日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

復興の新MOS

2011-07-07 22:46:15 | MOS
昨日一軒のMOSが産声を上げました。もちろん、ただそれだけならわざわざ取り上げることではありません。重要なのはそのMOSができた町のことです。「マリンコープ宮古店」なる店名が示す通り、先の震災で津波に呑まれた宮古の町で、復興の狼煙を上げるかのように開かれたのがこの店なのです。

この店の開業は大きな代償を伴っていました。駅前で20年来営業してきた宮古店の閉店と引き換えになってしまったことですorz
三陸沿岸の釜石と宮古に残る昔ながらのMOSについて語ったのは、被災のちょうど一月前のことでした。その時訪ねた釜石店は、商店街ごと波に呑まれて休業に追い込まれ、同じく波をかぶった陸前高田店ともども、いつしか休業店舗のリストからも消え去ってしまいました。どうにか営業再開を果たした宮古店も、ほどなくしてこの新店舗に後を託して消え去り、昔日の面影を残すMOSが三陸から全て姿を消しました。後を引き継ぐこちらのMOSは、その名から推し量られるように商業施設併設型の店舗で、夜8時という閉店時間からして、フードコートか、百歩譲ってスーパーの一角を区切った安普請のMOSであることが予想され、そう考えると必ずしも諸手を挙げて歓迎できることではないのです。
半永久的に復旧の目処が立たなくなった常磐線沿線といい、波に根こそぎさらわれた三陸沿岸の町といい、これらの土地を今年に入ってことごとく訪ね歩いたのは、ある意味虫の知らせだったのでしょうか。もしかすると、震災から立ち直った沿岸の町は、自分が知るのとは似て非なる町に変わってしまうのかもしれません。

とはいえ、被災地の惨状ばかりをセンセーショナルに取りようとするマスコミの常套手段に翻弄されて、新しくMOSができるまでに立ち直っているとは思わなかっただけに、わずか4ヶ月でここまでこぎ着けた東北人の気概に対しては、率直に敬意を表したいと思います。盛岡から山を挟んで100km隔てた宮古の町はあまりに遠く、ふと思い立ってたどり着けるような場所ではありません。それに、途切れた線路が復旧するまで何年かかるか見当もつきません。しかし、遠からぬ将来、復興の象徴というべきこのMOSを訪ねて三陸の地に降り立つ日が来ることを、私は心待ちにしています。あまりの安普請に失望する可能性がなきにしもあらずですが、それはまあそれとして…
コメント