TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

管理課の新年度

2011年04月03日 | インポート
 来週から、朝のラッシュ時に限って、電車のダイヤが平日用に戻される。
暖かさが増し、電力の需要が供給を下回る日が続くとの見込みもあるのだろう。

 知事選の行われる年の、本格的な人事異動は、6月に行われる。
それでも、若干の異動はあり、4月1日を挟んで、去る人来る人、新旧入り混ざり、席替えなども
行われ、例年のごとく、落ち着かない新年度が始まった。

 しかし、いくら落ち着かない、慌ただしいといえど、スイッチを押せば電気がつき、ホームで
待っていれば、電車が時間通りにやってきて、昼になれば食事ができる、
夜には布団に入って眠れるだろうということを(例え、幻想であるにせよ)信じることができるというのは、
実はこの上なく、安定した生活なのである。

 わたしの属する管理課には、アルバイトのPさん、再任用職員O氏が、新しく配属された。
再任用職員というのは、60歳の定年を迎えたあとも、引き続き、非常勤職員として働く方のことである。

  O氏には、窓口業務を受け持っていただくことになり、
先日、その引き継ぎを行った。
 彼に仕事の手順を説明しながら、ちょうど1年前、自分が異動してきた時のことを思い出す。

 前任者がごっそりと異動してしまったため、誰にも細かい仕事を尋ねることはできず、
頼みは、前任者が残してくれた、丁寧な事務引継ぎ書と、前年度の書類。
 それらをあっちこっちひっくり返しながら、知らぬ存ぜぬの態度の周囲への怒りと
悲壮感に燃えながら、過ごしていたのだった。
 「この状態を続けられるのか」
と、深刻な気分に陥り、通勤定期なども、半年分ではなく、3か月分しか購入することはできなかった。

 それが、1年もたつと、何とか回るようになっているものである。
 今では、こんなこと初めからわかっていました、みたいな澄ました顔して、O氏に対して仕事の
説明などしているではないか。
 おまけに、内心では、
「フーフッフッフ。これから慣れるまでが、すごーく、大変よ~ん」などと
意地悪いことを思いながらも、表面的には、
「そのうち、わかるようになりますから大丈夫ですよ」などと、親切げなセリフまで吐いている。
 年月というのは、偉大である。

 偉大とは言い難いのは、同じ年月でも、年齢である。
年を重ねると、新しい仕事を覚えることの、負担感は重くなる。
ましてや、O氏にとっては、今までやっていた仕事とは、全くの畑違いの分野である。。
そうとうストレスがたまるらしく、しばしば席を立つ。
 そして、身体一面から、タバコの匂いを染みつかせて、戻ってくる。
 受動喫煙防止条例が、施行されて一年たつが、
あれって匂いのことまでは、関知していないのだっけ?
身体にまとわりつく残り香って、有害ではないのかしら?
 とそこでまた、わたしの”気になり癖”が働く。

 この匂いが、今後、ますます嫌なものになっていくのか、それとも、気にならなくなってくるのか、
興味深いことである。


 こうしてまた新しい年度が始まった。

 席替えをしたことによって、隣人S氏は、わたしの真向かいになった。
彼の大きな顔を、真正面にデンと見据える位置というのも、なかなか圧倒されるものがある。(マ、オタガイサマですが)。

 震災のあった日、わたしはたまたま事務所にいなかったのだが、S氏が当日の様子を、
「そりゃアー、まアアアア~、すごいの、なんの。事務所がこんな風に、バックンバックン波打っちゃってました」
と興奮しながら、ゼスチャー付きで、説明してくれた。 

 今も相変わらず、計画停電だ、発電機、発電機!と言っては飛び出し、
誰それのパソコンの調子が悪いと言っては呼び出され、コーヒーメーカーに入れる水を汲みに
給湯室に行った先で、用事を頼まれ、30分もたってから戻ってきた、
などという、慌ただしい日々を送っている彼である。

 バタバタとせわしないと言っても、彼にとっては、それがいつもの日常、管理課の風景なのである。

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