から未来について学ぶもの」(Jeremy Chapman, Westmead Clinical School, The Westmead Institute for Medical Research)があるが、招聘講演なのに学会長が司会する予定になっていない。たぶん英会話があまり出来ないのではないか。
 ネットで調べると、チャップマンはメルボルン大付属のウェストミード医科大学の移植外科教授で、多数の論文がある。中に同じタイトルの論文を、同じ年に違う国の医学誌10誌に発表していて、「これは科学者のルール違反ではないか」と驚いた。
 ニコル博士が行った修復腎移植に反対した人物だと聞いたが、2016年にはハーバード大のデルモニコ教授と共著で「買い手は移植に気をつけよ」という総説論文を発表している。
http://www.kidney-international.theisn.org/article/S0085-2538(16)00307-0/abstract
 デルモニコは世界移植学会の会長として、ブエノスアイレスの学会で小川由英博士の修復腎移植発表が優秀賞を受けることに賛成した人だ。チャップマンはニコル論文発表当時は反対派だったかもしれないが、その後意見を変えた可能性がある。

 「今回の事件は学会や大学のトップによる意図的犯罪だろう」と指摘したが、京都府警OB仲介役として関与していることが、「文春オンライン」(西岡研介記者)により明らかにされた。
<京都府立医大捜査 山口組系組長と蜜月の陰に有名学長>
http://bunshun.jp/articles/-/1451
土曜日の「産経」には花田紀凱(きよかず)の「週刊誌ウォッチ」記事が載るが、彼がどうコメントするか楽しみだ。

 今回の事件で私が真っ先に思い浮かべたのは1968/8に札幌医大で行われた「和田心臓移植」事件だ。この事件の全貌は30年後の関係者の動静を含め、「凍れる心臓」(共同通信社)に書かれている。この事件が起訴できなかったのは、移植手術時に手術場にいた研究生(無給で、学位論文をもらうために医局にいる)の一人が、移植術の3ヶ月後に病死したことによる。
 この31歳の研究生が「脳波で脳死と判定したが、記録紙に脳波をプリントしなかった」と関係者が全員、口裏合わせをしたという。「死人に口なし」で病院に救急車が到着した時、後にドナーとされた青年には「自発呼吸があった」という救急隊員の証言は「脳波が平坦化しており、脳死と判定した」という和田教授の反論を覆すことができなかった。
 「府立医大病院」事件でも、いざトップがピンチになると、和田教授と同様な行動に出る恐れがあると思ったのだ。命令により「虚偽診断書」を書かされて、公文書偽造罪や医師法違反に問われたのでは、たまったものではないだろう。

 だが、その恐れは遠のいたようだ。千葉のO先生から2/5「日刊ゲンダイ」PDF記事がメールで届いた。記事を読むと、外科サイドは一旦「手術を院内でしない」と決めたのに、学長と病院長の圧力でやる方向に変えた。その背後にある暴力団組長との「深い関係」がよく書かれている。


 どうも事件の主役は吉川敏一学長(69)ではないか、と思えてきた。2011/4に第1期学長(任期3年)に就任。この1月に再選が決まり、4月から第3期目に入る予定だったという。単科大学だから総合大学なら「学部長」だが、なりたい教授はたくさんいる。選挙がらみで中傷やチクリも出る。だが有力な暴力団組長がバックにいれば、反対派の動きを押さえることができるだろう。どうやら真相はこのあたりに収斂しそうだ。

 ドナー腎の由来についてはその後も調査報道がない。
 上記チャップマン& デルモニコ論文とアメリカの医療事情を視察した友人の話によると、欧米規準では脳死体は「物」なので、扱うのは医者でなくてもよく、人工呼吸器を付けたまま、専用ジェット機に乗せ、「臓器摘出施設」まで運び、そこで死体解剖技師が臓器を摘出し、それが商品となるのだそうだ。「買い手」というのはレシピエントのことだ。
 かつて日本では「売血」が合法だった。今の「献血」は無償だが、医療機関に対して有償で供給されている。「黄色い血」の教訓を踏まえた上で、日本でもそろそろ血液、組織、臓器の有償提供を考えるべきではないか、と思う。
 この問題については2004年に上梓した「覚悟としての死生学」(文春新書)の「身体を売るのは自分の勝手か」という項目で論じた。

 米国とオーストラリア臓器提供の現状を知り、さすが偉大な現代の哲学者ピーター・シンガー(「あなたが世界のためにできるたったひとつのこと:<効果的な利他主義>のすすめ」,NHK出版) http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1464844004
の影響は大きいな、と思った。

 良いニュース:厚労省で継続審議になっている修復腎移植の「先進医療審議会」が3月に再開されるそうだ。

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