TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

世代交代

2022年12月18日 | エッセイ
来年はうさぎ年。
わたしの干支である。つまり還暦ってことですね。
還暦、還暦とはいうものの、何がどう変わるのか、きっと何も変わらないんだろうな、と思う。
似たような感想はよく聞くが、中身は40代の頃と変わらない。

先日は、母の通院に付き添った。
いつのまにか、わたしが保護者のようになっている。
そのように行動しておきながら、これまで自覚がなかったことに驚く。

これは通院ばかりとは限らない。
家に電器機器の修理にきた業者も、気づくと、その場にたまたま居合わせたわたしを相手に、注意事項などをしゃべっている。
電化製品は今まで父のおはこだったので、役割交代の違和感にとまどう。
これまで止まったまま放置されていたことなどなかった時計の電池を交換しながら、せつなくなる。

診察室で、ふと先生の視線を見ると、患者本人ではなく、わたしのほうに向けられている。
足元のおぼつかない母に危険がないように付いてきただけのような、軽い気持ちでいたわたしは、我に返り、自分の立場を思い知る。
親の後ろにぼさっと立っていれば、必要なことは全て彼らが聞き、手続きなんかもそつなくやっておいてくれていた、というような昔からの馴染んだ感覚から抜けきらず、つい油断して、ぼんやりしてしまうのだ。
母は母で、聞きたいことや不安なことを、あれこれあれこれ先生に聞いてしまえばホッとして、あとのことは娘が確認しておいてくれるだろうとお任せのご様子だ。
世代交代の瞬間みたいなものは、こういうなにげない場面で思い知る。

コメント (4)
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