日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

貸切バスで成婚ツアー 番外編(4)

2011-07-30 19:01:59 | 居酒屋
四軒目に突入です。チェーン居酒屋の真骨頂というべき三軒目に対して、こちらは手作り感にあふれた居心地のよさを感じる店です。これはあくまで相対関係であり、自身のこだわりに照らして注文をつけたい点は多々あるものの、今日に限って居酒屋は腹を満たす場所と心得て、主義主張は腹に収めます。
店一軒を埋め尽くすほどだった参列者も、河岸を変えるごとに三々五々散って行き、気づけば堅気の皆さんと我々とがほぼ同数になりました。それでも同じテーブルを囲もうという話に一切ならないのは、これまでの展開からすると当然の流れでしょう。これはとりもなおさず、我々がその場の空気からいかに浮いていたかということでもあります。それにもかかわらず、厚かましく四軒目まで同行してしまったのも、偏に自由で気楽な独り身ゆえのことです。
とはいえ、さすがに四軒目ともなると、この歳では体力気力が続きません。我々は適度なところでお開きとし、皆さんに一声かけて席を立ちます。最後まで狼藉をはたらいてしまいましたが、今日はこれで失礼します。またどこかでお会いしましょう…
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貸切バスで成婚ツアー 番外編(3)

2011-07-30 17:42:38 | 居酒屋
痛ましい姿を見かねたか、二軒目を出ようとしたところで新郎からのお呼びがかかり、三軒目は堅気の皆さんと合流することになりました。無論テーブルは別ですが、それはまあそれとして…
代官山の小洒落たレストランから打って変わって、こちらは絵に描いたようなチェーンの居酒屋で、タッチパネルを使った注文の仕方やアルバイト店員のマニュアル通りの接客など、どこまでも規格化されたそのシステムが単純明快です。当然ながら、品書きを眺めるだけで心躍るなどという場面はありません。カウンターや厨房の設え、働く人の立ち振る舞いなどを眺めて楽しむということも考えられません。形の上では居酒屋でも、自分が居酒屋に対して求めるものがこの店では一切省かれており、世の中にはこんな店もあったのかとむしろ驚かされます。
だからといって、この店を酷評するつもりはありません。雰囲気も出されるものも平均点とはいえ、勘定を一切気にすることなく、そこそこにおいしいものをつまみつつ、親しい人々同士で語らうことが目的なのだとすれば、この店も十分目的にかなっているのでしょう。「レストランは腹を満たす場所、居酒屋は心を満たす場所」とは先達の言葉ですが、それはあくまで高尚な趣味としての居酒屋に関することです。腹を満たすための居酒屋もあり得るのだということを、この店は今更ながらに教えてくれます。
思うに、独酌など一切考えられないという人々にとって、居酒屋とはあくまで腹を満たす場所であり、そこそこの酒と肴があって、楽しく語らう相手がいれば、それ以上のものは必要ないのでしょう。これは言い換えると、語らう相手がいなければ、そもそも居酒屋を選ぶ意味がなくなってしまうということでもあるのでしょう。逆に、心を満たす場所として居酒屋をとらえるならば、酒と肴はもちろんのこと、店内の設えや人々の立ち振る舞い、器の風合いや取り合わせの美しさ、さらには壁にかかった一枚の絵や、花瓶に挿された季節の花など、ありとあらゆるものが居酒屋の楽しみであり、それを心ゆくまで感じ取るには、同行者の存在がむしろ妨げになることもあります。居酒屋の楽しみを究めると独酌に行き着くというのは、ある意味必然の結果なのです。
たかが居酒屋でこんな小難しいことを考えてしまうのは、それだけ自分の感覚が世間から乖離しているということでもあるのでしょう。先日の麻布での一件といい、一般人との根本的な感覚の違いというものについて、大いに葛藤させられる今日この頃です。
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貸切バスで成婚ツアー 番外編(2)

2011-07-30 16:23:00 | 居酒屋
二次会が終わっても時刻は4時、ここでお開きという流れではありません。やさぐれ者同士で三次会へ移行します。とはいえ恵比寿は完全なる生活圏外、なおかつ吞み屋が開くにはまだ早い時刻ということもあり、何の心当たりもありません。目に付いたビヤホールへ飛び込みます。銀座のライオンなどとは比べようもない街角の小さな店とはいえ、琥珀ヱビスを筆頭に、スタウト黒ラベルに希少品種の白穂乃香まで揃ったラインナップが秀逸で、鴨居に並ぶ「赤星」ことサッポロラガーの空き瓶に、サッポロビールゆかりの土地柄が感じられます。高い丸椅子と細長いカウンターが並んだ設えは、長居にはやや不向きながら、本番に備えて下地を作るもよし、はしご酒の二番手以降で軽く飲み食いするもよしと、TPOを選べばそこそこ使える一軒といえそうです。

二代目恵比寿ビヤホール
渋谷区恵比寿西1-7-15 カトウビル1F
03-5457-3085
平日 1130AM-200AM
金曜 1130AM-400AM
土曜 1400PM-200AM
日祝 1400PM-2300PM
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貸切バスで成婚ツアー 番外編

2011-07-30 13:47:15 | 居酒屋
7月最後の土曜日は恵比寿へ繰り出すことになりました。先のバスツアーの主役であった仲間が、震災の影響で「自粛」に追い込まれた結婚式の二次会を催すということで、不肖私もお呼ばれにあずかったという次第です。
ホームパーティーのようなくつろげるひとときを過ごしたいという新郎新婦の希望から、こじんまりしたレストランを借り切って開かれたというこの宴ですが、そんな計らいも空しく、我々にとってはいたたまれなさを感じる点が二つありました。一つは、恵比寿から代官山にかけてという、我々にとっては最も似つかわしくない小洒落たロケーションに由来するものです。そしてもう一つは、集う面子の違いからくるものです。新郎を含む気心知れた活動仲間で繰り出したバスツアーと違い、今回は新郎新婦の公私にわたる様々な知己を集めた催しだけに、一言でいうなら「堅気」が多く、より直截にいえば我々の「やさぐれ感」がより際立ってしまうのですorz
会場では、新郎新婦の幼い頃から今日までのスライドショーが、思わずホロリとさせるミディアムテンポのナンバーとともに映し出され、馴れ初めの紹介に続いては「新郎新婦カルトクイズ」と題してのクイズ大会が催されて、盛り上がりも最高潮に達しています。そんな光景を横目に、三十路後半のやさぐれ者7名が、店外の喫煙スペースに雁首揃えてたむろする様は、ガラス越しの室内からはどう映ったのでしょうか。少なくとも、そこだけ澱んだ空気が漂っていたのは確かでしょう。子連れの参加者の方には、情操教育という点でも好ましくないものをお見せしてしまったのかもしれません。だからといってこの賑わいに加わろうという話が誰からも出てこないのは、堅気の皆さんとチームを組んでクイズなどに興じるよりも、気心知れた仲間同士でくだを巻く方が我々にとっては心地よいからでもあります。まさに堕落以外の何物でもなく、結果として新郎新婦の粋な計らいを無にするような狼藉をはたらいてしまったわけですが、そこは十数年の付き合いです。少なくとも新郎には、我々の屈折した心情というものを理解してもらえたのではないかと思っています。

ところで、自分は「一日一鉄」という四字熟語を新郎へのメッセージとして残しました。この言葉に込めた意味を最後に披露させていただきたいと思います。
「一日一善」を捩ったであろうこの言葉は、ある鉄道写真家が「毎日必ず一枚鉄道写真を撮影する」という触れ込みで公開している人気blogのタイトルでもあります。新郎新婦へのメッセージを主催者側から唐突に求められたとき、アドリブの苦手な自分がとっさに思いついたのがこの言葉で、これをそのままポラロイドに記してお渡ししました。「おめでとう」「幸福な家庭を」といった言葉が並ぶ中、この見慣れない四字熟語は、ポラロイドに写った仏頂面の男ともども奇異に映ったかもしれません。
バスツアーのときにも申したように、趣味と家庭は両立しないものであって、所帯を持った仲間とは、程度の差こそあれ自ずと疎遠になります。歌の文句がいうように、「自由と孤独はふたつでセット」なのですから、ある意味仕方のないことではあります。しかし、日々の暮らしの中に埋没するあまり、若かりし頃の情熱まで失ってもらいたくはないのです。これから始まる家庭人としての暮らしの中でも、我々と活動を共にした頃の好奇心や探求心を持ち続けてほしい、そんな思いをこの言葉に込めました。残った我々は相変わらずの馬鹿騒ぎを続けますので、思い出したら年に一度か二度でも顔を出してもらえば幸いです。どうぞ末永くお幸せに…
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