日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

名勝負10選 - 第1試合

2017-08-07 23:00:11 | 野球
開会式は案の定中止となり、日程は少なくとも一日延びますが、こちらは今日から高校野球の記録を再開します。今季は趣向を変えた試みがあると申しました。題して「名勝負10選」です。
一月半にわたり戦われた四千近い試合の中から、10試合に絞るのは至難の業ともいえます。とはいえ、思いつくまま挙げていってもきりがありません。そこで思いついたのが、自分なりの視点で10通りにまとめ、その視点から象徴的といえる一戦を選ぶというものです。取り上げる試合は既に決めており、日付の順に振り返っていきます。第1試合は伝統校にまつわる話題です。

高校野球の試合結果を追いかけるにあたり、初期から注目してきたのが伝統校の戦いぶりです。今季は藩校を発祥とする伝統校、彦根東が代表に返り咲いたのを初めとして、松本深志が二年連続8強に進出しました。聖光学院の餌食となった会津も、例年初戦、二戦目あたりで敗退してきたことを考えると、8強入りした去年に次ぐ健闘だったといえます。
全国各地で繰り広げられた古豪の戦いの中でも、今季の白眉といえるのが、北海道の地区代表決定戦で実現した北海と札幌南の一戦でした。試合の翌日、後々振り返っても今季の五指に入るであろう好試合と絶賛しましたが、その考えは大会が終わった今になっても変わりません。
公立校を依怙贔屓し、私立校を蔑ろにしがちなのが当blogの特徴で、特に公立校を蹴散らす私立の強豪には見向きもしてきませんでした。しかるに北海に限って度々取り上げてきたのは、地方では強い代わりに全国ではまるで勝てない内弁慶ぶりが、強豪にしては憎めないという理由によるところが一つ。それに加え、道内一の名門たる札幌南より、さらに10年古い歴史に対する敬意によるところもあります。

道都札幌の双璧をなす伝統校が、選手権では三年ぶりに相見えました。強豪と進学校の対戦となれば、一方的な展開を予想しがちなところではありますが、個人的には下剋上を密かに期待しました。三年前の対戦では札幌南が勝っており、全く歯が立たない相手とは思われなかったからです。そして蓋を開ければ、前半終了時点で2対1と優位に立ち、6回表に4点奪われ逆転されても、その裏に3点取ってすぐさま同点に追いつきました。しかし、もしやという淡い期待も空しく、8回と9回に各3点取られて終戦という顛末です。
そのまま勝ち上がって南北海道大会を制した北海にとって、札幌南戦での5失点が、決勝の東海大札幌戦と並ぶ地方大会の最多失点となりました。結果として、奪った点に関する限り準優勝校と全く同様に食い下がったわけであり、報道も札幌南の健闘を讃えるものがほとんどでした。しかし天邪鬼としては、むしろ北海の老獪な戦いぶりが印象に残りました。

今季は無名校の躍進もあり、日頃見向きもしない強豪の戦いぶりを、否応なく目にする場面が多々ありました。その中で繰り返されたのが、中盤までは互角に渡り合いながらも主導権は握れず、終盤に突き放されて終戦という展開です。
この試合結果から気付いたことがあります。何試合も勝ち抜いて行かなければならない強豪には、個々の試合、ひいては大会全体を俯瞰する大局観があり、序盤、中盤、終盤それぞれの局面で発揮すべき力を見極めているということです。長距離走者が初めから全力疾走することなく、他の走者の動き、地形、気温、湿度に風向きなど、あらゆる要素を考慮しつつ、全行程の配分を見極めながら戦っていくようなものとでもいえばよいでしょうか。全力疾走すれば瞬間的に抜き去れるとしても、その速さが終盤まで維持できるはずもなく、ここぞという場面で抜き返され、そのまま一気に引き離されるということなのでしょう。一見善戦したようであっても、それは相手の思う壺にはまっていただけなのかもしれません。古豪の古豪たる所以を見せつけられる一戦でした。

★南北海道大会札幌地区代表決定戦(7/2)
 北海11-5札幌南
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