水俣病の現在

2006年はチッソ付属病院から水俣保健所に「奇病」発見の公式通知から50年。水俣病公式確認から50年です。

保健手帳か水俣病認定申請か

2006年11月01日 | 水俣病
水俣病患者救済には、
①水俣病と審査会や裁判で水俣病患者と認定されたら、加害企業が救済する。
②医療手帳制度。患者認定を受けなくても、医療手帳の交付を受け、月2万円の年金、医療費タダとなる。1995年の一時期にのみ受け付け、現在は新規受け付けをしていない。
③軽症の水俣病患者は、医療費がタダになる保健手帳制度がある。月2万円の年金はない。04年関西水俣病訴訟で国側が敗訴したため、保健手帳制度が復活した。新保健手帳といわれる。メリットは少ない。

①の認定審査会は、環境庁52年基準と最高裁04年判決の2重基準になってしまい、休止中。
②も休止中。
③の医療費タダの保健手帳に申請する水俣病患者が増えてはいるが、申請にあたって、①の認定審査、あるいは認定訴訟を取り下げなくてはならず、患者にとっては苦しい選択である。
認定審査の申請を取り下げたり、裁判をやめなくてはならない、というのは、チッソの見舞金契約のようなもので、公序良俗に反し、無効とすべきルールであろう。
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新保健手帳交付 熊本、鹿児島、新潟3県で5878人、申請の取り下げ5%

熊本、鹿児島、新潟三県が2006年10月31日のまとめでは、国と熊本県の行政責任を認めた水俣病関西訴訟最高裁判決を受け、2005年11月に交付再開された新保健手帳の交付数は三県で計5878人に達した。
公害健康被害補償法に基づく、水俣病審査会の認定申請を取り下げて交付を受けた人数は、全体の約5%の312人である。認定申請者は10月30日までに、三県で計4597人に達し、新保健手帳が被害者救済に役だっていない実態を浮き彫りにした。
新保健手帳は1995年の政治決着に基づく総合対策医療事業のうち、症状の軽い患者に交付された保健手帳である。医療費の自己負担分を全額支給する。2005年11月から交付が再開された。
保健手帳の交付には認定申請や訴訟取り下げが条件である。これまでの交付申請審査数は三県で6469人、このうち水俣病認定取り下げは337人である。
熊本県の村田信一環境生活部長は「認定申請から新手帳に切り替える人が少なく、さらなる救済策が必要」と指摘している。
年金支給を含む医療手帳交付再開など、1995年の政治決着並みの救済策を盛り込んだ「第二の政治決着」実現を、引き続き国などへ働きかける考えである。
新保健手帳交付者の県別内訳は次の通り。
◆熊本県 4698人(うち認定申請取り下げ者235人)
◆鹿児島県 1099人(認定取り下げ73人)
◆新潟県 81人(認定取り下げ4人)

(熊本日日新聞2006年11月1日)

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水俣病の認定申請を取り下げたり、早期の認定を求める訴訟をやめたりして、保健手帳を申請したのが312人。
審査会や裁判で水俣病患者が一人でも増えると、加害企業チッソ(新潟では昭和電工)の経済負担が重くなる、というより、肩代わりしている環境庁の経済的負担が重くなる。2004年の最高裁判決が52年基準を否定しても、環境庁は認定患者を減らし、経済的負担を軽減したいのである。

*環境庁は環境省に名称変更したが、それを機に環境行政が患者から離れ、企業・行政側本意の環境行政に転換した、と批判されたが、その批判は正しい。



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