水俣病の現在

2006年はチッソ付属病院から水俣保健所に「奇病」発見の公式通知から50年。水俣病公式確認から50年です。

ハリケーン、ニューオリンズを襲撃

2005年08月31日 | Weblog
2005年8月30日、大型ハリケーン「カトリーナ」はミシシッピ河口を襲った。ルイジアナ州・ミシシッピ州を中心に被害が拡大し、死者は100人を超えた。過去最大のハリケーン「アンドルー」(1992年)を上回る被害である。
カトリーナは先週フロリダ州を通過し、8月29日にルイジアナ州に再上陸した。ルイジアナ州と隣接するミシシッピ州に大規模な浸水被害をもたらした。

30人以上の死者が出たミシシッピ州ビロクシーの市長は、昨年12月のインド洋津波を念頭に「これは我々にとっての津波だ」と述べた。同市の当局者によると、最終的な死者数は「数百人」に達する恐れもあるという。

ルイジアナ州ニューオーリンズでは8月30日、堤防の一部が決壊し、浸水地域は市内の80%に広がった。一部地域では宝石店や衣料店への略奪行為が相次ぎ、制止しようとした警察官が銃撃される事件も起きた。
救助チームは各州でヘリコプターなどを使って、孤立した被災者の救出に全力をあげており、犠牲者の遺体の収容には今のところ手が回らない。

損害保険の支払総額は200億ドル(約2兆円)に達する見通しである。13年前のアンドルーの210億ドル(約2兆3000億円)を上回る恐れもある。

ミシシッピ州では、かつて綿花のプランテーションで黒人が働いていた頃、黒人を避難させずに人的被害を出し、大きな問題を起こしたことがある。現在は、人種・民族に差別なく、避難救助は適切に行われた。

ミシシッピ河口は鳥趾状三角州で、低地は海面下で海水が逆流する。ニューオリンズ旧市街地は海面よりわずかに高い自然堤防上にあり、浸水被害は軽微である。新しい住宅池はラグーンを埋めた低地につくられ、堤防が破れると大きな被害を受ける。
ミシシッピ河口低地は大型のハリケーンによる被害だけではなく、ミシシッピ上流域の農地拡大、森林伐採のため、ふだんから洪水の危険がある。
日本の沖積平野の大都市(東京、大阪、名古屋)も、ニューオリンズと同じ地形であり、他山の石としなくてはならない。

(二宮尊徳)

水道事業民営化

2005年08月28日 | 水資源
フィリピンのマニラ首都圏では、1997年に水道事業が民営化された。フランスの水道事業多国籍企業オンディオ社に委託された。世界銀行が水道事業への融資条件として民営化を条件としていたからである。
民営化すれば、フィリピン政府は財政支出をせずに水道の普及をはかることができ、また、水道の利用者が増加すればオンディオ社の収入が増えた。世界銀行への債務支払いには水道料金の増収分をあてる予定であった。さらに、下水道建設資金にもあてることができる計算であった。

オンディオ社の水道事業拡張計画は最初からつまづいた。スラム街に網の目のように水道管を引くコストが高かった。水道管を引いても、誰が水を買ったのかが不明であった。勝手に水道管を掘り起こして水を引く者、蛇口からホースで水を引く者も多かった。水道管がのび、水の供給量が増えても、水道料金の増収にはならなかった。水道料金メーターをつけない貧民層は料金が定額であったが、ここから多くの貧民が水を引いた。
オンディオ社の水道料金徴収率は44%から32%に下がった。水道水をただで入手できる方法を、マニラ市民は次々と考え出したのであった。

オンディオ社は水道事業立て直しのために、5000人の水道局職員を半分に減らした。民営化開始時の約束を破り、オンディオ社は、水道料金を4倍に引き上げた。しかし、これで水道料金の不払い者がさらに増加した。

オンディオ社の水道料金の4倍の値上げは、民営化の約束を破ったことになった。水道料金の不払いが増え、オンディオ社の増収にはならなかった。そのため、オンディオ社はマニラの水道事業から撤退することを決めた。民営化の結果として、マニラでは水道料金の値上げだけが残った。


先進国の多国籍企業が発展途上国の水道事業を支配することについては、次を参照。
http://blog.goo.ne.jp/morinoizumi20/e/ae067a9e3fbdc651bfc565efe8fe69b0

インドは水不足が深刻

2005年08月15日 | 水資源
20世紀末から、インドは緑の革命の進展により、人口増加を上回る食料増産ができ、食料不足の問題は解決した、といわれた。コンピューター産業の発展もあり、インドの経済・社会は明るい方向に向かっているのは間違いないが、干ばつ被害が短期的にインド経済を狂わせる恐れがある。

グジャラート、マディヤプラデシュ、ラージャスターン、アンドラプラデシュ、オリッサ州では、2005年、南西モンスーンが弱く、干ばつ被害が深刻である。小麦、米、トウモロコシ、大豆などの生産量は大幅に落ち込んでいる。最も生産が落ち込んだのは、家畜用飼料としての大豆・とうもろこしである。

インド政府は、備蓄食料(小麦)を放出したり、海外からは飼料(大豆。とうもろこし)の輸入を増やしたりし、急場をしのいでいる。
歴史的には、干ばつになると一般民衆が暴動を起こし、地主・食料流通業者が襲撃され、社会・政治は混乱に陥ったものである。
現在では、干ばつなどの災害時でも食料を国内に円滑に供給する分配システムができていて、社会不安に陥る恐れは少ない。

家畜用飼料の生産低下により、2,000頭の牛が死亡した。干ばつの被害が最も大きい州では、さらに状況が悪化するものと予想される。
グジャラート州の主要作物は落花生であるが、今年は50%減少し、食用穀物(小麦)の生産量は、30%減少すると予想されている。
ラージャスターン州の雨量は昨年の20%減で、水不足が深刻である。小麦の生産量も23%の減少見込みである。
グジャラート州で、干ばつのために乳牛への飼料が不足した。牛乳生産量が、昨年の同時期に比べて3~4%減少した。今後はさらに落ち込むと思われる。

インド政府の備蓄穀物は3,000万トンあり、暴動や社会不安に発展することはない。従来、国内で食料不足などの問題が起こると、パキスタンとの国境紛争(カシミール問題)を起こして、食料不足の問題を中途半端な外交問題にすり替えて終わらせたものであった。現在は、豊富な備蓄穀物があり、国内問題を国外問題にすり替えてしまうことはない、と考えられる。

http://www.d4.dion.ne.jp/~aoisora/