TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

映画鑑賞『梅切らぬバカ』

2021年11月13日 | インポート
映画『梅切らぬバカ』を観に行った。
緊急事態宣言解除を受けて、座席もひとつおきではなくなっている。
が、そこは心配に及ばず。朝早い時間帯だったせいか、客の数がそもそも少なく、前後左右どこも空いていてほっとする。

舞台は、加賀まりこさん扮する占い師の母親と、塚地武雅扮する50歳を迎える自閉症の息子とのふたり暮らし。
意思疎通がままならないふたり暮らしなのに、どういうわけか、朝食の場面がとても豊かに感じられる。千切キャベツを切る音から朝が始まるからだろうか。
グループホームに息子を入居させて、初めてのひとりご飯を食べる場面で、まりこ母さんが、納豆を発砲スチロールの容器のまま食べず、きちんと食器に移し替えていたのも印象的。
丁寧に暮らしてきたのだなあと思う。
グループホームを住宅街に建設することに、なかなか近所の理解を得られない。ひとごとなら、偏見を持たずに受け入れようとか、多様性は大事だのときれいごとでまとめあげることができるが、さて自分の身にふりかかったら、あなたならどうしますか?という疑問を投げかける。
まりこ母さん曰く、「わたしがいなくなったら、あんたひとりぼっちだね」というつぶやきに、息子が「かまいません」と絶妙なタイミングで答える。もちろん意味が分かって言っているのではないが、そのひとことに彼女は救われる。
障がいを抱え、手のかかる息子とともに暮らすのが、果たして不幸なことなのか、反面、自立して手のかからない息子がいることが、幸せなことなのか、考えさせられる映画だった。
ステキだなあ、まりこ母さん‥‥という思いが募り、1時間半の短い作品だったせいもあり別れがたく、もう少しその後の展開を観ていたかった。

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