日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

白銀の信濃を行く - BETTAKO

2017-12-23 20:20:56 | 居酒屋
満を持して乗り込んだはずが、思いもよらない展開になりました。八時を回ったところでようやく暖簾をくぐります。

順を追って申しますと、開店の10分前に現地入りして仲間を待ったところ、家庭の事情により行けなくなったというまさかの知らせが入りました。しかも、開店時刻を過ぎても提灯がつきません。釈然としないまましばらくやり過ごしてから戻ると、縄暖簾をくぐっていく人影が遠巻きに見え、もしやと思い店先へ行ってみると、視界に入ったのは先客で鈴なりになったカウンターでした。
この状況から察したのは、事情を知る常連客だけ通すという前提で、あえて明かりを消しているのだろうということです。そう気付くに至り、年に一回訪ねる程度の分際で、暖簾をくぐってよいものかが悩ましくなったとでも申しましょうか。そのように思うのは、一人で呑むことについては一昨日でやり尽くした感があり、特段思い残すことがなかったからでもあります。むしろ、さらに重ねて訪ねることで蛇足にもなりかねません。仮に行くとしても、お客が一巡する頃を見計らって訪ね、挨拶がてら軽く一杯やって終わりにするのがよかろうと考えました。

しかしこれが一筋縄ではいきません。お客が一巡するまでをどうつなぐかと考えたとき、まず思い浮かんだのが赤羽の「まるます家」でした。しかし現地に乗り込むと、想像を大きく超える行列ができており、取り付く島がありません。代わりを探そうにも店があまりに多すぎて、これはと思うところは混んでおり、どうにも決めようがありませんでした。
赤羽から退散した後、次なる候補として閃いたのが城北の聖地「斎藤酒場」です。何度も通えることを重視するようになってからというもの、教祖がいかに推そうとも、生活圏から外れた都内の酒場は敬遠してきたのが実情ながら、一生に一度巡礼するならまたとない機会ともいえます。しかるに十条で電車を降りると、今度は祝日のため休業との張り紙がorz
こうして二時間が空しく過ぎました。九時を過ぎれば落ち着いてくる可能性が高いとはいえ、そこまで引き延ばせば正真正銘の最後が近付いてきます。さすがにそれは御常連の方々に譲るべきでしょう。入れるかどうかにかかわらず訪ねてみて、振られれば挨拶だけして帰る覚悟を固め、玄関の前に立ちました。すると、店先で一服していた青年から、予約はあるかとの一言が。やはり今日は予約の常連客だけ通しており、事情を知らずに来たお客は断っていたようです。全て承知の上と打ち明けて、挨拶だけでもと申し出たところ、肴はもうないとの断り付きで、どうにか入店を許されるという顛末です。

そのようなわけで、通されたのは一番奥のテーブルでした。カウンターと手前のテーブルは御常連で埋まって入り込む余地もなく、奥のテーブルが荷物置場兼引越のための作業場と化していて、その片隅に一人ぽつんと座るという、端から見れば何とも痛い状況です。肴がないのはもちろんのこと、お湯割りのグラスも全て出払っており、代わりに出てきたのは角ハイボールのジョッキでした。
しかるにさほどのいたたまれなさを感じなかったのは、これがある意味分相応に思えたからでもあります。というのも、先客が皆顔見知りの常連同士だからです。人並み程度の社交性があるならともかく、自分がこの場に溶け込めそうにないのは明らかでした。いの一番に訪ねたところで、楽しめなかった可能性は十分あります。少なくとも、日頃の姿からかけ離れているのは間違いありません。片隅で焼酎一杯飲み干して、素早く去るべきだろうと悟るのに、さほどの時間はかかりませんでした。

とはいえ、無駄足だったとは思いません。隠居していた大女将がここぞとばかりにお出ましになる一方で、引越の準備が早くも始まるなど、最後をしみじみ実感する場面に充ち満ちていたからです。店内を見渡せる一番奥のテーブルを、一人で借り切れたのはむしろ幸運だったともいえます。
一昨日は慣れ親しんだ日頃の姿を、今日は御常連で賑わう最終日の光景を見届け、名酒場の最後に末席とはいえ立ち会うことができました。しかし、今週限りと知らされなければ、来週何も知らずに乗り込んで、もぬけの殻になった店を前に立ち尽くしていたでしょう。咄嗟の機転に感謝します。
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白銀の信濃を行く - 再出発

2017-12-23 17:30:09 | 関東
帰宅して荷物を置き、一息入れてから再び出てきました。只今池袋へ向かっています。
東京駅で何気なく列車を降りたとき、空気の暖かさに不意を突かれました。荷物を担いで歩いた後は、汗が吹き出てきました。日中羽織っていた厚手の雨合羽を薄手に代え、それさえ今は鞄に収まっています。先週北関東から帰ったときは、現地に比べ多少の気温差こそあったものの、これほど歴然とした違いまでは感じませんでした。関東と信州の気候差を、改めて実感させられる出来事です。
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白銀の信濃を行く - あさま620号

2017-12-23 14:56:38 | 甲信越
今日は異例の早仕舞いとなりました。上田から新幹線で帰ります。
上田電鉄に乗っていきたいのはやまやまながら、そうすると帰りの列車との接続が悪く、集合時刻に遅れてしまうのです。軽井沢まで上ってから乗り継げば、時間的にはちょうどよいものの、上田でも軽井沢でも同額という料金体系を考えると、少なくとも金銭面での利はありません。酒瓶を三本抱えて荷物が重くなったこともあり、一旦帰って身軽になろうと考えた次第です。
上田から東京までなら、グリーン車に乗っても二千円増であり、一時間半の乗車時間を考えると乗り得です。しかし今日は自由席で済ませました。二日間活動した帰りならともかく、日帰りの活動にグリーン車を奢るのがためらわれたのに加え、乗車前に発売状況を確かめたところ、グリーン車だけはそこそこ埋まっていたからです。「はくたか」の直後に長野を出るという半端なダイヤのおかげで、自由席には十分すぎるほどの余裕があるため、今日のところはこれで十分でした。明日は聖夜、浮いた予算を仙台からの帰りに回すのも一案でしょう。

★上田1439/あさま620(620E)/1612東京
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白銀の信濃を行く - 再登場

2017-12-23 13:47:42 | 甲信越
長野に戻ってくるまではよかったものの、そこから先が噛み合いません。長電の特急にはあと一歩のところで間に合わず、上りの新幹線も出てしまいました。唯一ほどよい間合いで乗り継げるのが小諸行の普通列車です。西上田から乗った三両編成が再登場と相成りました。

★長野1345/650M/1428上田
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白銀の信濃を行く - 雪晴れ

2017-12-23 12:54:47 | 甲信越
一時間の滞在は慌ただしく過ぎ去りました。折り返しの列車で長野へ戻ります。
結局雪雲に覆われるような場面は一度もありませんでした。田畑に雪が積もっていたのも、古間から黒姫までのわずかな間だけでした。とはいえ、穏やかな雪晴れもよいものです。「白銀」の表題に偽りなしということにしておきましょう。

★黒姫1252/330M/1326長野
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白銀の信濃を行く - 萬屋酒店

2017-12-23 12:42:17 | 酒屋
「信濃屋」と並ぶ目当てが「萬屋酒店」です。先々月訪ねたときは早仕舞いという誤算に見舞われましたが、そのとき買い損なった「松尾」のひやおろしがまだ残っていました。その隣には蔵出しされたばかりの新酒も。両取りできる絶妙な時期に重なったのは幸いです。

萬屋酒店
上水内郡信濃町柏原2711-23
026-255-2078
900AM-2000PM
元日他不定休
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白銀の信濃を行く - 信濃屋

2017-12-23 12:07:10 | B級グルメ
出がけにみかんを一個、バナナを一本いただいてから飲まず食わずで通し、空腹感も限界に近付いてきました。黒姫に着いたところでようやく腹ごしらえができます。満を持して「信濃屋」の暖簾をくぐりました。
昼時に重なったこともあり、店内は八割以上埋まった盛況。空いたテーブルも片付いておらず、実質的には満席といってもよい状況です。だからといって待ち客が出ることはなく、一組が席を立てば次のお客がすぐさま入り、店は滞りなく回転しています。これは、厨房と客席が完璧に連携しているからこそできる芸当です。寂れた駅前で、唯一気を吐く地元客御用達の大衆食堂の雰囲気は、業態こそ違えど柏崎の「そばよし」を彷彿させるものがあります。
前回はカツ丼、カレーの二者択一で迷った挙げ句、両者の中間をとってカツカレーをいただきましたが、今回はカツ丼一択と決めていました。やがて運ばれてきたお盆を見て気付いたのは、出で立ちが大きく変わったことでした。ご飯が詰め込まれていた深い陶器の丼が、麺類と同じ漆塗りの丼に変わったのです。浅くなった代わりに直径は拡がり、割り箸の長さとほとんど変わりません。しかも特筆すべきは、カツがその丼の直径には収まらず、およそ三対一程度の大きさに切り分けられて、折り重なるように盛りつけられていることです。この丼に千切キャベツとたくあん、味噌汁がつき、今回もすっかり満腹と相成りました。

信濃屋
上水内郡信濃町大字柏原2711-6
026-255-2058
1100AM- (売切御免)
水曜定休(祝日の場合翌日休業)
カツ丼750円
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白銀の信濃を行く - 拍子抜け

2017-12-23 11:40:06 | 甲信越
小刻みに電車を乗り継ぎ北しなの線に入りました。運用につくのは長野色をそのまま残した115系3連です。
表題に白銀などと掲げたのは、これから向かう黒姫を想像してのことでした。希にみる小雪だった昨季に対し、久々に冬らしい冬となりつつある今季、あちらもさぞや深い雪に埋もれているだろうと思ったのです。ところが何のことはない、軽井沢から坂城までは関東のような乾いた冬晴れでした。屋代に着いた頃から雲が出て日差しが遮られるようになり、さらに進めば雪雲に覆われるのかと思いきや、長野で再び日が射してくるという経過です。豊野を出ても、数日前に降ったらしき雪がわずかに残っている程度に過ぎません。これなら例年よりもむしろ少ない方ではないでしょうか。何とも拍子抜けする結果です。

★西上田902/629M/909坂城945/2603M/954屋代1045/2633M/1105長野1119/329M/1153黒姫
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白銀の信濃を行く - 生坂屋

2017-12-23 10:32:06 | 酒屋
坂城駅から三駅下ると屋代駅です。毎度おなじみ生坂屋で酒を買います。新酒の蔵出しがいよいよ本格化する中、これまで何故か食わず嫌いをしてきた積善を選択。花酵母を使った酒というと、連想する通りの強い香りを放つ酒が多いものですが、果たしてこちらはどうでしょうか。

酒乃生坂屋
千曲市屋代1852-1
026-272-0143
840AM-2000PM(1-2月及び日祝日 -1930PM)
水曜定休
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白銀の信濃を行く - 坂城駅

2017-12-23 09:47:11 | 甲信越
続いては二つ隣の坂城駅で下りました。専用線の遺構が残る西上田に対して、こちらには現役の専用線が残ります。折しもタンク車を牽引してきた機関車が側線で一息入れており、最近配備されたと思しき二両の入換機が待機するなど、今なお健在ぶりを発揮しているのは貴重です。
それに加えて、169系が電動車のトップナンバーを含む三両編成で保存されているのは特筆されます。敷地に余裕のある北海道を除けば、保存されても先頭車だけという形式がほとんどの中、編成単位で残される例はきわめて貴重です。屋外にもかかわらず、よい状態を保っているのも好ましいものがあります。チャコールグレーの木造駅舎が強い逆光を浴び、全く記録にならないのが唯一惜しまれるところではありますが、小一時間の滞在も全く退屈することはありませんでした。
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白銀の信濃を行く - 西上田駅

2017-12-23 08:52:24 | 甲信越
小諸から屋代まで乗るのが通例のところ、趣向を変えて西上田で下りました。列車から降り立つのは初めてですが、車で訪ねたときには気付かなかったものが見えきます。庇を回した木造駅舎もさることながら、周囲の情景が秀逸です。かつて幾多の貨車が並んだ側線と、それに接するセメントサイロが残り、すぐそばまで山が迫る一方、反対側にある上田市街の方角は開けていて、盆地の果てと実感できる眺めが印象に残ります。凛とした寒さの中、待合室のストーブの暖かさが身に染みました。
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白銀の信濃を行く - 最後の砦

2017-12-23 08:30:02 | 甲信越
小諸で二両編成から三両編成に乗り継ぎました。いずれも冷色系の内装をそのまま残す編成です。
夕方までに行って戻るという条件で考えたとき、一昨年までは両毛線、上越線という選択肢もありました。三、四年前なら中央東線、篠ノ井線も選べました。しかしいずれも首都圏で使い古した211系に置き換えられ、わざわざ乗りに行くには値しない代物に成り下がってしまいました。新潟の115系も風前の灯となりつつある今、最後の砦になりそうなのがしなの鉄道の115系です。少しでも長く走り続けてほしいと願っています。

★小諸814/627M/839西上田
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白銀の信濃を行く - 旧駅舎口

2017-12-23 07:46:35 | 甲信越
軽井沢からはしなの鉄道で下ります。何度も繰り返してきたおなじみの行程ですが、今回から変わったことが一つあります。新幹線開業前の旧駅舎が改装され、駅としての機能を二十年ぶりに取り戻したことです。橋上の改札を素通りし、旧駅舎口から乗り込みました。

★軽井沢741/753M/805小諸
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白銀の信濃を行く - はくたか551号

2017-12-23 06:30:16 | 関東
始発の「はくたか」で旅立ちます。二月に乗車したときは、野沢へ行くスキー客で上越新幹線並みに混んでおり難儀させられましたが、スキー客で混むのは年が明けてからだと経験上分かっています。果たして自由席はがら空きでした。筑波山、男体山、赤城山を一望できる三列席の窓側、前後と横に誰もいない好位置を確保し、関東平野の朝焼けを眺めつつ北上します。

★東京628/はくたか551(551E)/734軽井沢
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