星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

何日君再来  観劇メモ

2007-05-29 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)



公演名  「何日君再来」
劇場   シアター・ドラマシティ
観劇日  2007年5月26日(土) 13:00開演
座席   9列


最初に公演タイトルを見た時、胸がきゅんとした。
かなり前に、中薗英助さんが書かれた労作『何日君再来』を読んでいたから。
(著書の中では「リリー・マルレーン」についても触れられていた。)
今回の出演者に筧さんの名前を見つけた時点で即観劇決定!
でもそれが、キャストの妊娠会見がらみで一躍話題の作品になるとは(笑)。

幕があいてすぐ、筧さんのいわくありげな目に完全に取り込まれてしまった。
歌もダンスもあって、おもしろくてカッコよくて、筧さん出演作品らしい高
熱系ハイテンションの世界が堪能でき、おまけにシリアスなメッセージも
ギュッと詰まっている。
つか作品と第三舞台のイイとこ取りのような・・・誉め言葉です・・・とて
も濃厚な舞台だった。

全公演が終わっていますのでネタバレ解禁ってことで。

<舞台装置など>
舞台中ほどに、数段のステップがついた横長のステージが置かれていて、離
れた2つの場所を同時に見せる際にうまく使われていた。
たとえば・・・階段上がTVのステージで階段下がステージ裏。上が船のデッ
キで下が海。上が台湾マフィアの部屋で下が日本のある場所・・・というよ
うに。
階段上はほかに、マフィアの最終兵器隠し部屋や、入国管理局の拘置所や、
中国の川の畔や、北京の広場のステージになったりして、中国・台湾・日本
をスピーディーに自在に移動してみせていた。

<全体を通しての感想>
熱い思いとかメッセージがいっぱいの、かなり骨太な作品だと思った。
ワタシ的に単なる自伝だったら面白くないと思っていたテレサ・テンのこと
はあくまでもモチーフになっているだけ。中身は完全なフィクションだった。
そうは言いつつも、実在のテレサ・テンの悲運がイヤでもダブってくるス
トーリーの巧みさ。冒険活劇風展開にハラハラ感もたっぷり味わえた。

一番よかったのは「何日君再来」という歌がたどってきたドラマチックな運
命をきちんと抑えていたこと。そのうえで「何日君再来」を過去の視点では
なく、現代の私たちから見た新しい歴史的謎解きとして描かれていたこと
だった。
特に、放送禁止歌「何日君再来」と「イマジン」を軸にして、民族・国家の
概念、国境の考え方にまでテーマが広がってゆく流れが、押しつけがましく
なく、興味を持って受け止めることができる点に好感が持てた。
クライマックス・シーン。北京の広場でテレサが思いをこめてゆっくり歌い
出す「何日君再来」に涙。ここで歌うんだろうなと予想はついていたのに、
歌を聴いてしまうとやっぱり歌の力って大きいなと思った。
歌は人を癒し、勇気を与えることもできるけれど、こんなふうに広場の壇上
で歌われると、人心を把握し操作する武器になりうるんだということを、あ
らためて実感するシーンになっていた。それを理解した上でテレサがとった
行動に意味があったと思う。
日向英一郎とテレサが歌う「川の流れの始まるところ」の歌詞がいい。
「ひとつの空に ひとつの海に なぜ人は線を引きたがる」で二人がそれ
ぞれ自分の胸に人差し指で線を引くところが強く印象に残っている。
ラストの出演者全員で歌うところ。作品に流れているテーマをかみしめなが
らの感動的なエンディングだった。
(ある意味、スタオベを約束されたようなエンディングともいえる。)

<おもなキャストほか>
筧利夫さん(日向英一郎=音楽プロデューサー)
相変わらずの汗ダラダラと涙目。舞台の筧さん、ほんとカッコイイよー!!
「 ミス・サイゴン」を観ていないので、筧さんの歌は初めて聴いたけれど、
とってもよかった。「川の流れの始まるところ」を歌い始める時の不安気な
声にキュ~ン。デュエットにテレサの声を得て、自信を取り戻したように大
声で歌うところが作品テーマを反映していて、胸が熱くなった。
それにしてもあの台詞、まっとうすぎて、聞くほうが逃げたくなる台詞も
筧さんがあの目をして滔々と語り始めた途端、マジックにかかったように自
然に感動できてしまう。泣かされてしまう・・・。うまいよ、やっぱり。
「国があるから人が集まったんじゃない。人が集まって、国になっていった
と思うんだよ。初めは黄色い川の畔で一つの家族が暮らし始めたんだ。それ
が北に、南に、東に、西に・・・やがて海を渡って住むようになった。国境
なんて初めはなかったんだよ。」・・・そんな意味のまっとうな台詞。

黒木メイサさん(リン=中国人スパイ)
私自身、この人を舞台で観るのは「調教師」以来、まだ2度目。
立ち姿の美しさといい、凛とした存在感といい、憂いを含んだ眼差しといい、
大人っぽく見える分、TVとはまた違った輝きを放っているように感じる。
有名演出家、脚本家たちに注目されるのもナットク。
今回は王家の血筋であるというナゾを秘めたミステリアスな存在だったが、
そんな話も信じられる気品をちゃんと漂わせていた。
一度は女を捨てたリンが、仲間という一線を越えて日向を女として愛した
という部分をもう少し強く感じさせてもらえれば、さらによかったかも。

藤原一裕さん(アキラ=ラーメン店主の華僑)
スミマセン!お笑いの方とはつゆ知らず、笑いの間のえらいウマイ人やなあ
と感心しておりました。今後のお気に入りリストに入れようと、休憩時間に
パンフをチェックして事実が判明した次第。そういえば・・・
イマジン フォー ザ ピ~ポ~
同じ事を執拗に繰り返し、力技で笑いをとってしまうテクニック。これぞま
さしく吉本のDNA。
関西弁ネイティブだったせいか台詞に感情がノッていて、すごく自然に感じ
られたのがヨカッタと思う。
テレサを生かすために(平知盛みたいに)自分の体に碇を巻き付け、台湾マ
フィアのボスと海に心中する時の熱い台詞に思いっきり泣かされましたよ~。

山本亨さん(リュウ=台湾マフィアのボス)
台湾マフィア「鬼蜘蛛」のボス。いかにも戦前の中国服な衣装、あれだけは
時代考証オカシイんちゃう?とツッコミを入れたくなった(笑)。
それが逆に冒険活劇に不可欠の要素にもなっていて、メチャクチャ胡散臭い
敵役が山本亨さんにはよく似合っているなと思う。
シリアスになりすぎない微妙な笑いのテイストが作品全体に流れているのは、
この人の功績が大きいのかもしれない。

en-Rayさん(テレサ=台湾人歌手)
最初に聴かせる京劇風の歌から日本語の歌まで、幅広く歌いこなせていたの
はさすが。心に届く声だった。テレサ・テンの日本語の歌では、ほんとにテ
レサ・テンの声に似ていたと思う。
北京の広場で人民たちの前で歌うときの、観客を惹き付ける歌い方も見事。
テレサの数少ない台詞で私が好きなのは、「戦いを止めて」。
自分の歌が人の心に影響を与えることをわかったうえで、壇上から必死の想
いで反戦のメッセージを伝えようとするテレサが心に残った。
en-Rayさんご本人も日本人の血を引く中国生まれのミュージシャン。歌を通
して自分の中にある国境をいい方向に昇華しているんだなと思う。

彩輝なおさん(青空のぞみ=日本のトップスター)
在日コリアンであることを隠して日本人名でトップスターになるという、か
なりシリアスでデリケートな役どころ。日本の歴史上の痛みでもある部分な
ので、観劇する側としてもチクチク胸が痛むのは否めない。
二人の間に暗い過去があったとしても、最後には日向に寄り添うリ・スジョ
ンの姿。二人を隔てていた国境がなくなったことが静かな感動でもあった。
パンフで知ったことだけど彩輝さん自身、宝塚のトップスターだったんだ~。
さすがに、ただならぬ存在感でしたよ。

TV局ディレクター役の北田理道さんほか、北区つかこうへい劇団の人たちが
けっこうたくさん脇を固めていた。つか作品のニオイがするのはそのせいも
あると思う。
はげ茶瓶オヤジの集団から、ラストの「川の流れの始まるところ」のイメー
ジを表現する動きまで、アンサンブルも奮闘していた。

※脚本家 羽原大介さんのこと
映画「フラガール」「パッチギ」「ゲロッパ」の脚本も書いた人。今回の作品
についてイープラスのサイトで<笑って泣けるエンターテイメント。しかもア
ジアの歴史も勉強もできる>と自ら話していた。今回も面白かったよ、脚本。


「テレサ・テン物語 私の家は山の向こう」を見て(このブログ内の関連記事)
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さすが! ()
2007-05-30 00:23:14
細かいレポに、芝居の感動が甦ってきました。

筧さんは本当に格好良い!(笑)
TVや映画もいいけど、やっぱり舞台に立ってる姿が、
一番サマになってるよね。
共演者達をグイグイ引っ張っていく熱さに、感動しました。

ラストの曲「川の流れの始まるところ」には、
本当に泣かされました。
デュエット部分も良かったけど、その後、
全キャストで唄った時には鳥肌たってました。
唄の上手い下手に関わらず、群集で唄う姿に弱いんです、私。(笑)

藤原くん、いいでしょぉ~♪
「ライセンス」っていうコンビ名だったんだけど、
いつの間にか「ザ・ちゃらんぽらん」って改名してました。
このコンビのお笑いライブはめっちゃ面白いよ♪
今度機会があれば、ぜひ見てやって下さい。
返信する
筧さんと藤原くん ♪ (ムンパリ)
2007-05-30 01:21:49
麗さん、こんばんは。
筧さんってホントに舞台のひとですよね。
そういえば共演者全員のことを引っぱっていきながら、自分自身も長台詞や歌をこなしてるんだもんね。その姿勢に感動しちゃうし、惚れちゃうねっ。

> 全キャストで唄った時には鳥肌たってました。
そうそう、あの歌は2回出てくるんですよね。
それぞれに暮らし始めた家族がみんな一斉にこっちを向いて歌い出す時、感動しました。

ハイ、藤原くん、チェック入れましたです!!
開演前に携帯電話マナ-がらみで前説をやってたのも藤原くんでした。
携帯の切り方のわからない人は今から○○○○に行って契約解除の書類を提出してください・・・とかいうヤツ、東京でもきっと前説やってたんでしょうね。
返信する
やっぱり♪ (かずりん)
2007-05-30 10:03:03
ムンパリさん行ってたんだあ♪♪これは
外したかな?と思っていたの・・・行ってたのねっ!!
筧さん素晴らしかったですねえ♪
めっちゃ泣けましたよ・・・。
今年、いち・・にい・・・三番目の激感動よ!!
確かに言ってる中身はちょっと熱っ・・・なんだけど
筧さんの口から発せられると、涙腺欠壊でした。
私は夜の部だったのです。
お会いしてたら、凄い顔よ(笑)よ~~泣いた(笑)
・・・お借りした本を読み終えた直後だったせいかも
しれません。いい本でした。今DVD見直しています。ありがとう♪・・・いつも・・・♪
返信する
もいっちょ! (ハヌル)
2007-05-31 00:20:50
お邪魔しま~す♪
筧さんは、もっともっと舞台に出なきゃダメです!なんちゃって。
凄いです、あの長台詞まわしは。あの説得力は。一言も噛むことなく!
フィクションだけど、まるっきりそうでもないところが考えさせられるというか、難しい部分ではありましたね。
北区の方たちも出てましたね。懐かしかったなあ・・・。
返信する
三番目 ♪ (ムンパリ)
2007-05-31 01:40:08
かずりんさん、ニアミス!
だけど、時間が違ってたのね~。
それにしても大阪では公演期間が短いのに、2回も観に行ったところがスゴイ。
(あの本って・・・そういえば戦争がらみだったね。)

> 今年、いち・・にい・・・三番目の激感動よ!!
うんうん、かずりんさんの感動1位~3位、私にはわかったよん(笑)。
そんな、めっちゃ泣けたかずりんさん、まだ見たことないワ。いつも固まってる時ばっかりだもん(笑)。
いやいや、ほんまに今回の筧さんは、みごとに筧さんでしたね。あのままずうっといつまでも語り続けてほしいくらい素敵でした。

つっこみどころはあったにせよ、それがまたいいのよね。スンバラシイ舞台でした。
返信する
もっと出て~(笑) (ムンパリ)
2007-05-31 01:41:01
ハヌルさん、どうぞどうぞ何回でも。

> 凄いです、あの長台詞まわしは。あの説得力は。
> 一言も噛むことなく!
ほんとによどみなく一気でしたねー!! スンバラシイ。
筧さん、TVや映画で忙しいんでしょうけれど、やっぱり舞台の上がイチバンですよね♪「もっと出て~!!」って言いたい。

フィクションだけど、テレサ・テンの歌そのまんまだったり、名前もテレサだったり。たしかにちょっと混乱しますよね。
パスポートのことは事実かもしれないけれど、北京では歌ってないぞ・・・とか(笑)。テレサ・テンの自伝だと思って見にきた人も多かったかも?

ハヌルさんはもしかして、つかさんの舞台をよくご覧になってたのですね! 今回もやっぱりニオイがありましたね。私は好きですけど(笑)。
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