ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【渡航移植】難波先生より

2013-09-23 11:54:14 | 修復腎移植
【渡航移植】中国での渡航腎移植について、ある暴力団関係者が「日経ナックルズ」記者にこう証言している。
 http://n-knuckles.com/street/underground/news000334.html

<――今までに何人くらい中国に連れて行ったのか。
「300人くらいだな。年に50~60人ってところ。これだけ人数が多いから、俺は1割のマージンでもやっていけたわけだ。街金を通して腎臓を売りたいって奴らはひっきりなしに来る。そっちからも報酬で出るから、結構いい稼ぎにはなったな。それに日本人の臓器は結構いい値がつくらしいんだよ。その代わり、買い手から敬遠されるのはフィリピンとか。あそこは麻薬とかで汚い腎臓が多いらしいよ。まあ、こんなところで勘弁してよ。臓器の話は>

 「年に50~60人」というのはドナーとレシピエントを合わせてかと思ったが、記事をよく読むと「売り手(ドナー)」だけの話だ。山谷か西成か場所は不明だが、 ドヤ街の住人の話だろうか。この関係者は6年ほどで300人を中国に連れて行ったと証言している。これが全体の1/10とすれば、少なくとも3000人の腎臓ドナーが中国に渡って、摘出手術を受けたことになる。


 「6年前」というと2007年、「宇和島腎臓売買事件」が初めて報道された翌年である。腎臓が金になると知り、「臓器移植法」が実質及ばない中国にドナーを連れて行き、腎臓を摘出させるのである。この男はドナー専門で、レシピエント専門の奴もいるらしい。その腎臓を移植された日本人もいるだろう。理論的には最大3000人いる。この他に中国人死刑囚に由来する腎臓やタイ、フィリピンなどで腎移植を受けた人もいるから、<年間500~600人>が全国に散らばっているのではないか。


 自治医大医学部小林英司教授の研究によると、「日本臨床腎移植学会」に登録している136施設に、8297人の外来通院している腎移植患者がおり、うち198名(2.4%)が海外で腎移植を受けていた。(2006年3月の「研究報告書」データ)
 このうち、渡航国名を明らかにした180名の渡航先を見ると、次のようになっている。
 中国=106人、フィリピン=30人、米国=27人、韓国=11人、タイ=2人、フランス、パキスタン、インド、ペルー=各1人
こちらはレシピエントの方のデータであり、マッチするドナーは外国人である可能性が高い。


 どの国でも移植用の臓器は不足しているが、脳死体からの臓器移植が一向に普及しない日本では、他方に透析中の慢性腎不全患者が30万人もいるから、「100年待ち」(高原阪大教授)と移植学会理事長がいうほど、腎臓が絶望的に不足している。
 勢い、金のある人は海外で腎移植を受けたい、ということになる。行き先は人口が多く、腎臓を売りたい貧乏人も多い、中国がメインだ。


 2000年頃から死刑囚の腎臓を移植に使用するようになり、中国での腎移植は急速に増えた。この場合は、法的には「臓器取り引き」といえない。
2008年までに宗教団体「法輪講」のメンバーなど6万5000人の死刑囚が処刑され、13万個の腎臓が移植に利用されたという。
 http://www.epochtimes.jp/jp/2013/08/html/d13820.html
が、中国の病院は透明性が低いから、レシピエントには何処からの腎臓かわからない。可能性としては「売られた腎臓」であることを否定できない。



 ここに来て、海外(中国とタイ)で腎臓移植を受け帰国したところ、患者が日本国内で受診を拒否されたという情報に接した。神戸大のケースでは理由も告げず、拒否されたという。私でさえ2例の情報に接するのだから、実態はその10倍、100倍あると思われる。
 この問題は、07/7に「毎日」が2回取り上げ、
 http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-482.html
 その後、TBS「イブニング5」が「渡航移植者の診療拒否」(07/9/11)として、報道している。
 http://www.tbs.co.jp/eve5/inochi/20070911.html


 「正当な事由のない診療拒否」は医師法19条第1項「医師の応召義務」に違反している。にもかかわらず、こういう事例が出るのは「もしかして犯罪に巻き込まれたら」と医師が考えるからだろう。患者よりもわが身が可愛いのである。
 さらに、国外での腎移植患者の治療をしたことがわかれば、厚労省の監査を受ける恐れがあり、診療報酬の返還や保険医療機関取り消しなどの処分を受ける恐れがある。経済的、社会的に大きなダメッジを被る恐れがある。
 こういう事態への過剰な心配が医師の萎縮診療をもたらしているようだ。医師のモラルを麻痺させているのだろう。


 「臓器の移植に関する法律」第11条で医師に禁止されているのは、「第5項:何人も、臓器が前各項の規定のいずれかに違反する行為(臓器売買)に係るものであることを知って、当該臓器を摘出し、又は移植術に使用してはならない。」の通りであって、法が禁じているのは「売買がらみの臓器の摘出と移植術」である。しかも「知っていて」やった場合を問題にしている。
 「知る」というのは、通常の「善良なる管理者」の注意義務を規定しているにすぎず、移植医が「犯罪捜査」に近い調査の義務を負うわけでない。
 日本の法律はわざとあいまいな書き方をしておいて、違法、適法の解釈は「運用解釈」と称して、役人が自由に振る舞えるようにできている。
 渡航移植だろうと、国内移植だろうと、移植後のレシピエントの治療はしなければいけない。売買があったかどうかは関係ない。それが医師に必要な倫理である。


 売春は悪だとされているが、その起源はメソポタミアにおける神殿売春にある。処女は神殿に巫女として仕え、男に身体をまかせた。その代金は神殿に奉納された。年期奉公が明けると、晴れて結婚が許されたのである。4世紀にアウグスチヌスが出て、原罪思想に基づき性を悪としてので、個人売春がキリスト教で悪とされるようになった。
 欧米で渡航移植を受けると、もちろん(心臓移植などでは)億単位の金がかかる。保険が利かないからだ。でその金は病院や大学に寄付する。研究費(グラント)と同じ扱いになる。移植施設はそこから入院、手術、薬剤、ドナー遺族(脳死体の場合)への謝金、補償、コーディネーター経費、輸送費などを支払う。もちろん医師、看護婦などの手当も支払う。
 東アジアではこういう洗練された臓器システムが未発達なので、「個人取り引き」の性格がつよい。それが悪だとされるゆえんであろう。


 しかし、やがては中国でもタイでも、欧米型のシステムが整備されるだろう。田中紘一氏が三菱商事と組んで、シンガポールでやろうとしていることは、それだと私はにらんでいる。シンガポールは「臓器提供をしない」という明白な意思表示をしないで死んだ人からの臓器摘出が合法的な国だ。やがて隣国のマレーシアもインドネシアもそういう洗練された方式を導入するだろう。恐らくそういうシステムは中国でもタイでも10年以内に出来上がる。ドナー保護をうたった「イスタンブール宣言」に矛盾しないからだ。
 そうなると、渡米移植よりも経費が安い東アジア・東南アジアへ「研究費を寄付し」、見返りに「臓器移植を受ける」患者が日本から殺到するだろう。「臓器売買だ」というケチを日本移植学会らつけられる恐れがなく、「診療拒否」をされる恐れもないからだ。修復腎移植に関してこれらの国は禁止していないから、「小径腎がんの全摘費用」を寄付金からまかなうとすれば、ドナーは殺到するだろう。
 日本移植学会の幹部は、こういう近未来の風景を想像することができないでいる。シンガポールのチャンギー空港はアジアのハブ空港だ。国内のあちこちから直行便が出ている。公用語は英語だ。
 患者も、腕を磨きたい若い移植外科医もすぐに飛んで行ける。そういう流れが生じたら、日本移植学会の未来はどうなる?大学の「移植外科講座」は将来的にどうなる?
 TPP交渉も年内には大枠が見えてくるだろう。医療の国際化は避けて通れない。学会幹部は頭を開国する必要があろう。


 2006年暮の松山地裁判決で、裁判長は「「死体からの臓器提供が著しく不足し、多数の待機患者が存在する中で、起こるべくして起きた事態であることを否定できない。国は早急に法整備やガイドラインを策定し、再発防止に努めるよう強く希望する」と判決文の中で述べた。
 その後2008年5月に、国際移植学会は「イスタンブール宣言」を発表し、渡航移植の抑制と「自国に必要な移植用臓器は自国で調達する」ことを呼びかけた。誰が読んでも「世界一臓器が不足している国」日本が対象になっていることは明白であろう。


 それなのに、厚労省も日本移植学会も、移植用腎臓の提供数を増やす努力をしていない。それどころか「修復腎移植」の先進医療認可さえ、妨害し却下させた。
 首都直下型地震は間違いなく起こる。新潟、群馬、埼玉3県の知事が、それに備えて「透析患者の受け入れ」を話しあっている。
 http://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20130827063010.html
 だが高価な透析機を予備として沢山備えておくのは非現実的だ。それよりも重要なことは「腎移植を増やし、透析患者を減らし」ておくことだろう。


  こうした問題に対して、移植学会は何ら有効な対策を打ち出せないでいる。
 この9/3~9/7、京都で開かれた「アジア移植学会」(高原史会長)、「日本移植学会」(沢芳樹会長)に参加した複数の医師から話を聞いたが、一般会員の中に現執行部の無能・無策を問題視する意見はなく、高原移植学会理事長も、自分が問題の製薬会社の寄付講座教授であることについての、良心の疼きや痛痒はまったくないそうだ。


 それどころか、「渡航移植を受けた患者の治療をしない」というのは、関東と関西ともに、移植学会幹部たちが「保険適用外」という噂の発信源であるという。「腎移植をしなければ、透析患者が増え、そちらで十分に儲かる」という構図だ。実際、移植学会理事長は大阪でトップクラスの透析病院で「併任兼業」をしている。移植医の裏の顔が透析医なのである。腎不全患者はたまったものではない。
 まったく、K.V.ウォルフレン「人間を幸福にしない日本というシステム」(新潮文庫)、そのままの状況だ。




 高橋さんの「修復腎移植が透析患者を救う(仮題)」の予告がAMAZONに載った。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_ss_c_0_5?__mk_ja_JP=カタカナ&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=修復腎移植&sprefix=修復腎移植%2Caps%2C283

 発売は11月末になっているが、これは奥付の刊行日のことで、実売は10月中頃になるだろう。
 間もなく初稿印刷原稿が届くことになっているので、読むのが楽しみだ。


 青山さんの「小説修復腎移植」にも、レビューが付いたようだ。林弁護士の本も売れているようだ。
 フロリダ大ハワード教授が名付け親の「修復腎移植」という言葉が普及し、これが日本でも公認される日が少しでも早く来ることを望みたい。


 間もなく10/1が来る。7年前のこの日、愛媛県警は日本初の「腎臓売買事件」を摘発した。その後の私の調査では、捜査に1年以上を掛けたのは「医師がらみ」というシナリオをあらかじめ描いていて、厚労省移植対策室とも密接な連絡を取っていたからだ。日本初の事件だから、移植学会幹部も事前に意見聴取されていた。つまり下手をしたら「厚労省村木課長」事件と同じように、冤罪を生んでいたかもしれない。


 大島伸一副理事長が厚労省の外口局長と密接な連絡を取り、「朝日」が「二人三脚」と評したように「病腎移植禁止」へと走ったのには、裏にそういう事情がある。その大島氏は「もうすぐ(国立長寿医療研究所=最近研究員の不正が複数発覚した、を辞め)年金暮らしに入るのに、裁判が続くのはかなわん」と洩らしているそうだ。確かに「辞めたらただの人」だから、会員数が減少している移植学会の法廷闘争資金援助がいつまで続くかわからない。究極的には個人負担になるだろう。


 私は「日本の学者は自分の頭で考えず、外国に例があると無批判に受け入れる」から、修復腎移植の実現には10年はかかるだろうと思っていた。
 日本で最初に生体肝移植をやった島根医大の永末移植を評価せず、遅れて始めた京大の田中紘一が栄誉を奪った。しかも「病気肝臓移植」を始めたのは田中なのに、それは一切問題にしないで、宇和島の田舎町で行った病腎移植は、学会理事長田中紘一を始め、学会がマスコミと一緒になって、潰してしまった。「何をやったか」ではなく、「誰がやったか」が問題にされる国だ。そんな国では、ビル・ゲーツもスティーブ・ジョブズも、GOOGLEもスマート・フォンも出現のしようがない。
 だが10年までには、あと3年ある。もう一踏ん張り頑張らなくてはと思う。
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