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星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

「シェイクスピア物語」~真実の愛~ アフタートーク

2017-01-24 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
「シェイクスピア物語」~真実の愛~
1月22日大阪公演のアフタートークです。
登壇の皆さんは終始笑顔で、と〜っても楽しいトークでした。

例によって暗い中での殴り書き。解読に苦心しました(泣)。
言葉はこの通りではないし、雰囲気で勝手にまとめたものなので、聞き
間違い、書き間違いはすべて私の責任です。しかも内容は上川さん
メインにつき、かなりはしょってます。そこんとこヨロシク!

カーテンコール終了後、すぐにアフタートークが始まりました。
司会進行は我善導さん。(←役名失念!マキューシオを抱き起こす人。
TV「いつ恋」に出演、ドラクエスペクタクルツアーではトルネコ役。)

舞台上に扇形に並んだ椅子。向かって右から小川菜摘さん、観月ありささん、
上川隆也さん、五関晃一さん、藤本隆宏さん
の順に着席。

トークの開始を告げると、口火を切ったのが上川さん
「ちょっといいですか。僕らさっきまでこの衣装のまま芝居をやってたんで、
気持ちがまだ切り替わらないんですけど~」
その言い方で笑いが起き、出演者も客席も一気になごやかモードに。

五関さんが座高低く椅子に座り、両足を前方に突き出して何やらブツブツ。
子供っぽい仕草にファンから小さな嬌声とどよめきが! 上川さん
五関さんのほうに手をやり、大人なんだからとなだめるのが兄弟みたい。

初共演どうしが多いということで、まずは小川さん
「観月さんと初めて共演したのがドラマで、ありさちゃんが15歳の時ですね。
今もこんな綺麗で。私は・・・。上川さんとは初めてですが、座長として
素晴しい!」
延々と賛辞が続くので、落ち着きをなくした上川さん。おもむろに足元
にあったペットボトルに右手を伸ばして飲み始めます。ソワソワした感じに
観客クスクス。(小川さんスミマセン。笑ったのはそういう理由です。)

続いて五関さん
「上川さん、クールな人かと思ったら凄く熱い人で、演技指導もしていた
だきました。」
藤本さんが「声がでかい!」ほかにも上川さんへの賛辞。
異口同音に褒められ、照れまくる上川さん。もぞもぞとかなり挙動不審。
・・・・・・

以下、敬称略で。

五関
「グループでは最年長でリーダーとしていつもやってますが、ここでは
年下なのでみなさん優しくて、好きに自由にさせてもらってます」
上川
「好きにしているといえば酒場のダンス。(五関さんが)最近はムエタイ
みたいになってますよ。エニマンに仕掛ける時、後ろ回し蹴りしたり」
小川
「名古屋ではカカト落としをやるみたいですよ」
上川
「名古屋はまだ空いてます。カカト落としを見に。お待ちしてます♪」
しっかり宣伝するお茶目な上川座長と小川さん、さすがです!
・・・・・・

上川
「藤本さんとは大河ドラマでごいっしょしてます。その時もですが、今回
も敵対してますね」
藤本
「ちょっと距離を置いてます」 客席ちょっとどよめき。
・・・・・・

話題は、舞台裏は戦争状態という話に。
藤本
「舞台裏はすごい大変で。観月さんとすれ違った時、すごい怖い顔で
階段を上がってきてましたね」
観月
「そうなんです。ドレスのスカートがかなり広がってるので、狭い
ところをこうやってたくし上げて走り回ってます」
小川
「私なんかマーガレットとビアトリスの二役だから、急がないと。
着替えというより剥ぎ取られている感じですよ」
(剥ぎ取られている様子を上川さんがジェスチャーで解説)
小川
「マーガレットが終わって、急いで鬘やメイクを取ったら次もマーガ
レットだった。着替える必要なかったということも。・・・とにかく
戦争状態です」
藤本
「僕は今日マントを間違えました。五関くんが満面の笑みでやってきて、
五関のと間違ってませんか?って。そういえば丈が短かった」
五関
「衣装の並び方が隣どうしで。僕が着ようとしたら袖が長くて」
客席ウケる♪
・・・・・・

シェイクスピアの芝居を今回やって感じたことは?という質問。

上川
「そもそもシェイクスピアには誰も会ったことがないですよね。
イフのストーリーなので、こんな人がいてくれたらなあと。そういう意味
で9割9分、僕オリジナルです。でも、シェイクスピアがこんな人と思わ
れても困るので、シェイクスピアの名前を借りてこの役を演じている、
みたいな感じです。すみません。理屈っぽくて」
客席が水を打ったようにシーンと。
それまで笑ってばかりだったので、感心して聴き入っていたものと思
われ。たしかに上川さんのコメントは反芻する時間が必要でした。

観月
「私は逆に、本当にこんな話があったと思って毎日やってます。
上川
「ほんとうにそういうお芝居をされてますね!
ここまで本当にためつすがめつ、毎回いろんなことを試していて、それに
みなさんが乗っかってきてくれてます。日々、縦に積み上げてやってきて
いる感じですね」

藤本
「十朱さんが本当にエリザベス女王みたいなんです。
(上川さんに向かって)二人芝居やっててどうですか?」

上川
「ダンカン(男優しかいなかった時代にいたという男装の女優)との
シーンは、僕はオーラに包まれている感じですね。幸せです♪
だからついテンションが高くなるんです。自分で演じてるんじゃなく、
十朱さんといることでそうなってしまう、自然とそうさせられてしまう
という感じですね」
登壇者たちもほううう〜という感じ。
・・・・・・

終了の鐘が鳴ったので、最後に皆さんの「ひと押し」のシーンを、と、
善導さん。すぐに言い直して、あ、「イチ押し」のシーンです。
すると上川さん、すっくと仁王立ちして抗議のポーズでツッコむ。
他の登壇者もツッコみまくり、善導さんが平謝りでもう一度言い直し。
会場全体が爆笑の渦 @@@@@@)))))))))))

以下、一押しのみどころについて。

小川
「バイオラが、男の人の服って脱がせるのが難しいのね、という場面
です。何も知らないという感じがいいですよね。私が言ってみたい台詞
です。私が言うと、知っとるやないかい、と言われると思いますが」

観月
「ウィルからアダムを通じて渡されたヴァイオラへの手紙を、トマス・ケント
(ヴァイオラが男性に扮装した時の名前)として受け取って、ヴァイオラの
気持ちになって読むところです。ここ、お客さんもキュンとなると思うので、
このシーンに命かけてます。

上川
(言葉の置き換えが複雑すぎてうまく聞き取れなかったけどこんなカンジ
かな→)僕の台詞はほとんどがフルーツを細かくカットしてシロップに
漬けたみたいな台詞ばかりで。(←全く違うかも)
そんな中で、座長のバーベッジとやるゲンコでのタッチですね。
(↑ここ、間違いのようです。座長のネッド=五関さんが正しいようです。)
座長の心意気にじんとくるんです。」

またまた会場、シーン。
上川「だから、どうして静かになるんですか!」
(コメントを反芻して客席もじんとなったからです。)
このとき、五関さんが上川さんにゲンコツを寄せていき、上川さんが
それに応えてゲンコツタッチ。笑顔の二人がとっても微笑ましかった〜。

五関
「僕のみどころは、登場して最初に台詞をいうところです。
僕、今日、言い忘れた台詞があるんです」
私の後ろの席の人がソウソウ、あの台詞がなかったと強く反応してました。
五関さんがその台詞を言いかけて、上川さんが、まあ明日もあるんだし、
いいんじゃないか、と。

藤本
「僕は、善導さんが倒れたマキューシオを抱きしめるところ。けっこう
繊細なんですよー!手がプルプルしてる。そこを見てほしい」
(劇中劇のロミオとジュリエットの中の1シーン、五関マキューシオも
善導さんも熱演です。)

時間がきて、みんなで大きな拍手を。全員笑顔ではけていきました。
考えてみれば、上川隆也さんのアフタートークに参加したのは初めて。
貴重な機会となりました。
以上!


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「シェイクスピア物語」~真実の愛~ SHAKESPEARE OF TRUE LOVE

2017-01-23 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
劇場  梅田芸術劇場メインホール
観劇日  2017年1月21日(土)17:00開演 
座席  1階6列

<おもなスタッフ、おもなキャスト>
演出:佐藤 幹夫  
上演台本:元生茂樹、福山桜子

上川隆也:ウィリアム・シェイクスピア
観月ありさ:ヴァイオラ
五関晃一:ネッド(スター俳優、シェイクスピアの友人)
藤本隆宏:エセックス卿(ヴァイオラの夫になろうとする大富豪)
小川菜摘:マーガレット(ヴァイオラの母)、ビアトリス(酒場の女主人)
秋野太作:ヘンズロー(ローズ座の興行主で劇場主)
十朱幸代:エリザベス女王、ダンカン
松尾敏伸:クリストファー・マーロウ(脚本家)
黒川ティム:エドワード・パーシー(女形の俳優)

<STORY>
ウィリアム・シェイクスピアは、芝居好きなエリザベス女王下の
ルネッサンス演劇が賑わうロンドンで劇作家・俳優をしていた。
野心あふれる彼は世の中を変える新しい芝居を作りたいと熱望していたが、
最近は全く作品が思うように書けず絶不調。

そんな中、ヴァイオラという一人の女性と出会ったシェイクスピア。
その時、初めて真実の愛を知る。
だが、彼にはすでに妻がいて、ヴァイオラには許嫁がいた。
それは許されない恋、秘密の禁断の愛となった。

愛とは何か…その想いが嵩じて、喜劇を書くつもりが恋愛悲劇になっていき、
やがてそれは、名作「ロミオとジュリエット」を紡いでいくこととなる。

当時の演劇界は女性が演じることなど許されない時代であったが、
ヴァイオラは無謀にも恋するシェイクスピアの作品に出演し、彼自身も舞台に上がる。
許嫁の嫉妬に狂う報復と法律の罰が、上演する舞台に迫る…
二人の「哀しくも真実のファンタジックな愛」はどうなってしまうのか…

公式サイトよりそのまま引用




名作『ロミオとジュリエット』が作者の実体験を元にしたものである
という着想でトム・ストッパードが脚本を書き、それを映画化した
のが『恋におちたシェイクスピア』。
今回の舞台もその原案がもとになっていて、見て楽しく、後味のいい
お芝居だった。
シェイクスピア作品を別に知らなくても楽しめる。ただ、ロミオと
ジュリエットだけはあらすじを読んでいたほうがいいと思う。

オープニングから演奏と歌。賑やかな始まりだった。
開演ギリギリに席に着いたが、友人によれば、さっきまで通路に俳優
さんたちがいたとのこと。主要キャスト以外に、たびたび登場する
コロスも効いていた。

書けなくて困っていたウィル(シェイクスピア)がヴァイオラに恋を
した途端、言葉があふれ出す。そのビジュアルとして上川ウィルが
羽根ペンのハネを大きくせわしなく動かしている様子がとても心地いい。
羽根ペンを使った後に胡椒を振りかけるみたいにしているのは、文字
を定着させるための道具? そういうリアリティも楽しめた。
上川さんは主演だけにほぼ出突っ張り状態。通路含め劇場中を動き回り、
恋するウィルをお茶目に熱く演じていた。

男優しかいない時代に、俳優をやりたくて男装してオーディションを
受けるというスリリングな体験をするヴァイオラ。観月ありささんが
おヒゲをつけてトマス・ケントという男名を名乗るところが見もの。
ヴァイオラが劇場に通うようになったことにより、劇場を巻き込んで
皆の運命が変わってゆく、そちらの方が実はもっとスリリングだった。

十朱幸代さんの演じる二役が重要。演じ分けも見事だった。
芝居好きのエリザベス女王の言葉・采配が、二人の恋の行方にも影響
を及ぼす。男装の女優ダンカン(亡霊?)はシェイクスピアの心に
住み、悩める脚本家のよき相談相手となる。
このダンカンという女優さんは実在なんだろうか? シェイクスピアが
作り上げた単なる妄想なのか?

天才スター俳優役でクールさが素敵だった五関晃一さん。
マーガレットとビアトリス、どちらも貫禄あった小川菜摘さん。
徹底したヒール役のエセックス卿を演じた藤本隆宏さん。
お金の心配をしているのが印象的なヘンズロー役の秋野太作さん。
存在感あって上手いなあと思った脚本家マーロウ役の松尾敏伸さん。
女形としてヴァイオラに嫉妬するエドワード役の黒川ティムさん。

他にもいろいろあるけれど、このへんで。
この日はアフタートークがあったので、それをまとめなくては。

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ペール・ギュント 兵庫公演

2015-08-06 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名  ペール・ギュント
劇場   兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
観劇日  2015年7月25日(土)18:00(1幕85分-休憩15分-2幕90分) 
     ※アフタートーク付き
座席   2階


観劇後すぐにツイートした通り。
「ものすご~くよかった。ものすご~くよかった。」
観終わって拍手しながら後から後からいろんな感情がこみ上げてきた。
アフタートークがなければあのまま家まで引きずっていたと思う。
白井さんの発想、演出にまたしてもヤラれました。

原作の古めかしい訳にくらべると、違和感のない現代語翻訳ですんなり
入っていけたのもよかった。
内博貴さんによるペールの美しく奔放な輝きと、全員で何役も演じて
独特の世界を作り上げている出演者たちの一体感が凄かった。




<スタッフ>
作/ヘンリック・イプセン
構成・演出/白井晃
翻訳・上演台本/谷賢一
音楽・演奏/スガダイロー
振付/小野寺修二

<キャスト>
内博貴(ペール・ギュント)
藤井美菜(ソールヴェイ)
加藤和樹 (アスラク、ファン・エーベルコップフ、ベルグリッフェンフェルト 他)
前田美波里(オーセ:ペールの母)
堀部圭亮(ソールヴェイの父親、見知らぬ船客、牧師、痩せた男 他)
橋本淳(マッツ・モーエン、トロムペーターストーレ、フセイン、コック 他)
三上市朗(マッツの父親、ドブレ王 他)

河内大和(ジジイ、謎の声、ボタン作り 他)
小山萌子(ソールヴェイの母親、カーリ 他)
桑原裕子(マッツの母親、緑衣の女、精霊 他)
辰巳智秋(ムッシュウ・バロン、アラブ部族長、船長 他)
瑛蓮(村の女、アニトラ 他)
宮菜穂子(イングリ、フゥフゥ 他)
皆本麻帆(ヘルガ、少年 他)
荒木健太朗(村の若者、指を切る男、盗賊 他)
青山郁代(村の女、ヴァールの娘、アラブ部族の女 他)
益山寛司(村の若者、緑衣の女の子供、盗賊 他)
高木健(村の若者、マスター・コットン、アピス王、水夫長 他)
チョウヨンホ(村の若者、故買人、フェラー、舵手 他)
間瀬奈都美(村の女、ヴァールの娘、アラブ部族の女 他)
大胡愛恵(村の女、ヴァールの娘、アラブ部族の女 他)
薬丸翔(看護師 他)
石森愛望(看護師 他)



<あらすじ>
落ちぶれた豪農の息子で、母オーセと共に暮らしている夢見がちな男
ペール・ギュントは、かつての恋人イングリを結婚式から奪取して逃亡
する。しかしイングリに飽きたら彼女を捨て、トロル(妖精)の娘と婚礼
寸前まで行くが逃げ出す。
その後、純情な女ソールヴェイと恋に落ちるが、穢れないソールヴェイ
にふさわしい自分自身を見つける事が出来るまで、彼女を待たせたまま
放浪の旅に出る。

山師のようなことをやって金を儲けた果てに無一文になったり、砂漠
をさまようなど、世界各国を遍歴をした後、老いて帰郷する。死を
意識しながら故郷を散策していると、死神の使者であるボタン職人と
名乗る男と出会う。
彼は天国に行くような大の善人でもなく、地獄に行くほどの大悪党で
もない「中庸」の人間をボタンに溶かし込む役割の職人だった。

「末路がボタン」というのだけは御免だと、ペール・ギュントは善悪
を問わず自分が中庸ではなかったことを証明しようと駆けずり回るが、
誰もそれを証明してくれず、ペールの人生の無意味を気づかせただけ
だった。
疲れ果てたペールはずっと待っていたソールヴェイのもとに辿り着く……。
(公式サイトより引用)






好きなひとを待たせたまま、自分探しの旅を続けるペール・ギュント。
金と女を手に入れたはずが、すべてを失いズタボロになって故郷に
戻る。それでも最後まで「自分自身」にこだわり続けるペールの物語は、
胸のすくような冒険譚でもなければ、あま~いハッピーエンドでもない。
待ち続けたソールヴェイがペールを迎えるシーンから赤ん坊が再登場
するラストにかけて、私自身コントロール不能の感情と、そして涙。
決して悲しいわけではないのに・・・。

以下、感想というより気づいたことのメモ。

<冒頭の舞台セットに釘付け>
席が遠いので観劇前に前方で舞台上を眺めてみたら、もう芝居が終わっ
てすべて撤去した残骸? と思えるようなセットだった。
太い配管チューブが約2本、天井を突き破って垂れ下がっている。

2階の自分の席に戻り開演を待つ。舞台の奥行きがかなりある。
やがて暗い舞台の上手から人が現れ、残骸に見えた箱状のものを坐って
いじり始めた。パソコン? テレビ? 時代は現代らしい。
人数が増え、気がつくと舞台奥の大きな窓から光が差し、ほの明るい。
窓からの逆光に照らし出された廃墟がたまらなく美しい!
昔観たタルコフスキーの映画「ノスタルジア」を思い出した。
色彩もなく光だけの世界は「ストーカー」のモノクロ映像にも重なる。
たぶん、私はこの逆光の場面ですでに心をもっていかれたと思う。
舞台全体を見渡せる席でよかった。

病院の機材のようなものが置かれ、外では爆撃機かヘリの騒音。
怯える人、車椅子の人、忙しなく動き回る医師、看護師・・・。
白衣(水色)の人がどこかから引っ張ってきたのは保育器。中には
血まみれの赤ん坊。動いてる? 死んでる?
その間も人々は動き続け、2階からの眺めはまるで長回しの映画のよう。

上演中の最初から最後までこの廃墟が舞台上に存在しており、保育器の
前から「ペール・ギュント」の物語が始まる。
ペール以外、場面に応じて俳優たちが両方の時代の役を切り替えるので、
現代にも共有できる自分たちの物語でもあることが実感できた。


<万能の透明ビニールシート>
透明の大きなビニールシートが何度も登場し、その使い方にびっくり。
最初は境界を曖昧にする、絵巻の雲のような存在だと思った。
さらに、ある時はベッドシーツや海の波、遺骸を包む布などになったり、
人物の登場口や場面転換代わりにもなったり。ある場面では姿の見えない
「声」の輪郭になる等、抽象的な使われ方もしていた。
2階席から見ていると、透明シートは大きなアメーバのような有機的で
ダイナミックな動きが面白かった。

<音楽>
スガダイローさん率いるメンバーによるジャズの生演奏。
廃墟にふさわしい、激しく乾いた感じのアヴァンギャルドな曲が多い
なか、ソールヴェイに関わる音楽だけがとても優しく感じられた。
森の中でペールが一人で家を建てて住み始めた時、グリーグの「朝」
のメロディを内くんペールが口笛で吹いているのが聴こえた。(全編
ジャズのオリジナル曲と書いてあったのでこれはサプライズだった。)
それにつづく「朝」をアレンジしたスガさんのピアノ演奏に心が和らぐ。
ふと見ると、家族と離れペールの元にやってきたソールヴェイが!
スガさんが頷くと藤井さんソールヴェイが歌い始める。子守唄のような
優しい印象の曲。
これが最後の二人のシーンでもう一度歌われた。グリーグ版のような
切々と歌い上げるものではなく、子守唄のようにペールを包み、赤ん坊
へとつながる。とても意味のある曲だった。


<自分自身になる、ということ>
生き方の方針として2つの言葉が出てきた。
(痩せた男も、人は2通りの方法で自分自身になる、と言っている。)
・ドブレ王の言った「あるがままに生きる」。
・ペールが言う「自分らしく生きる」。

一見よく似ているけれど、「あるがままに生きる」は今の自分を肯定
し、満足しながら生きる、ということになるだろうか。
一方、ボタン作りに、あなた自身だったことは一度もないと言われた
ペール。自分らしく生きるとは自分を殺すことだとも言われてしまう。
「自分らしく生きる」ために今の自分に満足せず、ずっと自分探しの
旅を続けていた彼は、つまり、自分自身だった瞬間はなかったことに
なる。なんだか禅問答みたいだけど(笑)。


<赤ん坊>
演出の白井さんによれば、この物語は赤ん坊が保育器の中で見た夢、
という設定なのだそう。

保育器の前からペール・ギュントが動き出す、という演出。
現代と原作の時代が二重写しに見えてはいるけれど、ペール・ギュント
を追っていればストーリーを見失うことはなかった。
現代のセットの中にいても不思議じゃないのは、現代の言葉遣いだった
り、テンポの早い展開のせいだと思う。
モロッコにいるペールが携帯電話で呼び出され、応答しながら部屋を
出ていくという大胆な反則ワザもあったが、それすら違和感なかった。

赤ん坊をもってきたのは、白井さん的にはペール・ギュントは現代にも
通じる話だということの確認・実証意図があったのかもしれない。
でも、私にとってはちょっとした甘い飴でもあった。
「ペール・ギュント」は受け取り方に年齢差が出る話だと思う。
ペールの失敗に自分を重ねながら、できることなら人生の一部を書き換
えたいと思ったり(汗)、発することのなかった言葉や感情や涙に後ろ
めたい気持ちになったり(苦笑)。
なので、赤ん坊=人生のやり直し、にすがりたい。

血まみれの赤ん坊は重傷なのか、産み落とされたばかりなのか?
もし命が風前の灯し火であれば、この夢はそのまま赤ん坊の一生に等
しい。そう考えれば少しは救われる気がする。
あるいは、赤ん坊が夢から覚めた後も命長らえるのであれば、この子は
もう一回、イチから人生をやり直せる。
もう遠回りはせず、好きな人を待たせたりもしない・・・はず・・・。

いや、違うな。
いつの時代もペール・チルドレンは、赤ん坊時代にみた夢のことなんか
キレイサッパリ忘れて、やっぱり自分探しの旅に人生の大半をさくのだ
ろうな(笑)。それが生きる意味だから。

もう一つ、赤ん坊を見て感じたこと。
人生は赤ん坊が見る夢と同じくらい短い、一瞬の出来事のように思える。
ソールヴェイというゆりかごで眠るように死んでゆくペール。一方、
ソールヴェイという名の看護師が見守る保育器=ゆりかごで眠る赤ん坊。
年老いて死ぬ間際に見る夢と、生まれたての赤ん坊が見る夢とが交錯する
ラストが苦くも甘くもあった。


ここまで書いて力尽きたので、ソールヴェイについてはあらためて。
(書けたらいいけどね。)


●このブログ内の関連記事
ペール・ギュントからゲスの極み乙女。経由、虹伝説へ。
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「真田十勇士」大阪・前楽(夜)

2015-02-15 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
「真田十勇士」再演。
もう1週間たってしまった。今日はついに千秋楽だよ。

観客に男の人が多い気がするのは「真田幸村」人気だろうか。
今回は1回しか観られないので、好きな前楽ソワレにした。
観劇後に友人と顔を見合わせ「よかったねー!満足♪」と同じ
笑顔で劇場を後にした。
作品に対する思いの丈は初演時にすべて書いてしまったので、
今回はちょびっとだけ。



<キャスト・スタッフ>
上川隆也:真田幸村       柳下 大:猿飛佐助
黒木芽以: ハナ・花風     葛山信吾:霧隠才蔵
山口馬木也:服部半蔵      松田賢二:由利鎌之助
渡部 秀:真田大助        相馬圭祐:豊臣秀頼
小須田康人:大野修理亮治長   粟根まこと:根津甚八
鈴木健介:望月六郎       吉田メタル:三好清海入道
俊藤光利:大野治房      佐藤銀平:三好伊佐入道
玉置玲央:穴山小介      三津谷 亮:筧十蔵
賀来千香子:淀の方      
里見浩太朗:徳川家康

脚本:中島かずき  
演出:宮田慶子
主題歌:中島みゆき「月はそこにいる」
音楽:井上鑑 feat. 吉田兄弟





公演名  真田十勇士
劇場   梅田芸術劇場 メインホール
観劇日  2015年2月7日(土)18:00~21:15
座席   3列


やっぱり、やっぱり凄い熱量だった。
舞台から途切れなく浴びせられるエンターテインメントな集中
砲火に、観るほうも全身汗びっしょり!
心は一気に初演大楽の2013年10月6日へと駆け戻り、つながった。

体制に牙を剥き、吠える男。ロックだ~~~幸村さん。
負けて勝つ。死んで生きる。
二律背反を全部ひっくるめて燃やし尽くして、ジ・エンド。
特に力の入るのは、家康と幸村の会談の場面だ。
質問しちゃダメだよ~、家康の話に耳を傾けちゃダメだよ~、と
思っても、どんどん相手の言葉の網に絡めとられてゆく幸村。
涙目だ。
幸村に背中を見せる余裕さえある家康、その自信、器の大きさ。

十勇士たちの勝利の立ち回りは見ていてホンットに楽しかった。
十蔵の一輪車、坂を後ろ向きに上がってた♪
演出が変わったおかげで、服部半蔵の存在感が大きくなり、敵味方
のバランスがよくなっていたと思う。
霧隠才蔵、服部半蔵、由利鎌之助。男前3人衆、カッコイイ~~。
秀頼がより天下人らしい佇まいになり、大坂城での淀との母子の
シーンが涙腺決壊のピークに。客席はすすり泣き大会だった。
猿飛佐助は今回は、殺陣での身体能力発揮ができなくなってしまっ
た分なのか、豊臣への思いの強さをより細やかに感情表現されて
いるように感じた。
ハナさんは大阪に来て、実際に住吉大社で五大力の御守りを自力
入手したそうだ。花風よりハナのときのほうがいいなと思った。

大助が幸村に似てきた、というより昔の舞台の上川さんに似てきた
ね・・・と友人が言うのでうんうんと同意。妙に親子感があった。
最後の戦い。倒れて仰向けになっている大助の顔をオペラグラスで
確認。角度的には見えにくいけれど、たしかに大きな目が開いたまま。
後からやって来た父が見つけ、我が子の目を閉じさせてやる場面に涙。

そして、月と男とあの歌。
パーフェクトに一体化している。
再演でもやっぱり思った。殿、声が太い!声がデカイ!
そんな声が私は好き・・・♪
私は福岡楽は観に行けないけれど、今日も存分に吠えてくだされ。
全員で見得(ポーズ)をきめるシーン、十勇士がまるで一つの生き物
のように見える。ほんっとカッコいいですワ。
お茶目なカーテンコール。そこでもまだ走っている幸村さん。
舞台の坂のてっぺんへすばやく駆け上って、最後は右手を左胸に。

<日替わりネタ>
清海たちのごつい手で作ったのかと思うと・・・
「食欲が6割減になる。大小のビリケンさんみたいな顔しおって」


●2013年初演「真田十勇士」観劇メモ
真田十勇士(1)東京公演・感想未満
真田十勇士(2)名古屋千秋楽カーテンコール
真田十勇士(3)名古屋公演
真田十勇士(4)大阪公演 前楽
真田十勇士(5)大阪公演 千秋楽カーテンコール
真田十勇士(6)大阪公演

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「炎立つ」兵庫公演

2014-09-17 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名  炎立つ
劇場   兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
観劇日  2014年9月15日(月祝)12:00~14:30
座席   Q列

2年前に読んだ『火怨 北の燿星アテルイ』が面白かったので、
高橋克彦さんの原作になる舞台『炎立つ』にも俄然、興味があった。
どんな世界を見せてくれるのか、と。
(原作のほうは長編すぎて読了できず。涙。)



<ストーリー>
平安時代末期、奥州藤原氏の祖・清衡によって築かれた、
黄金の楽土「平泉」。

その万物平等の理想郷は、軍事力でも支配力でもない、
運命を引き受けた人間の凄まじい意志の力によって実現した。

傷つき乱れた大地に渦巻く、
地をめぐる争い、中央権力の野望、古代神が与える呪縛。
理不尽に降りかかる禍いに、怒り、慟哭し、絶望しながらも、
国づくりへ踏み出してゆく藤原清衡。
やがてたどり着く信念は、支配からの独立を勝ちとり、
戦さの連鎖を断ち切ることにあった。
やがて理想国家を成り立たせたものは、 神か、富か、それとも――

(公式サイトより引用)


<物語と演出、感想など>
舞台の内容は、藤原清衡が奥州藤原氏の礎を築くまで。とりわけ異父弟
にあたる家衡との対立から起きる戦いにスポットが当てられていた。
(役名はキヨヒラ、イエヒラ)

舞台下手に生演奏つきだったので、常時ライブ感があった。
数名のコロスがいて、新妻聖子さんの素晴しいソロがあり、主要キャスト
など全体としては衣装に趣向を凝らした朗読劇みたいな演出だった。
朗読劇は嫌いではない、むしろ好きなのだけれど、今回は私がイメージ
していたような東北古代の世界が広がっていかず、ひたすら自分の想像力
不足が残念。

カーテンコールの挨拶では、いろんなメッセージがこめられている、との
ことだったが、ラストの“大地に生えた2本の緑の芽”が象徴的。やはり、
東北の歴史への理解を促すことと復興への願いが強く出た作品だと感じた。
「日ノ本みちのく誰のもの」という歌のフレーズが何度も何度も繰り返さ
れたので、劇場を出てからも耳に残っていた。昔、配下に置こうとしたのは
大和朝廷、現在は・・・と考えると、かなり痛烈!

この舞台を観ながら、2007年の舞台『何日君再来』で日向英一郎が言って
いた「国があるから人が集まったんじゃない。人が集まって、国になって
いったと思うんだよ」という台詞を思い出していた。

キヨヒラ役の愛之助さん、「平泉」の名前にこめた思いを言う場面がいい。
イエヒラ役の三宅健さん、邪悪メイクが凄いインパクト!
アラハバキの神を演じる平幹二朗さん。立っているだけで畏怖の念を抱か
せる存在であることが後方席からでもわかった。オペラグラスで見るとさら
に異様さが際立つ。一方でアラハバキは大きくてあったかい存在であること
も感じられた。特に最後の台詞にはゾクッとするものがあった。
兄弟の母役の三田和代さん、二人の間に立ち、追い込まれてゆく様子を好演。

この感想を書くために公式サイトを見たら「平成26年度 文化庁劇場・
音楽堂等活性化事業」とあった。まさに! この趣旨通りの舞台だと思う。
コメント (2)
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海辺のカフカ(再演) 観劇メモ

2014-07-27 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名  海辺のカフカ
劇場   シアターBRAVA!
観劇日  2014年6月14日(土)18:00~
座席  B列

●スタッフ
原作      村上春樹
脚本      フランク・ギャラティ
演出      蜷川幸雄


●キャスト
宮沢りえ:佐伯・少女
藤木直人:大島
古畑新之(新人):カフカ
鈴木杏:さくら
柿澤勇人:カラス(カフカの分身)
高橋努:星野
鳥山昌克:カーネル・サンダーズ
木場勝己:ナカタ




***************************************************
再び体が発熱し、全身感応した。
ハート丸ごと掴まれたまま汗ぐっしょり、やっぱり力一杯見てしまった。
ラスト近く、舞台に降る雨の向こうから風が吹いてきて顔に当たった瞬間、
ふっと緊張がゆるんだ。
美しくて、可笑しくて、怖ろしくて、もの悲しくて・・・とびきりロマン
ティックな舞台。私は原作も舞台版もどちらも好き。
(観劇当日のメモより)
***************************************************



<初演との違いなど>
1カ月半前に観た舞台の感想をいまごろ。
2年前に初演を観たので基本的な感想は同じ。
透明ボックスはモジュールのような使われ方をし、複数の時間・空間の
出来事を単体で見せたり、関係あるものどうし並べたり、配置をずらして
登場させたりするのがやはり面白い。

細かい部分で前回と違うところが幾つかあったと思うが、それが初演で観た
ものだったか、あるいは自分の読書中の妄想の産物だったか、今はもう区別
がつかない(苦笑)。
ナカタさんと会話するオスネコは前回も関西弁だったっけ?

一番大きく変わったのは、佐伯さんの印象。
「身毒丸」の白石加代子さんと大竹しのぶさんぐらい違っていた。)
今回は少女時代と現在を宮沢りえさんが一人で演じ分けていたこと。
こんな切り替えが違和感なくできるのは宮沢りえさんだからでしょう。
それってスゴイ!
初演時は二人の女優さんが演じていたし、全くイメージが違っていたので、
最初に歌う少女が登場した時、若き佐伯さんだとはすぐに気づかなかったほど。

ついでに書くと、初演の田中裕子さんによる佐伯さんは生気を失い、生きな
がら死んでいる人、というイメージだった。
宮沢りえさんによる佐伯さんは、美しさを隠さず今も生きている、少女時代
の恋を抱えたまま過去と今を行き来しながらなおも生き続ける人、という
イメージだろうか。
(たとえそれが過去に向けてのものであっても)女性としての色気を発して
いるため、カフカ少年が惹かれるのも無理はないし、二人の間に何かが起き
たとしても納得できるものがあった。

<「記憶」について>
あちら側の世界から一瞬舞い戻り、佐伯さんがカフカにこんなふうに言う。
「私はまもなく記憶がなくなる。自分ではなくなる。お願いがあるの。私を
覚えていてほしい。あなたにだけはずっと覚えていてほしい。」
これってある意味、究極の愛の表現じゃないだろうか。
ずっと忘れない、とは決して言えない者にとって、いま「愛している」と
伝えるより切実で哀しく、もっと深く、激しい言葉。

こんなふうに考えてしまったのは、りえさん演じる佐伯さんのせい。
初演時、この言葉はカフカ少年ではなく昔の恋人に言ったのかと思っていた。
今回、佐伯さんはこの台詞を母として告げたようでもあり、同時に目の前の
恋人に告げるような甘い響きを帯びていたように思う。
あれは、母親かどうかカフカが確認した後だったか? だとすれば、母として
我が子の内にずっと生き続けたい、とは女の本能なのかもしれない。
あるいはやはり我が子に別の愛情を抱いたのか?
最後まで禁断の匂いを感じさせるところは宮沢りえさんならではだった。

一方、ナカタさんの「記憶」は本当に哀しく、空しい。
かつて同じ世界を覗いてしまった者として、佐伯さんに語りかける台詞。
「私の人生はなんだったのでしょう」とぽつりともらした言葉に涙が出た。
自分の境遇を嘆くのでもなく、誰を恨むわけでもなく、むしろ生活費が給付
されることに感謝すらしていた彼が、素朴な疑問として発した言葉に不覚
にもヤラれてしまった。
(木場さんがもうリアルナカタさんにしか見えない。)
子供時代の不可解な事故(事件)により記憶を失い、読み書き能力も失い、
代わりに猫と会話できるようになった。それだけの人生に見えたが・・・。
ある日、何かに導かれたように行動を開始。ふと気づくと、自分はただ一つ
のミッション遂行のためだけに生きてきたのだとさとる。
もしも原作の通りであれば、ナカタさんは別のものに体を貸していただけ、
事件以後の本人はカラッポ同然ってことになる。
でも、だからといって決して「生きていなかった」ことにはならないはず。
現に、こんな終わり方もわるくない、って星野青年が言ってくれたように。
ナカタさんの純粋さは、長距離トラックの運転手だった星野の人生観まで
変えてしまうほど魅力的だったのに違いない。

※再演で初めて気づいたナカタさんメモ
ナカタさんは「入り口の石」を記憶していたのではなく、透明ボックスの
中の歌う佐伯さんからキーワードとして受け取っていた。歌詞の中にハッ
キリと「入り口の石」という言葉があり、それを聞いた直後、星野にそれを
告げていた。

<カフカ少年>
田村カフカ役はオーディションで選ばれた新人の古畑新之さん。
フライヤーの写真で見ていた古畑くんは、髪型がとても個性的だった。
舞台上で見る田村カフカは、白いシャツを着てまだ何にも染まっていない、
まだ何も身につけていない男子という印象で、むしろその普通さに驚いた。
よくある、新人とは思えない堂々とした演技とか、それは全くなかった。
イケメンだとか、意外に上手いとか、そういった雑念に捉われることなく、
この子大丈夫なんだろうかと思っているうちに、とうとう最後までたどりつ
いてしまった。目の前の出来事を一つずつ体験しながらやり遂げていく。
あ、これが田村カフカなのか、これがこの役を演じる古畑くんのやり方だっ
たのか。等身大ってこうゆうこと? という感じ。
カテコの古畑くん、三度目にはける時くるっとこちらを向いてぴょこんと
お辞儀をしたのが微笑ましく、新鮮だった。生まれたての役者さん。
デビュー作でいきなりの主役。そうゆう舞台を見届けられるのは私たち
観客にとっても幸せなこと。古畑新之という役者さんに次回会えるのは
いつだろうか。ぜひまた違う役で見てみたい。

<その他のキャスト>
宮沢りえさんと木場勝己さん、古畑新之さんについては上に書いた通り。

藤木直人さんの大島さんは難しかったと思う。
というより、私自身の問題だ。初演時の長谷川博己さんがあまりに印象深く、
仕草や舞台上で醸成される雰囲気までパーフェクトだったので、どうやら
擦り込みができてしまったらしい。
少年が絶大な信頼を寄せる人物という感じは藤木さんももちろん出せていた
と思うし、それなりにがんばっておられたと思う。
が、ペンを回すところも含め、すべて長谷川さんによる大島さんの踏襲だっ
たので、初演を見た者にとってはオドロキがなかったのがチト残念。

鈴木杏さんによる、さくら。バスで出会った女性であり、旅先でカフカ少年
が混乱した際に助けてくれる重要な存在。サバけていて頼りがいがあって、
存在感もあった。この役も初演時の佐藤さんと大きな印象の違いはなかった。

高橋努さんによる星野さん(再演)。
ナカタさんに対する温かいまなざしは初演時と同じ。二人のコンビネーション
は安心して見られるし、カーネル・サンダーズおじさんとのやりとりも
面白く、再演でも飽きずに見られた。イマドキの長距離トラックドライバーは
どのようなものかわからないけれど、今回はキャップをかぶり、帽子の後ろ
の穴からちょろっと髪の毛を出してさらに個性が増していた。
ナカタさんの最後に接するときの台詞は、まるで自分の父親に言うような
味わいがあったと思う。

柿澤勇人さんによるカラス(再演)。
カフカの分身なのに、古畑新之さんと並ぶとコントラストが歴然。自信ありげ
で、世界のことをなんでも知っていそうで、今にもカフカをそそのかしそうな
誘惑しそうな雰囲気だった。指の動きがとても色っぽくて見とれてしまった。


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海辺のカフカ 観劇メモ(2012年版初演)
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「酒と涙とジキルとハイド」大阪公演千秋楽

2014-05-31 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名  酒と涙とジキルとハイド
劇場   シアターBRAVA!
観劇日  2014年5月25日(日)17:00~18:45
座席   1階P列

<STORY>
舞台は19世紀末のロンドン。
ジキル博士が開発した新薬は、人間を善悪二つの人格に分ける
画期的な薬、のはずだった。
それを飲んだジキル博士は、別人格のハイド氏に変身する、
はずだった。
学会発表を明日に控え、薬がまったく効かないことに気づいた
ジキル博士。追い詰められた末の、起死回生の薬とは?

(劇場の公式サイトより引用)

<キャスト・スタッフ>
片岡愛之助(ジキル博士)
優 香(イブ:ジキルの婚約者)
藤井 隆(ビクター:ハイドを演じる役者)
迫田孝也(プール:ジキル博士の助手)
生演奏:高良久美子、青木タイセイ

作・演出:三谷幸喜 





<リングアウトなしノンストップ格闘喜劇>
初見にして大千秋楽でした。
ノンストップ格闘喜劇にドッカン、ドッカン笑った笑った!
出演者の体を張ったガチ試合。博士の研究室がさしずめ格闘技
のリングに見えた。ドアから出ていったキャストが上から見下
ろしている様子は、まるでリングサイドで待機し、英気を養っ
ているかのよう。
ドタバタだけど気持ちよく、景気よく、惜しみなく、最後まで
顔がひきつることなく笑わせていただいた。
反則技なしのシチュエーションコメディ、素直に楽しかった。
生演奏による音楽、効果音もよかった。

<キャストの印象メモ>
●片岡愛之助さん(ジキル博士)
これぞ片岡愛之助の正しい用法と思うほどハマッていた。
あのすましたおヒゲの榎本武揚の次がこれかよっ(笑)。
三谷さんのアテ書き、さすがでございます!
高名な科学者ながら、オシャレでもカッコよくもなく、意外性
もない、いっしょにいてつまらない人・・・・・・と婚約者に
思われている男をキチンと演じて、それが笑いを誘っていた。
歌舞伎とわかるオモテワザをにおわせることなく、ストレート
プレイに徹していたのも心地よかった。
ビクターと2人ハイジになったときのやりとりに半沢直樹の黒崎
が重なり、会場ウケまくる。
カーテンコールの挨拶では、もっとたくさんの人に見ていただ
きたいから再演したいと言っていた。

●優香さん(イブ)
志村けんさんの番組でもコメディエンヌぶりは披露していたが、
堂々たる初舞台だった。令嬢から豹変したハイドの女バージョン
「ハイジ」の悪態ぶりが可笑しいやら、可愛いやら。
二面性を露呈してしまうのは、実はこの人だったんですねー。
愛らしさと艶っぽさがくるくる入れ替わり、舞台上で魅力炸裂。
ハイド(ビクター)にまとわりついて、けっこう大胆なコトを
しているのに下品にならないのがいい。オペラグラスで覗くと、
汗まみれにも関わらず、小顔でほんとにキャワイイ!
ハイジがイブの本心とすると、本当に好きなのはジキル。自分の
婚約者にハイド性を求めてしまうという普遍的な願望にキュン!
カーテンコールの挨拶では、世界が広がりました、こんなにた
くさんの人に笑っていただいて幸せ、と一瞬声をつまらせたけ
れど、すぐまた元の笑顔にもどった。

●藤井隆さん(ビクター)
空気を一変させる爆発力は、なんといっても藤井さん。
脳ミソがひっくり返って空っぽになるまで笑わされた!
俳優としてハイドを演じてほしいと言われ、当初はモゴモゴ、む
しろ尻込みしていたのに、はじめて衝立てから飛び出した瞬間の
あの破壊力はさすがでゴザイマス!
二人は髪型も顔も全然違うし、最初はアリエナイと大笑いしたの
に、ビクター演じるハイドの迫力にすべて吹っ飛んだカンジ。
イブに惚れられているのはハイド=ジキルであって、ビクターで
はないのに、自分だけがイブを変えられる男だと本気で思い込み、
真剣になるところがだんだん切なさを帯びてくる。
が、それをもくつがえすハイド→ビクター→ハイド→ビクターの
しつこい反復に揺さぶられ、すっかりヤラレてしまいました。
NODA・MAPで見せるお芝居と違って、喜劇というホームでここ
まで観客を掌握、もとい笑握できる実力に脱帽!
カーテンコールの挨拶では、優香ちゃんの初舞台に出られて嬉しい、
と。大阪で千秋楽を迎えられたことも喜んでいた。

●迫田孝也さん(プール)
カーテンコールの挨拶で、たぶん皆さんは僕の名前を知らないと
思います、と言っておられた。すみません、私もその一人です。
でも、もう覚えましたから!
博士の助手プール役として出ずっぱり。あるときは博士の有能な
助手、またあるときは博士の婚約者の身の上相談係。
狂言回しというかお芝居の交通整理としても重要な人物で、もつ
れた話をほぐしたり、解説したり、登場人物の背中を押したり、
他の3人がハイテンションな世界に行きっぱなしにならず、戻る
べき場所としても役割を果たしていた。
今回の舞台に出られた喜びを語る言葉が訥々として、とても微笑
ましかった。



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2013年に観劇した舞台

2013-12-31 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)

観劇メモのある公演は●印、(数字)、からリンクしています。

<1月>
●初春文楽公演 1部(国立文楽劇場)
 寿式三番叟、義経千本桜すしやの段、増補大江山 戻り橋の段
●壽 初春大歌舞伎 夜の部(松竹座)
 操り三番叟、小栗栖の長兵衛
 口上、義経千本桜 川連法眼館の場
●祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~(KERA)(シアターBRAVA!)
●初春文楽公演 2部(国立文楽劇場)
 団子売、ひらかな盛衰記、
 本朝廿四孝
●組曲虐殺(シアタードラマシティ)

<2月>
●二月花形歌舞伎 昼の部「新八犬伝」(松竹座)
 
●二月花形歌舞伎 夜の部「GOEMON」(松竹座)(1) (2) (3)
 
●祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~(蜷川)(シアターBRAVA!)
●ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII(梅田芸術劇場)

<3月>
●太棹の響(御霊神社)

<4月>
●八犬伝(シアタードラマシティ)
●四国こんぴら歌舞伎大芝居 (金丸座)
第一部 鳥辺山心中、義経千本桜、川連法眼館の場
第二部 銘作左小刀 京人形、口上、奥州安達原 袖萩祭文
●第二十一回南座歌舞伎鑑賞教室
 解説 南座と歌舞伎
 藤娘、供奴
●ゴドーは待たれながら(ABCホール)
●4月文楽公演(国立文楽劇場)
 1部 伽羅先代萩、新版歌祭文、釣女、増補大江山 戻り橋の段
●4月文楽公演(国立文楽劇場)
 2部 心中天網島(北新地河庄の段、天満紙屋内より大和屋の段、
 道行名残りの橋づくし

<5月>
●朗読劇 お文の影・野槌の墓(森ノ宮ピロティホール)
●ヘンリー四世(シアター・ドラマシティ)
●木の上の軍隊(シアター・ドラマシティ)

<6月>
●レミング~世界の涯まで連れてって(シアターBRAVA)
●あかいくらやみ~天狗党幻譚~(森ノ宮ピロティホール)(1) (2) (3)
●文楽鑑賞教室(国立文楽劇場)
●上方歌舞伎鑑賞会(松竹座)
 映画「若鮎の巻」 新口村

<7月>
●文楽素浄瑠璃の会(国立文楽劇場)
 御所桜堀川夜討、伊勢音頭恋寝刃
 箱根霊験躄仇討
●七月大歌舞伎 夜の部(松竹座)
 一條大蔵譚、杜若艶色紫
●わが闇(シアタードラマシティ)
●夏休み文楽特別公演(国立文楽劇場)
 妹背山婦女庭訓

<8月>
●坂東竹三郎の会(国立文楽劇場)
 夏姿女團七、東海道四谷怪談

<9月>
●冒した者(神奈川芸術劇場)
●真田十勇士(赤坂ACTシアター)(1)(2)
●真田十勇士(中日劇場)(1)(2)

<10月>
●真田十勇士(梅田芸術劇場)(1)(2)(3)
●ヴェニスの商人(兵庫県立芸術文化センター)
●酒屋万来文楽(白鷹禄水苑宮水ホール)
 新口村
●十月花形歌舞伎 昼(松竹座)
 新・油地獄 大坂純情伝
 楳茂都 三人連獅子
●十月花形歌舞伎 夜 通し狂言 夏祭浪花鑑 (松竹座)

<11月>
●永楽館歌舞伎(出石永楽館)
 伽羅紗 口上
 四変化 弥生の花浅草祭
●11月文楽公演1部 2部(文楽劇場)
通し狂言伊賀越道中双六
1部:鶴が岡の段/沼津里の段ほか
2部:岡崎の段/伊賀上野敵討の段ほか
●MIWA 2回(シアターBRAVA!)
●渇いた太陽 2回(兵庫県立芸術文化センター)

<12月>
●顔見世 夜の部(南座)
 御浜御殿綱豊卿/口上/黒塚/
 道行雪故郷/児雷也
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「渇いた太陽」兵庫公演千秋楽カテコ

2013-12-01 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)


ラストの台詞を味わい、ゆっくりかみしめている間に暗転。
ややあって拍手が起きる。
前日はともかく、今日は誰にも邪魔されずに最後まで観られた
ことに感謝した瞬間。

カーテンコール最後は浅丘さんと上川さん、二人だけで再登場。
(他の出演者も呼ぼうと試みたのに未遂に終わったカミカミ。)
観客の顔を一人ひとり、あの大きな目で見てくださる浅丘さん。
笑顔が素敵な上川さんは浅丘さんをエスコートしつつ、上手に
消える手前で振り返り、右手を胸の下に当て一礼して袖の向こう
へと。拍手で送り出す私たち。

挨拶の言葉はなくても舞台と客席が響き合えた時間。
アコースティックなお芝居ならではの静かであったかくて、そ
して熱い余韻で胸いっぱいの兵庫千秋楽でした。


●このブログ内の関連記事
「渇いた太陽」公演チラシ
『渇いた太陽』と、ぞわぞわの理由。
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「MIWA」大阪初日(ネタバレなし)

2013-11-29 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名  「MIWA」
劇場   シアターBRAVA!
観劇日  2013年11月28日(木)19:00
座席   1階V列



<キャスト・スタッフ>
宮沢りえ:MIWA
瑛太:赤絃繋一郎(幼恋繋一郎)
井上真央:マリア
小出恵介:最初の審判/通訳
浦井健治:ボーイ
青木さやか:負け女
池田成志:半・陰陽(マスター日向陽気)
野田秀樹:オスカワアイドル
古田新太:安藤牛乳
ほか

脚本・演出:野田秀樹    
美術:堀尾 幸男
照明: 小川 幾雄
衣裳:ひびの こづえ
選曲・効果:高都 幸男  
ほか




ずっと観劇遠征をしてないので、野田さんの<新作>をナマで観る
のは本当に数年ぶり。
今回は存命にして伝説の人物“美輪明宏”を題材にした作品。しか
も、宮沢りえさん主演というので、かなり楽しみにしていた。
<出鱈目の美輪明宏物語>を書くというのが野田さんの戦術らしい。
妄想世界だから「MIWA」なのだと。

昨日、大阪初日の舞台を観た。
鮮やかだった。その出鱈目加減の塩梅のよさが。
さっき戦術と書いてしまったけれど、脚本・演出家も出演者も全員
戦っている、戦いながら真剣に出鱈目を生きている。
そんなふうに見えた。
だけど観終わってみると、結局あの金髪の美輪明宏そのひと。
まったくあのビジュアルの通りの展開で、着地だったわ~と思う。
昭和の時代とこの国の歴史を背負ってずしり重く濃厚なのに、見た
目は甘く麗しく、まったくかろやかでさえある。これが愛なのか。

りえさんはじめ、とにかく出演者のパワーが尋常ではない。
どちらかといえば、平均年齢を上げている人たちが凄い。
そんなわけで、幾つかのキーワードと引っ掛かりのあるビジュアルを
携えて、その検証を兼ね明日もう1回観ます!

大阪は初日からスタオベ。(前方の人が立つと見えないので徐々に
立っていった感も若干ある。)
カーテンコールでちょこんと正座して、お茶目に座礼する野田さんを
久しぶりに見た。うん、たぶん贋作罪と罰以来だ。


観客の一人として、他の観客にお願いしたいことがある。
ラストシーンで芝居が終わったら、2秒は間を与えてほしい。
終わった瞬間、間髪入れず即座に拍手はやめてほしい。
句読点の「。」を自分で入れさせてくれ。
せめて1秒待ってください・・・後生だから。


<自分メモ>
ゲンズブール「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」。
背板に入っている十字架。りえちゃんの背中。
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「ヴェニスの商人」兵庫公演

2013-10-19 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)

公演名  彩の国シェイクスピア・シリーズ第28弾「ヴェニスの商人」
劇場   兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
観劇日  2013年10月14日(月祝)12:30(休憩はさんで2幕)
座席   B列

久々に観るオールメールの舞台。前回もやはり猿之助さん(当時は
亀治郎さん)が出演した舞台『じゃじゃ馬馴らし』だった。
オールメールといえば喜劇が多く、いつもドタバタ、アハハ~と笑って
いるうちにおめでたいエンディングを迎える感じ。
だけど、今回は違っていた。
コワイ~~~!! なのに可笑しい。

観終わってすぐ、体に力が入っていたことに気づいた。
シャイロックのものすごいお芝居に圧倒されたらしい。
カーテンコールでは早い段階からスタオベに。客席の隅々にまで視線
を行き届かせる猿之助さんの眼力にひれ伏しそうになった。
いやはや!



<キャスト/スタッフ>
市川猿之助:シャイロック     中村倫也:ポーシャ
横田栄司:バサーニオ        高橋克実:アントーニオ 
大野拓朗:ジェシカ/シスター   間宮啓行:グラシアーノ/僧侶
石井愃一:老ゴボー/テューバル/僧侶/シスター/高官       

青山達三:ヴェニスの侯爵/僧侶/モロッコ大公の従者
手塚秀彰:モロッコ大公/僧侶/高官     
木村靖司:アラゴン大公/僧侶/シスター/高官
大川ヒロキ:ソラーニオ/僧侶   
岡田正:ネリッサ 
清家栄一:ランスロット・ゴボー/僧侶/シスター 
新川將人:サレーリオ/僧侶
鈴木 豊:ロレンゾー/シスタ   
福田潔:ポーシャの召使い/僧侶/楽師/シスター/高官
市川段一郎:アントーニオの召使い/バサーニオの従者ほか
鈴木彰紀:ステファノー僧侶/シスター/バサーニオの従者ほか
隼太:バルサザー/僧侶/シスター/高官
坂辺一海:リオナード/ポーシャの侍女/アラゴン大公の従者ほか
内田健司:僧侶/モロッコ大公の従者/ポーシャの侍女ほか
白川大:僧侶/モロッコ大公の従者/ポーシャの侍女ほか
丸茂 睦:楽師(アコーディオン)/僧侶

演出:蜷川幸雄  
作:W・シェイクスピア  翻訳:松岡和子


<あらすじ>
舞台は貿易都市ヴェニス。ある日、貿易商を営む裕福な紳士アントーニオ
のもとに、年下の親友バサーニオが借金の申込にやってくる。彼は才色兼
備で大富豪の令嬢であるポーシャにプロポーズをしようとしており、その
ための元手をアントーニオに頼ってきたのだ。生憎と全財産が海を渡る船
の上にあったアントーニオは、自らを保証人として借金をするようバサー
ニオに勧める。ところがバサーニオが借金を申し込んだのは、よりによっ
てアントーニオの天敵とも言うべき、高利貸のシャイロックだった――。

(公式サイトより引用)


<シャイロックといえば肉1ポンド>
小学生の頃に名作文学全集で読んで以来の『ヴェニスの商人』。当時、
人生経験のない10歳児の頭ではこんなコワイ話だとわかるはずもなく。
肉1ポンドについての痛快な裁きに、ただただスッキリした気分で読み
終えたように思う。だから、なおさら。

エエーーーッ! こんなあからさまな人種差別の話だったっけ?
(あるいは、私が読んだ本は子供向けに話が端折られていたのか?)

前段スッ飛ばして・・・・・・
裁判のシーンでは、高官たちが舞台の上から客席に降りてきて、私たちと
同じように椅子に腰掛け、同じ目線で舞台上のシャイロックの言い分を
聴き始めたので、たちまち観客全員が傍聴人になった。

ユダヤ人の商人で金貸しで、表情は暗く、どこか卑屈な顔つきの男。
そんなシャイロックを演じる、ただならぬ風貌の猿之助さん。
「とにかく証文の通りにしてほしい!」の一点張り。
期日までにお金が返せなかったのだから、約束通りアントーニオの心臓
の近くの肉を1ポンドもらう、と。

シェイクスピア劇の中にいて、あえて歌舞伎の口跡や見得を使って緩急
自在にふるまう猿之助さん。それがヴェニス人にとってのユダヤ人であ
り、だからこそ猿之助さんが演じる意味があるのだと納得できる。

裁判官(に扮装したポーシャ)の名裁きは素晴しいとしても、その後が
実はもっと残酷だった。いや、一見フェアと思えるその裁きにも用意周到
な伏線があったように思う。何度もシャイロックに念押しした箇所を逆手
にとり、人の命を奪う意図があった者には財産没収。
そのうえ、キリスト教に改宗せよ!と言い渡す。

ひょえ~!コワイよ~。なんて横暴な!
(と、観劇時は思っていた。でも後から考えると、これがシェイクスピア
の生きた時代なら、ヴェニス市民の傍聴人なら、もっともっと見せ物的で
ここは拍手喝采になっているのかも、と思う。)

改宗せよとまで言われ、十字架を首に掛けられ、愕然とするシャイロック。
さっきまで大きな存在感を放ち、自在に泳いでいたシャイロックが急にす
ぼんだように力を落としている。(それでも劇場中の空気は掌握したまま。)
敗北感と憤りと屈辱と憎悪と、何よりも人間の尊厳を奪われたことによる
苦痛がにじみ出て、猿之助さんの表情はとてもリアルだ。
やがて静かに舞台を降り、上手側の客席通路をゆっくり歩いて帰る姿が、
シャイロックにとっては逆異端と言えるイエスに見えてしまった。
皮肉なことに。
十字架こそ背負ってはいないが、傾斜と段差のある長い通路がゴルゴダ
の丘に向かう坂に見えた。一歩進んでは止まり、また一歩、一歩・・・。
顔には汗、その目には涙。怒りはもう消え、すっかり諦観に塗り変わった
シャイロック猿之助さんの顔。
時間をかけて退場する彼に観客は拍手をおくり続けた。
このシーンと、最後に再登場して首にかけられたロザリオを手に握りしめ
る演出のせいだと思う。この話が人種差別、異端裁判の話だと思ったのは。

<やっぱり楽しいオールメール>
重苦しい気持ちから救ってくれるオールメールの喜劇性。
ポーシャとネリッサのコンビには特に癒された。
中村倫也さんのポーシャ、ほんとうにきれい~!
私には「八犬伝」の犬阪毛野の印象が強いけれど、蜷川さんの舞台ですで
に女役デビューしていたことを知りナットク♪
ドレスのときはふくよかで、裁判官に化けたときはスリムに見えた。
男に扮装した時も男っぽく見えず、可愛らしく見えたのは不思議。

バサーニオからの求婚で、箱を選んでもらっている最中のポーシャの落ち
着かなさが可笑しくて! バサーニオと、その向こうにいるポーシャの顔
が同時に見える席だったので、心配そうに後ろから見ているその表情が
あまりにいじらしく健気で、ついウルウルしてしまったよ。
ジェシカの大野拓朗さんもとても可愛いひとだった。
だけど、娘がここまで父を突き放していいんだろうかと心配になった(笑)。

バサーニオ役は、いつも艶っぽい横田栄司さん。
爽やか・・・ではないけれど、自分の恋に忠実に行動する若者役を演じて、
ひじょうに新鮮だった。一方、親友のアントーニオとの男どうしの友情を
見せつける場面では、友を裏切らない誠実さがリアルに伝わった。
アントーニオを演じる高橋克実さん。友を信じ、友のために死んでゆくこ
とも覚悟した表情がとても素敵だった。
西洋的男どうしの友情はよくあるパターンだけれど、今回はなんだか友情
の美しさまでがキリスト教礼賛の文脈で語られているような気持ちになった。

と書きつつ、やっぱりオールメール劇は楽しいのだった♪
東京みたいにライブが楽しめたらもっとよかったんだけど。劇中のアコー
ディオンの生演奏はとても心地よかった。

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真田十勇士(6)大阪公演

2013-10-12 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
先日書けなかった感想などツラツラ。

幸村が家康に向かって言う。
「私だけの力ではない。十勇士がいたからだ。」
ほんとにこの作品には、日頃の観劇で私がお目にかかれない人々
がたくさん出演していた。世代も得意分野も違う個性が集結して
できあがった舞台。だから面白かった~。

4回観劇の途中からは、特に若い役者さんたちの変化を見るのが
楽しみで、すっかり応援モードになっていったように思う。
カッコイイ~。面白かった~。それで充分。以下は蛇足。
自分用メモだけど決定的なネタバレあり。DVD観劇の人は注意!



<キャスト・スタッフ>
上川隆也:真田幸村       柳下 大:猿飛佐助
倉科カナ: ハナ・花風     葛山信吾:霧隠才蔵
山口馬木也:服部半蔵      松田賢二:由利鎌之助
渡部 秀:真田大助        相馬圭祐:豊臣秀頼
小須田康人:大野修理亮治長   粟根まこと:根津甚八
植本 潤:望月六郎        小林正寛:三好清海入道
俊藤光利:大野治房      佐藤銀平:三好伊佐入道
玉置玲央:穴山小介      三津谷 亮:筧十蔵
賀来千香子:淀の方      
里見浩太朗:徳川家康

脚本:中島かずき       演出:宮田慶子
主題歌:中島みゆき「月はそこにいる」
音楽:井上鑑 feat. 吉田兄弟



<徳川という川>
徳川を時代の大きな流れとし、うねって押し寄せる大川になぞら
えた舞台セット。いつ見ても凄かったー!
ただの八百屋じゃない。2段坂になって、横にも傾斜が付属。
ほとんど滑り台だよ。
その上で走ったり、回転したり、倒れたり、上ったり、下ったり、
滑ったり。一輪車がかけめぐったり!
見ているほうは楽しかったけれど、役者さんたちへの足腰への負
担は相当なものだったと想像する。
家康さまが坂を下りるときは、気をつけて、といつも念じていた。

で、大きな川。徳川。
負け戦とわかっていながら、その大川に挑む幸村の覚悟が繰り返
し台詞に出てくる。
「巨大な川に打ち込む一本の杭」
「徳川家康という巨大な存在の前では、小さな鎌をふりかざす
螳螂にすぎないのかもしれない」
「一個の錐となって徳川の本陣に穴を穿つ!」
「この世の流れは徳川にあろうとも、武士として一片の意地は
通してみせる」
(中島かずきさんの戯曲『真田十勇士』より引用。以下同様。)

歴史の敗者側の声を代弁する台詞は、中島かずきさんのこれまで
の戯曲にもあったが、今回はこの台詞に○印。
幸村が息子の大助に語る、ええ感じの場面。
「だが、黙って滅んではいけないのだ。大きな川は時として、そ
の流れに自分の行いすら見失う。杭を打ち込み、その行いが痛み
を伴うことを教えてやらなければ、流れは暴走し傲慢となる。」

これは幸村というか、作家からのメッセージとして受け取った。
ただ義を貫いた男としてのカッコよさばかりではなく、歴史には
こういう側面もあるし、もちろん現代にも当てはまることだしね。

そして、その想いが今回の真田の秘策につながるところが凄い!
「負けて勝つ」。中島さんによれば「一矢を報いる」。
ひらたくいえば、一発逆転!
その秘策は・・・猿飛佐助がある人物の血を継いでおり、佐助を
海外に逃がすことで希望をつなぐ。
そのとき共に落ち延びた男女の名は佐助とハナ。時が経ち、海外
からやって来た黒船の名が「サスケハナ」号。
舞台で見てヘエエエ~~~!! ほおおお~~~。
いやー、なんてドラマチックな。なんて夢のある♪
あとからネットでその名前が事実だと知ったときはゾゾゾ~。
「サスケ Susque」はネイティヴアメリカンの部族名、「ハナ
hanna」は川の意味らしいけど、佐助ハナでもええやん、ねっ!
猿飛の名前の由来までもっともらしいし、何より由利鎌之助が
そこを語る場面がええんよねー(涙)。


<真田の意地>
幸村は、父親から「真田の意地」を託された男。
次男として、真田の本流から離れてまで貫かなけばならないその
意地とは、豊臣の血を守ること。
それが大坂城落城を目前に潰えようとしていた。そんな折に家康
によばれ、暗殺の機会があったにも関わらず未遂に終わる。
ここ、殺陣に匹敵する緊迫感ある場面だった。家康と幸村の本当
の一騎打ちはここだったのかも。
家康の器の大きさ、論理の正しさに圧倒される幸村の無惨なこと。
自分の首を差し出す家康に、鍔に手をかけたままどうしても刀が
抜けない幸村のブルブル震える手に目が釘付け。

二人の勝負服も見どころだった。
家康は金ぴかゴージャスでボリュームのある衣装。幸村は刀の鞘
とよく似た赤の(炎メラメラのような)模様の長羽織。

自陣に帰ったあとの幸村、自虐的な言葉が口をついて出る。
家康に完敗したことを十勇士の前で吐露するときの幸村の涙。
前列で観たときは、上川さん、いつも本物涙だった。

再び意地を取り戻せたのは、佐助のおかげ。気弱の幸村に佐助が
噛み付いたことからだった。意地を守ったのが自己完結ではなく、
十勇士が関わることで成就してゆくプロセスがいい。
何者でもなかった男が名を残せたのは、真田十勇士がいたから♪
十勇士たちは倒れながら満足気に見えた。
倒れながら佐助の名を呼んでいたのは、鎌之助と根津甚八。
鎌之助は当然として、甚八にとっても佐助は希望だったんだなと。


<吠える幸村>
一番書きたかったことは、やっぱりこれ。
幸村のあの地の底から吠えるような声がまだ耳の奥に残っている。
大きな月の前で上川さん演じる真田幸村が吠えていることについ
ていろいろ思いをめぐらしてみた。

「真田幸村・・・日本一の兵よ」
舞台では徳川家康に『日本一の兵』と言わせている。
ことに大阪千秋楽楽での里見さんの台詞はその声といい、調子と
いい、まことに味わい深かった。真田幸村への最大限の敬意をこ
めた大御所ならではの台詞の響かせ方に涙が出た。
敵味方なく、勝ち負けを越えて純粋に勇者を讃える言葉として。

それにしても、日本一の兵(ひのもといちのつわもの)とネット
検索しただけで真田幸村の名が出てくるのには驚く。
日本一の兵とは、圧倒的に秀でた剣術や、超強靭な肉体を備えた
スーパーサムライを言うのではなく、執拗で、粘り強く、己が信
じるもののために突き進む男の意気地のことを言うのだなと、舞
台を見て感じ取ることができた。
とてつもなく大きな相手に生身で立ち向かう男。
倒れてもまたよみがえり、愚直なまでに吠え、戦い続ける男。
大楽を見終えたいま、あの最後の太い声が日本一の兵を象徴して
いるように思えてならない。
カッコイイイイイ~殺陣や、ウツクシイイイイ~走り姿はもちろん
たっぷり目に焼き付けたうえで、今回は泥臭く、人間臭く、月の前
で吠え続ける男の姿がマイ真田幸村としていつまでも輝き続ける
ことになりそうだ。
中島みゆき「月はそこにいる」とともに。

手に持った刀を天にまっすぐ伸ばした男の姿はシルエットとなり、
月と一体化する。そこから仰向けに倒れて、最期。
ファン的にはSHIROHがチラと頭をかすめた瞬間だけど、階段を
昇るはずはなく、もう二度と再び起き上がることはなかった。

ついでに。
友人に言われて気づいたのだけれど、あの最後の立ち回りで幸村
に突かれ、後ろ向けに倒れる敵兵がいた。
傾斜を考えるとものすごい角度でのけぞっているため、滞空時間
も長くスローモーションのように見え、幸村の散り際をよりドラ
マチックに引き立たせていた。一度サイド席から観てみたかった。


<日替わりネタ>
幸村編 清海たちのごつい手で作ったのかと思うと
●東京9月7日昼  
「心がガッサガサになる」
●名古屋9月23日  
※長過ぎておぼえられず
●大阪10月5日夜 
「御堂筋の端から端まで渡らないといけないぐらいげんなりする」
●大阪10月6日
ゴホンと咳払いしてから関西弁のイントネーションで
「ごーごーいち(551)がないとき!みたいになる」
(551蓬莱の豚まん関西ローカルCMの真似。わかる人のみ大ウケ!)

望月六郎編
●大阪10月6日
直前に真田大助に向かってガンバレ~と言っておいて
「耳をすませば客席から、がんばれ、がんばれの声援が聞こえる。
がんばれ~!」
植本潤さん演じる六郎は大助の後見人というか、母代わり?(笑)
いつもくっついて成長を見守っていましたね♪ ちなみにこの日、
声援をおくっていた一人でした、私も。


各キャストについてはここに追記予定なり。(書けるかな??)



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禁を破る!の巻。 2013/9/9
真田十勇士(1)東京公演・感想未満
真田十勇士(2)名古屋千秋楽カーテンコール
真田十勇士(3)名古屋公演
真田十勇士(4)大阪公演 前楽
真田十勇士(5)大阪公演 千秋楽カーテンコール
真田十勇士(6)大阪公演


●上川隆也×中島かずき脚本「蛮幽鬼」2009年
新感線2009秋興行『蛮幽鬼』
「蛮幽鬼」大阪公演 観劇メモ(1)
「蛮幽鬼」大阪公演 観劇メモ(2)
「蛮幽鬼」大阪公演 観劇メモ(3)
「蛮幽鬼」大阪公演 観劇メモ(4)
蛮幽鬼、自己完結(照笑)。
「蛮幽鬼」@ゲキ×シネ観賞メモ
蛮幽鬼DVDが届いたよ~♪
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真田十勇士(5)大阪公演 千秋楽カーテンコール

2013-10-08 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名  真田十勇士
劇場   梅田芸術劇場メインホール
観劇日  2013年10月6日(日)13:00
座席   3列

この日の大阪の最高気温32.7度。
暑かった~~~!!
上川さんがカーテンコールで言ってたこと、そのまんま。
「稽古が始まったのは7月。それから3カ月。いまは秋ですが今日までが
我々の大阪夏の陣でした。この舞台が終わるまで夏の陣は終わらない。
そう思ってやってきました」(※言葉はあやふや。全然この通りではあ
りません。)
出演者&関係者全員の夏を引っ張ってるんやから、そら暑いはずやて。

私はといえば、この暑いのに着物なんか着て~と笑われたけれど(たし
かに自分でもアホちゃうっと思ったけど~笑)大阪入りして戦っている
人たちに敬意を表したつもり。真田の意地と舞台の熱気に共鳴した一人
として、大楽に参戦する心意気みたいなものかな、と。
(色も真田の赤で)その分、し~っかり楽しませていただきましたよ。

「公演は終わりです。あとは皆さんの心に残るだけ。たとえDVDが出て
も(ん?早くも宣伝か?)、そのDVDをお買い求めいただいたとしても
(ん?やっぱり宣伝か?)、今日の舞台は今日だけのものです。」みた
いなことを上川さんが言ったとき大拍手だった。

ア~ン、だからその日の記憶をいつまでもとどめておきたい。なのに
凄い速さでボロボロこぼれていくよ。



最初にもどろう。
1回目のカーテンコール、若者たちがカワイイの。
渡部秀くんと相馬圭祐くんは、上手と下手から近づいていき、目の高さ
で拳と拳のハイタッチ。おお、二人とも笑顔がさわやか~♪
柳下大くん。両手を体の横に伸ばしたまま下のほうでガッツポーズをす
るんだけど、大楽ではいつもより上でひときわ大きなガッツポーズ。
うんうん、わかりやす~い♪
そういえば、ある人がなかなか現れないので皆んなアレ?という顔。
ややあって、里見浩太朗さんが登場された時は大拍手だった。
上川さんはいつものように里見さんと賀来さんとプチハイタッチの後、
握手をしてたような・・・。
(こんなに素敵な笑顔を見ながら、なぜか涙があふれてしまったのは、
観劇中に幸村さまから一度も視線をもらえなかったからではありませぬ。
「月はそこにいる」の曲が流れていたから、たぶんまださっきまでの
余韻の中に漬かっていたせいだと思う。自分でも不思議な気持ち。)

2回目のカテコで上川さんの「これで我々の夏の陣が終わりました。
無事ここまで来ることができましたのもひとえに我々の努力の賜物と
・・・」で笑いを取るお約束の挨拶♪
いやいやと首を振りながら笑って打ち消し、「皆さまのおかげです。目
に見えないところにいるスタッフの皆さんにも拍手をお願いします」
とあっちにもこっちにも拍手を・・・。
全員はけた後、舞台のてっぺんまで素早く駆け上がり、前楽ではトンと
拳で力強く胸を叩き、大楽では拳を突き出したまま、自分の左から右へ
扇形に移動させ、トンを胸を叩き、勢いよく上手にはけてった。

さあて。

3回目のカーテンコールにスタッフの合図でこの旗を振ってください、
と客席チラシに挟み込まれていた六文銭の赤い旗。
(主催者が用意したサプライズ演出だった。実はシマッタ~と思った。
これが自前だったらどんなによかったかと。)
とにかく振りました、フリフリフリフリ振りましたっ! 振ってるから
拍手できないの(笑)。拍手しなくても出てきてね~~♪
上手の上のほうから再々登場した上川さん、ビクッとしたかと思うと、
じゅわあ~っと笑顔になり、目を大きく見開き客席を見渡し始めた。続
いて出てくる出演者たちにもあっちを見てと促す。
上手から、下手から、驚きと笑顔とウルウル目となんともいえない表情
で舞台がどんどん埋め尽くされていき・・・。
個人的には、特に松田さん、倉科さんの表情が印象に残っている。
その様子を見守った私たちは、このうえなく幸せなひとときだった。
下に降りてきながら、両てのひらを胸の前でガシッと組んだ上川さん。
(こんな反応はじめて見た。このときの感慨深げな表情は見た人だけの
胸のなかに・・・。)
こんどは舞台上の皆さんから客席へ拍手が。完璧な一体感。
同じその場にいられて本当によかった~と感慨に浸ってしまった。

里見さんの挨拶というか、印籠を持つ手がナマで見られたのはこのタイ
ミングだったっけ? お茶目な里見さん。

再び上川さん。
「今回は全公演、誰一人欠けることなく最後まで終えることができました。
そして・・・」と言いかけ、急に低い体勢で前方まで歩き、舞台の床にあ
る集音マイクに口を近づけヒソヒソ声で、「もしも再演になったら」と
言ってから元の立ち位置に戻り、ここにいる全員誰一人欠けることなくまた
舞台に立ちたいと思います。今日来られた方は1900勇士誰一人かけること
なく観に来てください!」
ひゃあ~、さ、さ、再演? てゆうか、マイクをわざわざ使ってヒソヒソ話
をしちゃう幸村さんキャワイイイ~♪

「五十がらみのおじさんが言ったので、次は若い人に。」
僕?と、それを受けた柳下大さん。「頭の中真っ白です」とかなりビックリ
した様子。
「こんな大舞台で31公演やらせていただいて幸せです。僕、ここに出てい
るほとんどの人と絡むんです。そのたびに皆さんに助けていただきました。
僕一人ではできませんでした。ありがとうございました」。
(柳下さんはほぼ出ずっぱりで、全方位こなさなければならず、難役だった
と思いますが立派にやり通せました。本当におつかれさまでした。)

言い忘れてた、と里見さん。上川さんの口がナンデゴザイマショウ、と動く。
「徳川家康は水戸黄門の孫です」。
ほほう、という顔と拍手の上川さん、全く想定外の展開に若干不安の色が。
百合の花と薔薇もいましたよ、となにげに仕切る里見さん(笑)。
(このあたり脳内メモリ残量ほとんどなし。記憶ムチャクチャ。)
薔薇の賀来千香子さん。
里見さんのほうを向いて「助さん」、自分を指差し「かくさん!」(笑)
すかさず拾って拍手する上川さんもエラ~イ。
「このような舞台に出させていただき、皆さんと素晴しい時間を共有でき
て幸せです」と、集音マイクに近づき「もしも再演になったら」と言って
戻り「よろしくお願いします」。
百合の花の倉科カナさん。
「舞台は好きではありませんでした。でも、今回やってきて舞台って楽し
いものなんだと思えました」とここまで言って涙があふれ、何も言えなく
なってしまった倉科さん。持ち直して前に出ていき、集音マイクへ。
「もしも再演になったらよろしくお願いします」
集音マイクが願掛けの神社状態~。

まさかの、もっかいカテコ。
「しつこいです!」と上川さん。
拍手を求める合図のあと、チャッチャチャチャでストップ。
「皆さんにお願いがあります。とっとと帰ってください!」

やったー!とうとう言ってもらえました♪
やっぱり、これを言ってもらえないと帰れないのね、アタシたち。
困ったもんだ。
おかげで安心して劇場を出ることができました。


舞台の感想も少し書きたいけれど、またあらためて!



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真田十勇士(1)東京公演・感想未満
真田十勇士(2)名古屋千秋楽カーテンコール
真田十勇士(3)名古屋公演
真田十勇士(4)大阪公演 前楽
真田十勇士(5)大阪公演 千秋楽カーテンコール
真田十勇士(6)大阪公演
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真田十勇士(4)大阪公演 前楽

2013-10-05 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名  真田十勇士
劇場   梅田芸術劇場メインホール
観劇日  2013年10月5日(土)18:00
座席   6列

大阪へ入城した真田十勇士をお迎え観劇~!!
劇場の外で幸村さん(のポスター)とのツーショットを撮って
もらい、きげんよく入城、もとい、入場。
今回は角度的に遮るものがない、とても見やすい席だった。
まったくとりとめないけど、今日感じたことなど。

吠えておられました。幸村さま。
いや、唸っているんだか、うめいているんだか、もう判別不可能。
とにかく上川さんの太声ファンにはたまらない、一段と野太い声。
幸村バージョンの太声が聞けるのは、ついにあと1回きり。
今回の幸村さまには、SHIROHをほうふつとさせる台詞や体の動き
があったり、過去の舞台を思い出すシーンがあり、そのあたりも
数倍返しで楽しめてしまう。

東京、名古屋、大阪と1回ずつ見て、個人的には真田大助がすっ
かり幸村の息子になったように感じ、(親戚のおばちゃんのよう
に)うれしくなった。それは雰囲気だったり、ほんとうに何気な
いものだけれど。
前楽の渡部秀さん、突き抜けた感があり、すごくよかったと思う♪

家康さま、ほんとに不思議な存在感のひと。愛さえ感じる。
ただの敵役ではないから、見ているほうも困る(笑)。
里見浩太朗さんだから出せる味わいなのでしょうね。
魅力的なお方です。

カーテンコールでは笑顔だけじゃなく、何人もの出演者が神妙な
面持ちというか・・・泣いておられたような。

カーテンコールに並ぶ男前トリオ。(イケメンとは言わない。)
霧隠才蔵の葛山信吾さん、服部半蔵の山口馬木也さん、由利鎌之助
の松田賢二さん。三者三様にしぶさが光る。

ハナ、花風。まるで別人のように演じ分ける倉科カナさん。
花風のときはほんとにカッコイイ。
ハナさんの笑顔には私もほんわか~、あったかくなる。
そして、特にカーテンコールの笑顔は格別♪

明日もまいります。10月、大坂夏の陣
(※最初、秋の陣と書いていたけれど大楽で幸村さまが「今日までが
我々の夏の陣です」と言っていたので書き換えました。10月6日夜)





<ネタバレ×ネタバレ>
十勇士に関係ある通路の使い方は大阪バージョン?
前楽では後方席の人にうれしい演出になっていた。
11人が左の扉から入ってきて横通路に一列に並び、そのセンターで
幸村さまが檄を飛ばす。その後、幸村を先頭に全員が左側縦通路を通っ
て舞台へと駆け上がる。

十勇士が次々と倒れてゆく場面。
それぞれ最後に何かを言っている、らしい。(東京公演の初期にはな
かったそうだ。)
私が気づいたのは大阪が初めて。真田大助が「父上っ」と言ったのを
聞いたとき。その後、才蔵のシーンでは「殿!」と。

<自分メモ>
真田の「意地」を見せることを父から託された男。
自分で自分のことを「真田の次男坊」と言うときの言い方が印象的。
本来は信念であったはずの言葉が、こんどは幸村を苦しめている。
そして再び「意地」の回復。
この日の観劇は脳内に「意地」がこびりついていた。



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真田十勇士(4)大阪公演 前楽
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真田十勇士(3)名古屋公演

2013-09-28 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名  真田十勇士
劇場   中日劇場
観劇日  2013年9月23日(月祝)12:00
座席   17列

ネタバレ注意!!!
ただ、ストーリー上の決定的なネタバレは避け、ディテール
や座席からの見え方などについてこまごまと。
最後の展開を知ってから、そういう目で登場人物を見直すと、
また違った味わい方ができた。


<後方席だから見えたこと>
名古屋ではオペラグラスなしで後方席からの観劇。
東京で見たときは前列だったため、たくさんのことが見えて
いなかったことがわかった。
特に照明。森の中の鬱蒼とした感じが照明で描かれていた。
月光は白っぽい光とは別に、舞台全体を月色に染め上げる
パターンがある。戦場でのピンスポットの使い方も。
霧(スモーク)が広がってゆく様子もよく見えた。

幸村&十勇士の見得。決めポーズ。
前列だと重なってわからなかったが、引いて眺めるとすごく
きれいだった。それぞれが立ち位置におさまった後、順番に
各自のポーズを見せ、全員ピタッと決まる場面。
歌舞伎で言う「絵面の見得」になっており、ぞくっとする。

途中、十勇士たちが客席に現れるシーンは後方席の楽しみ。
下手から登場して通路を横に走り、その後、縦に駆け込ん
でくる。幸村公は上半身前傾姿勢のまま、縦に重心移動す
ることなく滑るように素早く駆け抜ける。う、うつくしい!
通路をピシッと直角に曲がり、センター前方でクルッと後ろを
振り返り、ひとこと言って十勇士たちを鼓舞する。
ここは前列では見えなかったので、この日は幸村さまに集中。
なので、十勇士の様子はすみませんが全く記憶なし。
幸村以外の勇士たちは上手からも登場したのか? 
そして、縦通路は3つとも使われたのか?(笑)

<劇場の大きさについて感じたこと>
東京公演は前列で見たせいだろうか。迫力満点だった。
特に印象に残ったのが三津谷亮さんの特技を生かした筧十蔵
の殺陣(?)。劇場のコンパクトさゆえのハラハラ感もあり、
新鮮なパフォーマンスに引きつけられた。
名古屋では筧十蔵のシーンで会場から拍手が起き、明らかに
東京のムードとは違う、ショータイムになっていた。

ただ、名古屋では劇場サイズが大きくなったからか、全体に
スピード感が若干落ちたように感じた(体感速度:当社比)。
台詞と台詞の間合いも赤坂ACTシアターサイズなのかな、と。
いや、はるか後方席から眺めていたせいかもしれない。
梅田芸術劇場メインホールは中日劇場と同じくらいだと思う。
どうか台詞の隙間は、出演者が醸す気配や存在感、濃密な
感情のやりとりで埋め尽くされますように。

<母と子>
幸村さまの出ないシーンでは、淀と秀頼に佐助が加わった
くだりがかなりツボ。
賀来千香子さんは『前田慶次』でも気性の強い女性役を好演
されていたけれど、今回も期待通り。
相馬圭祐さんは初見だけれど、役の性根をよくつかんでおら
れるように思う。大阪でもこの母子を楽しみにしたい。
佐助は起伏のある役で盛りだくさん。柳下大さんは本当に演
じがいがあると思う。

<幸村さま>
赤のロングの陣羽織が似合うなあ、幸村さま。
衣装は何種類あるんだろう。どれも派手でいい!

夏の陣での幸村の最期のシーンは、後方席で全体が見渡せた
から見えた風景だったのかも。
家康との直接対決・・・どう考えても若い幸村が優位だと思
えるのに、毅然とした家康の気迫に気圧されてか、混戦の
さなか家康を取り逃がし、味方もどんどんいなくなる。
激しい立ち回りのシーンを経て、一人になった幸村。まわり
には人の気配がない。手負いなのか自分の腕の血をなめる
あたりから凄惨さが立ちこめる。
(大阪公演を見ていたら、血をなめるのはもっと後だったこ
とがわかった。10月7日追記)

右膝を折り曲げ、左膝を立て、幸村がその場に腰をおろした瞬間、
パッと神社の風景が舞台上に見えた!(ように思えた。これが
演劇の素晴しさ、自由さ。)
お堂を取り囲む木々。傍らの木の下、少し斜面になった場所
でしばし休む幸村。一瞬の静寂があり、追手に気づく。
ここから先は・・・・・・月、月、月とともに。
大阪公演では悔いのないようじっくり見届けたい。

あの主題曲がかかり、赤みがかった大きな月が昇り始めた時
から、なぜか私にはまるで映画のように見えてくる。
東京では嗚咽、名古屋ではちょっとした感慨があった。

それぞれのキャストについてはまた次回、大阪公演の際に。


東京では一人で観劇し、誰にも会うことはなかったけれど、
名古屋ではいつもの仲間たちにたくさん会えた。
終演後のオフ会も盛り上がったし、観劇オフらしい濃厚な
ひとときでした。また大阪でねっ!
コメント (2)
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