日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

夢が花咲く錦糸町(3)

2010-06-26 21:25:17 | 居酒屋
三軒目は聖地巡礼です。「東京三大煮込み」で知られる森下の山利喜を訪ねます。経路としては二軒目にあてがうのが順当だったのですが、魚三にも勝る行列必至の人気店だけに、時間帯を外さざるを得なかったというのが真相です。
さてその噂に名高い煮込みは牛もつの煮込みで、先人によって語り尽くされているように、ビーフシチューのようなやや洋風の深い味わいが特徴です。ただ、「三大煮込み」に列せられるほどかというと、少なくとも自分にとってはそうではありません。ありがちなもつ煮込みとは明確に一線を画したその味わいは、独創性という点ではたしかに特筆すべきものではあります。ただし、それが自分の口に合うかどうかは別の問題で、もつ煮よりすじ煮が好きな自分にとって、このためにわざわざ並ぶ必要性を感じないというのが率直なところです。
むしろこの店のよさとは、煮込みと串焼きを中心に、刺身、揚げ物、一品料理と、呑兵衛をくすぐる酒肴が揃うバランスのよさではないでしょうか。限定品の白穂乃香を始め数種が選べる生ビール、流行の銘柄を加えた地酒の品揃えなど、大衆酒場にしては酒の選択肢が豊富なところも魅力の一つです。加えて、カウンター越しに眺める板前のきびきびした立ち振る舞いにも好感がもてます。酒が選べて料理も豊富、どれを選んでも外れがないという点では、升本、みますやなど都内の名だたる老舗と同じものがこの店には感じられます。三軒目だけにあれこれ注文することもできませんが、それぞれ趣の異なる東京の名居酒屋を三軒もはしごできただけで今日は満足です。この調子で順次訪ねて行きたいと思います(ニヤリ)

山利喜
江東区森下2-18-8
03-3633-1638
1700PM-2200PM(LO)日祝日休

白穂乃香・磯自慢
お通し(ひじき)
煮込み玉子入り
ハモの湯引き
〆て2830円
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夢が花咲く錦糸町(2)

2010-06-26 19:10:04 | 居酒屋
二軒目は錦糸町の「井のなか」を訪ねます。一軒目の魚三酒場が長居無用の大衆酒場なら、こちらはうって変わってゆるやかな時間が流れ、酒と肴をしみじみ味わう銘酒居酒屋といった雰囲気です。コの字型のカウンターは同じでも、幾星霜を重ねた年季を感じる魚三のカウンターに対して、飴色の光沢を放つこの店の広々としたカウンターは全くの別物です。器が違えば中身も違うのは当然の理で、酒と肴も好対照。豊富な魚介で直球勝負、酒は二の次の魚三に対し、こちらは店主が集めた全国の銘酒が揃い、一手間二手間余計にかけた酒肴が並びます。それも広く知られた既成の銘酒というより、新進気鋭の小さな蔵元による注目銘柄中心に揃えるところに造詣の深さが感じられます。錦糸町にしてはやや高めの価格設定も、吟味された素材と手のかけようを考えると決して高くはないのでしょう。
頼んだ品が一分と待たずに運ばれる魚三と違い、ものによっては出されるまでにそれなりの時間を要します。その時間をちびちび呑んで過ごすもよし、品書を眺めて組み立てを考えるもよし、あるいはカウンターに並んだ蛙の調度品を観察するのも一興です。カウンターには白い花が生けられ、同じ白地の酒器とともにカウンターの色合いとの間で絶妙なコントラストをなしています。そんな店内の雰囲気とともに酒と肴をゆったり味わい、最後はおきまりのカレーで締めくくります。一口に居酒屋といっても様々で、それぞれによさがあるものです。そんな違いを感じ取るのが酒場探訪の楽しみの一つでもあります。

井のなか
墨田区錦糸2-5-2
03-3622-1715
1700PM-2300PM(LO)日祝日休

而今・秋鹿
お通し(じゃがいも)
飛龍頭の蓮根あんかけ
大山鶏のつくね利久焼き
鯖のへしこ
スパイシーチキンカレー
〆て4890円
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下町酒場deはしご酒

2010-06-26 17:55:12 | 居酒屋
旅のシーズンオフにやりたかったことの一つとして居酒屋めぐりがあります。居酒屋ならば旅先で何軒も訪ねてはいるのですが、都内の居酒屋には旅先の酒場とは違った愉しみがあるものです。旅先では、「その土地で呑む」という行為自体が一つの意味をなしていて、地の酒と地の食材、酒場に飛び交う地元の言葉といったものが一通り揃っていれば、ある程度は満足できるというのが現実です。博多の屋台などがまさにそうで、仮に同じものが都内にあったとしても、それほど感動はしないはずなのです。それにもかかわらず、ごくありふれた大衆酒場の酒と肴で満足できてしまうのは、「博多で呑む」「屋台で呑む」ということ自体が一つの愉しみとなっているからに他なりません。
それでは、これらの愉しみを持たない都会の酒場はつまらないのかというと、決してそうではありません。むしろ、店内の設え、料理人の包丁さばき、酒器と食器の風合いに盛り付けの彩りといった居酒屋の真髄を感じ取るという点では、都会の居酒屋こそふさわしいと自分は思います。毎週末が旅の空というこれまでのような状況では、地元へ戻ってさらに呑み歩くというわけにもいかず、こと一人酒に関してはお寒い状況でしたが、今年も居酒屋めぐりに好適な季節がやってきました。とはいえ漫然と過ごしていれば二ヶ月などあっという間です。短いオフシーズンを有効に活かしたいと思います(ニヤリ)

前置きが長くなりました。まずは昨秋以来の門前仲町へ繰り出します。一軒目は魚三酒場で肩慣らしです。四階建ての大店ながら、土曜は行列必至なのですから、いかにこの店の人気が高いかが分かるというものですが、通りがかったときには運良く一回転目がはけたところで、待ち時間なしで一階のカウンター席へ通されます。コの字型の長いカウンターが二つ並び、壁面が短冊の品書で埋め尽される様は絵に描いたような東京の大衆酒場で、これぞ居酒屋の真骨頂というべき光景を一軒目にして体感させられます。百をゆうに越す品書のほとんどは魚介で、刺身から煮物、焼き物、揚げ物と幅広く、300円台から高くとも600円台と手頃なばかりか、どれも山盛りで出されるのが秀逸です。
あまりの品数の多さについ目移りしがちですが、そうは問屋が卸しません。というのも、この店では時間の流れが異様に早いのです。着席するやいなや酒の注文を聞かれ、注文したものは一分と待たずに差し出されるといった具合で、ちびちび呑みつつ一通りの品書を眺めて組み立てを考えるという普段の流儀はこの店には合いません。着席と同時に升酒を頼み、あとはその場のひらめきで二品三品を注文、素早くいただいて素早く勘定を済ませて立ち去ります。

魚三酒場
江東区富岡1-5-4
03-3641-8071
1600PM-2200PM(日祝日休)

白鹿
シャコ天
生だこ
かつお刺
〆て1530円
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