水俣病の現在

2006年はチッソ付属病院から水俣保健所に「奇病」発見の公式通知から50年。水俣病公式確認から50年です。

盤若谷と揖斐川。

2005年11月29日 | 水資源
盤若谷(はんにゃたに)
白黒写真(1954年撮影)のハシゴのような河川は、岐阜・三重県境を流れる盤若谷である。養老山地山麓と濃尾平野の傾斜地に扇状地をつくっている。
「盤若川」ではなく「盤若谷」と言うのは、ふだん、水が表面を流れないからである。流水のほとんどが地下水となり、扇端の揖斐川中で湧き出る。
写真の手前は、右から左に流れる揖斐川である。盤若谷は扇状地をつくり、扇端の湧水は揖斐川の中に流れ込んでいる。
まっすぐに石段のようになっている部分が、盤若谷の人工的流路である。その周辺斜面が、盤若谷扇状地の扇央部分である。
人工的直線流路が建設される前、盤若谷は扇央では伏流し、水は地表面を流れないが、しかし、大雨の時には流路を変えながら扇央一体に洪水を起こす危険な川であった。盤若谷の洪水で運ばれる砂礫が揖斐川の川底を上げて、濃尾平野に洪水を起こす危険があった。
江戸時代から何度も改修を続け、明治24年に来日した治水専門家デレーケ(オランダ)が、石積みの堰をつくった。これが現在の直線階段状の流路である。
一般に扇状地では扇端で湧き水が見られ、扇端集落が立地する。しかし、盤若谷扇状地には扇端集落がない。扇端の湧水地帯は、揖斐川の川底にあるためである。
揖斐川に沿う小集落は、湧水地帯に立地した扇端集落ではない。揖斐川に沿う街道筋にできた街村である。




現在の盤若谷
盤若谷にデレーケが築いた石積みの堰は、現在も残っている。ふだんは生活排水がわずかに流れ込んでいるだけである。年1、2回の大雨の時には地表面を水が流れるが、堰によって流速がおさえられ、下流への砂礫運搬が減る。盤若谷流域の洪水の危険性が少なくなったし、揖斐川への砂礫の流出を防ぐことができた。
高さ1mの堰が階段のように何段も並び、盤若谷の流速を減らしている。もし、左右岸の堤防が破れても大きな被害にはならない。流速が低下し、養老山脈からの巨岩が流れることがなくなったからである。盤若谷が、下流域に大被害をもたらす水害がなくなった。
盤若谷の最下部は、ドレーケの改修事業以前に、洪水が砂礫を堆積したため、天井川になった。近鉄養老線のトンネルの上を、盤若谷が流れている。


盤若谷の扇頂



盤若谷の扇央


盤若谷の扇端(天井川)
盤若谷の扇端は揖斐川につながる。そこを近鉄養老線が通る。扇端は砂礫の堆積と堤防建設のため、天井川になっていて、周囲より高い。大雨になると、トンネルの上を、左から右に、盤若谷を洪水が流れ、揖斐川に合流する。




アマゾン川が「断流」。

2005年11月04日 | 水資源
ブラジル内陸のアクレ州とアマゾナス州では、2005年7月から干ばつが続いて、アマゾン川を流れる水がなくなった。淡水魚の多くは死んでしまった。多くの集落はアマゾン川の舟輸送に頼っているが、その輸送手段が断たれて20万人が孤立し、ヘリコプターによる物資輸送が続いている。

北大西洋の海面水温が上昇したため、熱帯にスコールをもたらす熱帯収束帯(ITCZ)が北に片寄ったことが原因と考えられる。これまでよりも熱赤道が北にかたよったため、大型ハリケーンのカトリーナやウィルマがアメリカ合衆国に大きな被害を与えた。今年一年限りの現象ではなく、今後も頻繁に起こる可能性がある。



アマゾンの干ばつの直接原因がITCZの北上であったにしても、その根本原因がアマゾンの大規模な森林破壊にあると考えられる。
熱帯雨林が、アマゾンに十分な湿度と降雨量をもたらしてきた。しかし、熱帯雨林が失われると降水量も減り、さらに熱帯雨林が減る。この悪循環は30%の森林破壊によって始まると考えられている。アマゾンに干ばつをもたらすエルニーニョ、森林火災、気候変動もあり、現在のペースで森林破壊が進むことは危険である。

ただし、アマゾン川の渇水はこれまでもしばしばくりかえされ、驚くほどの異常気象ではない、とする楽観論もある。これまでは干ばつ被害者の声がブラジル政府まで届かなかったから、干ばつがくりかえされたことを知らなかっただけ、という見方もある。

水は経済資源ではなく、公共財である。

2005年10月03日 | 水資源
発展途上国は、飲料水を法律上の経済資源ではなく、社会資源と定めなくてはならない。このままでは先進国多国籍企業が、発展途上国の飲料水と水道事業を支配してしまう恐れがある。
フランスのミッテラン元大統領の未亡人ダニエル・ミッテランは「公益財」としての水の概念を広め、水道会社の民営化と水の商品化・商業化に反対した。ラテンアメリカで、水事業の民営化をやめるように説いてまわった。

ブラジルでは、政府がすべての水管理の民営化を阻止すると公約するした。さらに水の「社会的管理」ができるよう、ブラジルとフランスの公営企業は連携することとなった。

ボリビアの首都ラパス近郊には、労働者階級の都市エルアルトがある。社会運動によって、市民団体は2005年1月ボリビア政府とフランスの水道会社Suez-Lyonnaise des Eauxとの契約取り消しに成功した。先住民を中心とする人口80万都市エルアルトの社会運動は、Siez社の契約違反と不当に高い料金を告発した。同社はまた、水処理工場建設に8億ドルの投資計画があったが約束を守らなかった。また、チチカカ湖に廃水を放出した。さらには多くの市民に飲料水を供給せずに放置した。
ボリビアはもっとも貧窮した国のひとつでありながら、強力な先住民層を背景に社会運動がもっとも盛んな国でもある。連帯感が強く、水は公益のために使うという概念が定着している。

この数年で、地球上の清潔な水の大半が、多国籍企業の支配下となった。さらに多くの政府が、上下水道の民営化を進める中、数年後には世界の水消費量のおよそ75%が一握りの多国籍企業が管理支配することになるだろう。
その中心となっているのがフランスのVivendi-Generale des EauxとSuez-Lyonnaisedes Eauxの2社である。世界市場の40%を支配し、世界100か国以上約1億1,100万人にサービスを提供している。Suez社は2004年、純利益24.2億ドルを計上、対前年比2.8%増を記録した。

水道事業の民営化を進めると、公共サービスが向上すると説明される。しかし、現実には、民間企業は、清潔な水を供給せずに、料金を引き上げるばかりである。汚職で都市、ひいては国全体が深刻な水危機に陥っている。

世界の人口の4分の1は清潔な水を入手することすらできず、年間少なくとも3万4,000人の命が奪われている。国連は、抜本的対策を講じない限り、今後20年のうちに18億もの人が深刻な水不足を抱える国や地域に暮らすことになるだろうと警告している。

ミッテラン夫人は、Suez社がアルゼンチン企業Aguas Argentinasからの撤退を決めた直後にブエノスアイレスを訪問した。同社は1990年代に民営化され、現在大ブエノスアイレス圏の住民1,000万人に水供給サービスを提供している。
Suez社の撤退決定は、2001年のアルゼンチンの経済危機で凍結されていた水道料金の引き上げをキルチネル政権が反対したことによるものである。ブエノスアイレスでミッテラン夫人は、Suez社はアルゼンチン政府との契約を遵守しなかったとの考えを述べ、公共事業は国が提供するものであり、半官半民あるいは民間のシステムでは機能しないと主張した。

ウルグアイでは2004年の国民投票で、有権者の65%が、「水は生命にとって不可欠な天然資源であり、上下水道の整備は基本的人権である」とする憲法改正案に賛成票を投じた。
ウルグアイ憲法は、水を公共財として定義した。国の水資源管理に市民の参加を保証するよう改正された。加えて、「水供給は国営法人が独占的に直接担う」ものとし、民間企業に事業権を付与するコンセッション方式は撤回されるとの新たな条項も設けられた。

しかし、ウルグアイ南東のマルドナド県では既にスペイン企業UraguaとAguas de la Costaと政府が水道委託事業の契約が結ばれていた。2004年就任したバスケス大統領は、スペイン民間企業にマルドナド県での事業を認める法令を出した。
だが、最終的には、ウルグアイ政府は、契約違反と下水設備投資の約束不履行を理由に、スペイン企業との契約を破棄した。


水道水中のアスベスト

2005年09月20日 | 水資源
アスベスト(石綿)が水道水から検出されることについて、国は「水道水は問題ない」との立場である。

1988年東京都調査による、都の水道水に含まれるアスベスト繊維数は、水1リットル中、2万本から12万本である。ただし、これは石綿セメント水道管を使った地域の水道水である。繊維の長さは最大10ミクロンであった。
浄水場の原水にはわずかな石綿繊維しか含まれていないが、水道水では石綿繊維が増加している。
水道水で濃度が高くなった理由は、水道管のうちの石綿管から剥離されたと推定される。検出された石綿は、毒性が低い白石綿であった。
旧厚生省も1988年に水道水を調査し、石綿繊維は1リットル中、最大37万本を検出した。しかし、調査個所は全国30地点だけであり、原水と水道水の比較はしていない。調査地域も明かしていない。

都・国の調査では、石綿管からの剥離については判断していない。しかし、昭和女子大の調査では「水道管の剥離用年限や、その通過距離に関係があり、主因は管内の剥離と考えられた」と指摘している。

石綿管は1960年頃に使用された。石綿の健康被害が社会的に問題となったことから、1985年に生産が中止され、新たな敷設はしていない。
1994年には、都内の石綿管延長は、上水道で約50km(水道管総延長の約1・9%)。
全国では、1987年、石綿管は7万7千km(18・2%)だった。その後、取り換えが進み、都内では2005年3月末で39km(0・2%)、全国では2003年で、約1万8千km(3・2%)に減少した。

政府は「飲んでも問題ない」としている。その根拠はWHO策定の飲料水水質ガイドラインや、米国環境保護局(EPA)の基準である。
WHOのガイドラインでは、飲料水中の石綿について「健康影響の観点からガイドライン値を定める必要はないと結論できる」としている。
EPAの基準は、動物実験による毒性データから、繊維の長さ10ミクロン以上で、1リットル中7百万本以下となっている。

日本政府は、こうした基準や、1988年の調査をも参考に、1992年の水道水基準の改正では、「石綿は呼吸器からの吸入に比べ、経口摂取に伴う毒性はきわめて小さく、水道水中の石綿の残存量は問題となるレベルにない」として、石綿の水質基準を設けなかった。

EPAの基準に比べれば、日本の水道水の石綿濃度はかなり低い。
アスベストの専門家は、「水道水中の石綿繊維は、国内では問題のある濃度は出ていないとされている。水道水や、石綿を含む食品を飲み込んで、その繊維が消化器系の臓器に突き刺さったという報告例も聞かない。高濃度のものを大量に飲み込み、長く体に滞留していれば影響があるかもしれないが、通常なら、飲み込んでも、体の外に出てしまうものの方が多いと思う」と、健康への影響はないと話す。

「静かな時限爆弾 アスベスト災害」などの著書がある東京女子大の広瀬弘忠教授は、こう分析する。
「都の調査では、水道水の石綿濃度はかなり低い。米国の1983年の調査推計では、平均的な米国人が年間に口から摂取する石綿繊維は、食物で24億本から14兆本、飲料で90万本から4千億本とされる。
日本では、日本政府の調査をもとに、仮に1リットル中約40万本の石綿繊維が含まれていて、1日に2リットルの水道水を飲むとしても、年間摂取量は約3億本であり、少ない。水道水は危険とは言えない」

 

埼玉県の地下放水路

2005年09月10日 | 水資源
正式名称は首都圏外郭放水路である。埼玉県庄和町から春日部市にかけての低地は、古利根川、中川、倉松川、江戸川が並行して流れるが、もともと洪水の起こりやすい低地であった。東京近郊のため、最近は宅地化が進んで水田が減り、さらに洪水が起こりやすい状況になった。

古利根川、中川、倉松川の洪水を、水田・宅地に流さずに、地下トンネルに誘導して、一番水位が低くて洪水の少ない江戸川に誘導排水する。そうすると、地上の洪水被害は、これまでよりも軽減される計画である。

古利根川、倉松川、中川、江戸川をつなぐ地下トンネルは地下60mにつくられ、トンネルの直径10m、トンネルの長さ6300mである。トンネルに誘導された洪水を、江戸川にジェットエンジンポンプで汲み出すが、排水ポンプの能力は、各河川から最大200トン/秒を想定している。
実際のこれまでの最大流量は中川から25トン/秒、倉松川から100トン/秒、古利根川から85/トンである。

首都圏に郊外からの洪水が及ばないように、首都圏の外郭で洪水を減らす計画である。なお首都圏内には、埼玉県の外郭放水路とは別に、中小河川の洪水を防ぐための地下放水路が建設されている。


水道事業民営化

2005年08月28日 | 水資源
フィリピンのマニラ首都圏では、1997年に水道事業が民営化された。フランスの水道事業多国籍企業オンディオ社に委託された。世界銀行が水道事業への融資条件として民営化を条件としていたからである。
民営化すれば、フィリピン政府は財政支出をせずに水道の普及をはかることができ、また、水道の利用者が増加すればオンディオ社の収入が増えた。世界銀行への債務支払いには水道料金の増収分をあてる予定であった。さらに、下水道建設資金にもあてることができる計算であった。

オンディオ社の水道事業拡張計画は最初からつまづいた。スラム街に網の目のように水道管を引くコストが高かった。水道管を引いても、誰が水を買ったのかが不明であった。勝手に水道管を掘り起こして水を引く者、蛇口からホースで水を引く者も多かった。水道管がのび、水の供給量が増えても、水道料金の増収にはならなかった。水道料金メーターをつけない貧民層は料金が定額であったが、ここから多くの貧民が水を引いた。
オンディオ社の水道料金徴収率は44%から32%に下がった。水道水をただで入手できる方法を、マニラ市民は次々と考え出したのであった。

オンディオ社は水道事業立て直しのために、5000人の水道局職員を半分に減らした。民営化開始時の約束を破り、オンディオ社は、水道料金を4倍に引き上げた。しかし、これで水道料金の不払い者がさらに増加した。

オンディオ社の水道料金の4倍の値上げは、民営化の約束を破ったことになった。水道料金の不払いが増え、オンディオ社の増収にはならなかった。そのため、オンディオ社はマニラの水道事業から撤退することを決めた。民営化の結果として、マニラでは水道料金の値上げだけが残った。


先進国の多国籍企業が発展途上国の水道事業を支配することについては、次を参照。
http://blog.goo.ne.jp/morinoizumi20/e/ae067a9e3fbdc651bfc565efe8fe69b0

インドは水不足が深刻

2005年08月15日 | 水資源
20世紀末から、インドは緑の革命の進展により、人口増加を上回る食料増産ができ、食料不足の問題は解決した、といわれた。コンピューター産業の発展もあり、インドの経済・社会は明るい方向に向かっているのは間違いないが、干ばつ被害が短期的にインド経済を狂わせる恐れがある。

グジャラート、マディヤプラデシュ、ラージャスターン、アンドラプラデシュ、オリッサ州では、2005年、南西モンスーンが弱く、干ばつ被害が深刻である。小麦、米、トウモロコシ、大豆などの生産量は大幅に落ち込んでいる。最も生産が落ち込んだのは、家畜用飼料としての大豆・とうもろこしである。

インド政府は、備蓄食料(小麦)を放出したり、海外からは飼料(大豆。とうもろこし)の輸入を増やしたりし、急場をしのいでいる。
歴史的には、干ばつになると一般民衆が暴動を起こし、地主・食料流通業者が襲撃され、社会・政治は混乱に陥ったものである。
現在では、干ばつなどの災害時でも食料を国内に円滑に供給する分配システムができていて、社会不安に陥る恐れは少ない。

家畜用飼料の生産低下により、2,000頭の牛が死亡した。干ばつの被害が最も大きい州では、さらに状況が悪化するものと予想される。
グジャラート州の主要作物は落花生であるが、今年は50%減少し、食用穀物(小麦)の生産量は、30%減少すると予想されている。
ラージャスターン州の雨量は昨年の20%減で、水不足が深刻である。小麦の生産量も23%の減少見込みである。
グジャラート州で、干ばつのために乳牛への飼料が不足した。牛乳生産量が、昨年の同時期に比べて3~4%減少した。今後はさらに落ち込むと思われる。

インド政府の備蓄穀物は3,000万トンあり、暴動や社会不安に発展することはない。従来、国内で食料不足などの問題が起こると、パキスタンとの国境紛争(カシミール問題)を起こして、食料不足の問題を中途半端な外交問題にすり替えて終わらせたものであった。現在は、豊富な備蓄穀物があり、国内問題を国外問題にすり替えてしまうことはない、と考えられる。

http://www.d4.dion.ne.jp/~aoisora/

石狩川は100km短縮

2005年07月12日 | 水資源
北海道の石狩川は屈曲が多く、洪水がその部分にとどまっていた。空知川や徳富川の洪水が石狩川に流れ込むと、屈曲部分の洪水が長期化する。
屈曲部分を直線流路にして、河口に早く流すと、洪水被害は小さくなる。この流路直線工事が捷水路工事である。
捷水路工事によって河川は短く、急勾配になる。石狩川は1899年の工事以来、最初の状態と比較すると100km短くなった。支流の合流点を下流に引き下げたり、逆流を防ぐ水門を建設したりしなければならず、工事費用は巨額になる。
水害対策として、洪水の起こる地域をあらかじめ決めておき、そこに住居はつくらない。農地はあるが、洪水被害を受けたら金銭補償をする契約がある。水没予定地域には、水田や畑地の農地はあるが、元の石狩川河道の三日月湖があったり、泥炭地が残っていたりする。砂川遊水池といわれる。

北海道は、建設省や北海道庁による巨大工事は少ない。北海道開発庁による日本政府直轄の事業である。本州の資本が、本州に利益を持ち帰る。北海道に利益が還元されない植民地型経済として、石狩川の捷水路工事が進められた。

待てば必ず雨は降る

2005年07月03日 | 水資源
今年は空梅雨か、と言われていたのに、西日本は一転大雨である。梅雨前線が西日本を横切り、その上を低気圧が移動する。西日本大雨型の気圧配置である。
太陽からのエネルギー入射量と地球の海洋面積が変わらない限り、地球の総降水量は変わらない。晴天が長く続けば、その後の降水量は強く激しいのは当然である。少しの変動で騒ぎ立てる方が間違いである。
梅雨は西日本は熱帯スコール型の激しい降雨が特徴的である。インド洋からのモンスーンが大量の水蒸気を運んで降らせる雨である。集中豪雨のために山崩れや洪水の被害が大きくなる。いくらダムをこしらえても、梅雨と台風の被害を完全に防ぐのは困難である。被害が軽減し、復旧が楽になったと自己満足する以外にない。
東日本の梅雨は、シトシトと降る。かさの要らない霧雨である。東北地方の太平洋岸には、冷たい北東風やませが吹いて、夏が来ないまま、秋になることがある。農家は、毎年、冷害の心配をしている。

早明浦ダムはカラ

2005年07月01日 | 水資源
高知県土佐郡、高知県のど真ん中に早明浦ダム(さめうらだむ)が1973年にできた。工事主体は水資源公団である。吉野川上流に建設された多目的ダムである。
今年(2005年)は降水量が異常に少なく、早明浦ダムはカラになってしまいそうである。それでも水利権既得権益として徳島県の農業用水、香川県のため池への供給を続けてきた。
少雨傾向にあるのならば、農業用水の取水制限をすべきであったが、水利権問題を先延ばしにしてダムを建設したため、農業用水には例年どおりの供給を続けたのである。その結果、高知県・香川県・徳島県の飲用水が足りなくなる事態に陥った。
早明浦ダムができて間もない1975年と1976年、ダムの貯水量を多めにしていたところに台風が襲来、あわててダムから放流したために下流域で洪水を起こした。早明浦ダムの放流操作の失敗体験があり、早明浦ダムの貯水量は常時少なめになっている。多目的ダムといいながら、治水と利水の両立は難しいようである。

猊鼻渓

2005年06月25日 | 水資源
岩手県に砂鉄川という北上川の支流がある。農業用水の取水堰があり、そこの水たまりに舟を浮かべて、両岸の石灰岩断崖絶壁を有料で見せている。100年前の地元漢学者佐藤猊厳の発案である。
近くに厳美渓という景勝地がある。磐井川の奔流と奇岩で有名だが、舟は無理である。厳美渓(げんびけい)によく似た名前で、しかも佐藤猊厳の1文字入れて猊鼻渓(げいびけい)と名付けた。舟から見る白い断崖絶壁、そこに咲く藤やつつじ、紅葉がきれいである。農業用水を利用して、これだけの観光客を集めるアイデアがすぐれていた。佐藤猊厳には漢学者らしからぬ商才があった。

沼沢湖揚水式発電所

2005年06月19日 | 水資源
沼沢湖(沼沢沼)は福島県金山町にあり、只見川の河岸段丘上にできたカルデラ湖である。火山活動期は6千年前である。面積3.1平方km、水深 96mである。観光政策上、沼沢沼を沼沢湖と改めた。
水力発電用の水利権は水面から水深15mまでである。発電所との落差215mを利用する水力発電所である。
沼沢湖は集水面積(流域面積)が狭い。水力発電で湖の水位が低下すると、流入河川がないため、なかなか水位が回復しない。そこで、沼沢沼発電所は1950年に揚水式発電所として着工された。日本初の揚水式発電所として1952年に完成した。出力43,750kwの中規模発電所である。
沼沢湖の湖底から発電所まで地下水路が建設され、この地下水路を落下するエネルギーで発電する。使った水は宮下調整池(只見川のダム)で貯水される。深夜の余った電力で、宮下調整池の水を沼沢湖に戻すシステムである。発電水のリサイクルである。
火力発電所や原子力発電所は発電量の調整が難しい。夜間・休日には大量の電力が余る。この余剰電力を使って下池(宮下ダム)から上池(沼沢湖)に水を汲み戻すのである。
揚水式発電所は、発電で使った水を、深夜の余剰電力で回収するリサイクル型の発電所である。
沼沢湖の水力発電能力を10倍以上の46万kwに高めるため、1976年から第二沼沢発電所と導水路トンネルの建設が始まって、1981年に完成した。
第二沼沢沼発電所は、沼沢沼発電所同様、上池として沼沢湖、下池として宮下調整池(ダム)を使う揚水式発電所である。1976年計画時は日本最大の発電能力を備えた揚水式発電所であった。
通常の発電時間は東北電力の消費量が最大になる9~12時、13~16時である。

オガララ地下水層

2005年06月18日 | 水資源
アメリカ合衆国のロッキー山脈東部の草原プレーリーには、地下水が50万k㎡、4兆トン存在する。アメリカ穀倉地帯の灌漑用水源であり、オガララ帯水層といわれる。世界最大の地下水層である。
豊富な地下水は強力なディーゼルポンプで地下100~1000mから汲み上げられ、小麦・とうもろこし栽培に利用される。地下水に液体肥料・農薬を入れ、半径400mの回転スプリンクラーで散布される。この大規模灌漑農業がセンターピボット農法で、最もアメリカ的な商業的機械化農業とされ、世界の乾燥地域の灌漑農業のモデルになった。
しかし、オガララ帯水層の水量は有限であり、使用量の増加とともに地下水の枯渇が始まり、水位低下が深刻な問題になった。5000万年かかって貯えられた地下水(オガララ帯水層)が、最近50年間のセンターピボット農法で半減し、あと50年で枯渇する。
センターピボット農法を導入した農家は、地下水が枯渇するとともに井戸を深くし、少ない水を効率的に使わなければならない。生産コストの上昇と土壌の塩害が進み、経営が悪化している。降水と地下水の循環を無視した商業的農業は、限界に近づいている。

川辺川ダム問題

2005年06月11日 | 水資源
四万十川とともに、日本最後の清流といわれる熊本県川辺川にダム建設が進められている。これについて、建設省(国土交通省)は治水・農業用水・発電の多目的ダムが必要としている。
しかし、治水問題としては、球磨川合流点の人吉と、球磨川河口の八代で改修が進んで、洪水の心配は少なくなった。
農家はこれまで水が間に合っていたから、今さら川辺川からの農業用水は不要、と裁判を起こした。
発電は新たなダム建設で水没する発電所の発電量を補うに過ぎない。
川辺川ダムの目的は失われた。豊かな自然環境と、天然鮎の漁場が失われ、漁民の生活の場を奪うことにもなる。清流川辺川を守らなくてはならない。

栗駒山の水

2005年06月10日 | 水資源
自然にめぐまれた環境の中、DHC栗駒工場(栗原市栗駒)では、DHCならではの厳しい品質基準と徹底した安全管理のもと、汲み上げからボトリングまでの一貫生産をおこなっています。
DHC栗駒深層水は、ほどよいミネラルを含んだ硬度28mg/Lの軟水で、人間の体液や血液に近く体内への吸収率が高いpH8.0の弱アルカリ性。体に優しく、やわらかい味わいが特徴のナチュラルミネラルウォーターです。
豊かな山々と森の息吹に育まれ、長い年月をかけて地中深くに浸透した原水を汲み上げ、スピーディーに生産ラインへ送り込みます。
そして、5段階のミクロフィルターで0.2ミクロンにまでろ過した後に、徹底した無菌設備を備えた常温のクリーンルームの中で直ちにボトリング。非加熱無菌充填で、お客様に安心してお飲みいただける品質です。

以上、DHCの宣伝から。
栗駒町でしばらく暮らした者として、栗駒山のミネラルウォーターがそんなに健康によいとは知らなかったが、一体、誰がこんなことを調べ、DHCに売り込んだのだろうか。