日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

花見の旅 2010番外編(5)

2010-06-17 23:32:19 | 旅日記
都内では二日連続の真夏日となりました。これだけ暑いと、たとえ晴れても外に出る気が起こりません。こうなると旅の季節は名実ともに終了、初秋までしばしの休養に入ります。
さて、ダイジェストで振り返る花見の旅、最後は二週にわたる北海道への旅を振り返ります。

・北海道花見の旅(5/15-16)
東北の旅で完全燃焼し、その後のことは白紙の状態で帰ったつもりが、空路なら二万円台で北海道まで往復できることが分かったため、購入期限ぎりぎりで航空券を押さえて二週連続の北海道行きを敢行することになりました。ロードスターを駆って初日は日高から襟裳岬を通って道東へ足を伸ばすつもりが、前半の寄り道がたたって静内の二十間道路で日が暮れてしまい、道東は断念して札幌に宿泊。翌日は富良野を目指すも、やはり寄り道がたたって途中で時間切れとなってしまいました。とはいえ、長く厳しい冬に耐えた力強さを感じるエゾヤマザクラの花と枝振り、それらが広くて長い直線路に立ち並ぶ雄大な光景は、これが北海道の桜かと感服させられるものでした。五月の中旬になっても日中の気温が一桁だったり、山の麓に雪が残っていたり、昼から霧に覆われたりと、内地とは一桁違う北海道の自然のスケールを改めて実感した旅でもありました。そして何より、道内で何度も訪ねた思い入れの深い三笠の町で、地元の人々との行きずりの出会いに恵まれ、最後は幾春別という美しい響きの町で満開の桜に囲まれて終われたという点では、一ヶ月半にわたった長旅の中で最も美しい余韻を残す旅でした。これで終わればまさに有終の美だったわけですが、往生際の悪い自分に桜のような華麗で潔い引き際が演じられるはずもなく、翌週はついに道東へと向かうことになります。

・北海道花見の旅Part2(5/22-24)
前の週があまりに出来過ぎだっただけに、多少の未練を残して切り上げるという選択肢も考えはしたものの、結局最後の桜を追って道東へ旅立ちました。初日は日高から襟裳岬を回って道東へ抜けるという、前の週に断念したプランに再挑戦。凍えそうな冷たい風が吹き付ける襟裳岬で北海道の自然の偉大さを実感した後、訪れる人もない公園で月明かりを頼りに眺める夜桜は、内地の華やかな夜桜とは違う意味での印象深さがありました。夜間走行で距離を稼いでその日は釧路に宿泊となりましたが、先月以来奇跡的に持ちこたえてきた天候がここでついに崩れ、翌日は霧雨が降ったり止んだりの天候となり、出発以来初めて日の光を一度も見ずに終わってしまいました。遅咲きの桜も雨にたたられ、終わり行く桜の季節と相まってなおさら侘しげに映ります。とはいえ、前月から続く長い旅がついに終わるかと思うと感慨もひとしおで、同じ場所に足を止めては名残の桜をしみじみ鑑賞せずにはいられませんでした。花見の後は小雨そぼ降る釧路の街で一人静かに盃を傾け、一月半にわたる長い旅を振り返る夜となりました。
最終日も前日に引き続き小雨が降ったり止んだりの天候で、花見にはあいにくの一日になってしまいました。新千歳までまっすぐ行っても300kmの長距離移動だけに早め早めの行動を心がけたものの、心がけただけではどうにもならず、最後の最後も寄り道の癖が出てしまい、富良野まで足を延ばすつもりが北十勝であえなく時間切れとなりました。最終到達地点となった足寄の町は厚い雲に覆われ、葉桜になったエゾヤマザクラと辛うじて残ったオオヤマザクラが暮れ行く景色の中で侘しげに佇んでいました。長い長い花見の旅は、そんな淋しい光景の中で終わりを迎えたのでした。しかもこの時点で時刻は既に五時近く、残り三時間足らずで千歳まで200kmを走らなければならないという大バトルが最後に残ってしまい、余韻に浸る間もなく大移動へ突入することに。どうにか時間内にたどり着いた時には精も根も尽き果てて、旅の終わりの鑑賞に浸る余力もなく、前の週とは対照的な後味のよくない終わり方になってしまいました。しかし、最後の最後までやり尽くしたという点では何一つ悔いはなく、過ぎた今となってはそれを含めてよい経験です。
四月に信州へ旅立って以来、様々な土地で様々な光景に出会い、一月半という時間が何ヶ月にも感じられるほど長く感じる月日でしたが、過ぎてしまえば時は再び慌ただしく流れ出し、早一ヶ月近くの時が経ってしまいました。今なお鮮やかな印象を残すこの旅も、遅かれ早かれ思い出の部類に入ってしまうのでしょう。とはいえ、桜前線とともに日本列島を北上し、北海道の果てまで駆け抜けたこの旅は、終生忘れ得ぬ思い出として記憶されることになりそうです。

番外編もこれで完結かというとさにあらず。視点を変えてあと二、三回続けたいと思います。往生際の悪い人間です(苦笑)
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