水俣病の現在

2006年はチッソ付属病院から水俣保健所に「奇病」発見の公式通知から50年。水俣病公式確認から50年です。

水道水中のアスベスト

2005年09月20日 | 水資源
アスベスト(石綿)が水道水から検出されることについて、国は「水道水は問題ない」との立場である。

1988年東京都調査による、都の水道水に含まれるアスベスト繊維数は、水1リットル中、2万本から12万本である。ただし、これは石綿セメント水道管を使った地域の水道水である。繊維の長さは最大10ミクロンであった。
浄水場の原水にはわずかな石綿繊維しか含まれていないが、水道水では石綿繊維が増加している。
水道水で濃度が高くなった理由は、水道管のうちの石綿管から剥離されたと推定される。検出された石綿は、毒性が低い白石綿であった。
旧厚生省も1988年に水道水を調査し、石綿繊維は1リットル中、最大37万本を検出した。しかし、調査個所は全国30地点だけであり、原水と水道水の比較はしていない。調査地域も明かしていない。

都・国の調査では、石綿管からの剥離については判断していない。しかし、昭和女子大の調査では「水道管の剥離用年限や、その通過距離に関係があり、主因は管内の剥離と考えられた」と指摘している。

石綿管は1960年頃に使用された。石綿の健康被害が社会的に問題となったことから、1985年に生産が中止され、新たな敷設はしていない。
1994年には、都内の石綿管延長は、上水道で約50km(水道管総延長の約1・9%)。
全国では、1987年、石綿管は7万7千km(18・2%)だった。その後、取り換えが進み、都内では2005年3月末で39km(0・2%)、全国では2003年で、約1万8千km(3・2%)に減少した。

政府は「飲んでも問題ない」としている。その根拠はWHO策定の飲料水水質ガイドラインや、米国環境保護局(EPA)の基準である。
WHOのガイドラインでは、飲料水中の石綿について「健康影響の観点からガイドライン値を定める必要はないと結論できる」としている。
EPAの基準は、動物実験による毒性データから、繊維の長さ10ミクロン以上で、1リットル中7百万本以下となっている。

日本政府は、こうした基準や、1988年の調査をも参考に、1992年の水道水基準の改正では、「石綿は呼吸器からの吸入に比べ、経口摂取に伴う毒性はきわめて小さく、水道水中の石綿の残存量は問題となるレベルにない」として、石綿の水質基準を設けなかった。

EPAの基準に比べれば、日本の水道水の石綿濃度はかなり低い。
アスベストの専門家は、「水道水中の石綿繊維は、国内では問題のある濃度は出ていないとされている。水道水や、石綿を含む食品を飲み込んで、その繊維が消化器系の臓器に突き刺さったという報告例も聞かない。高濃度のものを大量に飲み込み、長く体に滞留していれば影響があるかもしれないが、通常なら、飲み込んでも、体の外に出てしまうものの方が多いと思う」と、健康への影響はないと話す。

「静かな時限爆弾 アスベスト災害」などの著書がある東京女子大の広瀬弘忠教授は、こう分析する。
「都の調査では、水道水の石綿濃度はかなり低い。米国の1983年の調査推計では、平均的な米国人が年間に口から摂取する石綿繊維は、食物で24億本から14兆本、飲料で90万本から4千億本とされる。
日本では、日本政府の調査をもとに、仮に1リットル中約40万本の石綿繊維が含まれていて、1日に2リットルの水道水を飲むとしても、年間摂取量は約3億本であり、少ない。水道水は危険とは言えない」

 

発展途上国の水とトイレ

2005年09月13日 | Weblog
2005年8月24日、国連はインドの6億人をはじめ、世界で25億人が自分の家にまともなトイレがなく、公衆トイレも使えない状況にあると発表した。

インドの都市ムンバイでは、スラムに住む多くの人々が毎朝近くの線路を公衆トイレとして使用している。ラッシュアワーになると電車は5~10分おきに轟音を響かせて通過するので、スラム住人は電車の運行に合わせて用を足すことになる。

水と衛生は切り離せない問題である。しかし、トイレつまり衛生の問題はあとまわしになる。
水は生命にかかわり、衛生は人間の尊厳にかかわる問題である。国家が、衛生や清潔を軽視し、衛生問題を政治的最優先課題としなくてはならない。

WHOと国連児童基金(ユニセフ)調査では、アフリカの一般的な村では、トイレを使用している人は4割に満たない。こうした村では5歳以下の子供が住人の4分の3を占め、毎日のように下痢や汚水が原因の病気にかかっている。国連2機関の推定では、世界では毎年200万人以上の子供が下痢や衛生状態の悪さが原因で死亡している。

中国とインドでは、12億人が衛生的には問題の多い環境で生活しているが、インドと中国は数の上では最大だが、両国とも積極的に具体策を打ち出し、衛生状態を改善するために努力している。アフリカが問題である。

2002年にヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)では、国際社会は基本的な衛生施設を利用できない人々の割合を2015年までに半減することに合意した。この目標を達成するには、期限までに13億の人々に衛生施設が提供されなければならない。

バングラデシュでは水と衛生の問題が、他の発展途上国と大きく異なる。バングラデシュでは、数百万人の人々が水不足や水のヒ素汚染に脅かされている。しかし、政府の目標では、水より衛生問題(トイレ)の問題が重視されているのである。
バングラデシュの農村部1000か所には、国連支援でつくられた国営トイレ製造センターがある。しかし、政府と国連の多額の投資にもかかわらず、トイレはなかなか普及しなかった。
その状況を打開するため、政府が安価な製品を売るのではなく、民間のトイレ製造業の市場を作り上げることに方針転換した。トイレは劇的に普及した。
バングラデシュのトイレの普及は25%から50%へと上がり、民間部門にたくさんの新しい仕事を創出した。
現在、6000の小規模な民間企業により、毎年12億のトイレが生産されている。バングラデシュ政府は2010年までに全国の衛生施設を完備させる目標を掲げている。

埼玉県の地下放水路

2005年09月10日 | 水資源
正式名称は首都圏外郭放水路である。埼玉県庄和町から春日部市にかけての低地は、古利根川、中川、倉松川、江戸川が並行して流れるが、もともと洪水の起こりやすい低地であった。東京近郊のため、最近は宅地化が進んで水田が減り、さらに洪水が起こりやすい状況になった。

古利根川、中川、倉松川の洪水を、水田・宅地に流さずに、地下トンネルに誘導して、一番水位が低くて洪水の少ない江戸川に誘導排水する。そうすると、地上の洪水被害は、これまでよりも軽減される計画である。

古利根川、倉松川、中川、江戸川をつなぐ地下トンネルは地下60mにつくられ、トンネルの直径10m、トンネルの長さ6300mである。トンネルに誘導された洪水を、江戸川にジェットエンジンポンプで汲み出すが、排水ポンプの能力は、各河川から最大200トン/秒を想定している。
実際のこれまでの最大流量は中川から25トン/秒、倉松川から100トン/秒、古利根川から85/トンである。

首都圏に郊外からの洪水が及ばないように、首都圏の外郭で洪水を減らす計画である。なお首都圏内には、埼玉県の外郭放水路とは別に、中小河川の洪水を防ぐための地下放水路が建設されている。