星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

私の好きなDEAN FUJIOKAの曲とある本の関係。

2023-01-10 | 大切な人を失って

DEANさんの曲の中から好きな歌、思い出の曲を1つ選べと言われても全然絞れない。でも、救われた曲というか、ある時期ずうっと繰り返し聴かずにはいられなかった曲がある。誰かに聞いてもらうような素敵なお話でもないし、短い文章にまとめることも不可能。第一、その気持ちがなんなのか自分でもわからなかった。

その曲はYouTubeにもアップされていない。↓ インスタグラムで一部が聴けるのみ。


DEAN FUJIOKA『Legacy』ーーディーンさんが作ったクリスチャンソング。


2019年の秋の終わり頃からそれは忍び足でやってきて、12月には見え隠れ。その翌年にははっきりと姿を現した、、、夫の体が最悪の病魔に侵されていることがわかったのだった。すでに手術も不可能。命の期限がいつ頃であるかも知らされた。
寒い季節で、私は『Legacy』を通勤帰りに毎日イヤホンで聴き、聴き終わったらまた聴いて、時には立ち止まったままじっとその曲を聴いていた。聴きながら泣いたこともあったけど、あの時はあの曲に自分を委ねる感じ。とにかく聴き終わったら家の前の最後の坂道はしゃんと背筋を伸ばし、よし歩き出そう、ってそんな気持ちになれた。
それから時が経って、ディーンさんがSNSで若松英輔さんの『生きていくうえで、かけがえのないこと』という本を紹介してくださって、すぐに図書館に予約した。『生きていくうえで、かけがえのないこと』は二人の著者が複数の同じテーマについて書いた競作で、若松英輔版と吉村萬壱版があり、私はその両方とも読ませていただいた。若松さんの方は言葉の意味や世界をとても丁寧に紐解くような視点で書かれていた。たしか、どのテーマから読んでも構わないというような序文があって、本を手にとった時点でもう夫を見送ってしまっていた私は「悲しむ」というテーマから読み始めた。ところが、一番私の心に刺さり涙がぶわああっと溢れてしまったのは「喜ぶ」というテーマだった。本を借りた時、しおりが「喜ぶ」のところに挟まっていたのは偶然なのか。
そして、読んでいる途中からなぜあの時期に自分が『Legacy』を聴き続けたのかが氷解するような思いになった。
少し引用させていただく。

 

若松英輔『生きていくうえで、かけがえのないこと』より

もっとも大切なよろこびは、避けがたい悲しみと共にあるように感じられる。よろこびとは、内なる悲しみを育ててゆくことのようにすら思われる。

「よろこぶ」は、喜ぶ、悦ぶ、歓ぶ、あるいは慶ぶ、とも書く。喜楽、歓喜、悦楽、慶喜という感情も、もちろん自分のなかにある。しかし、どれも、あのかけがえのない「よろこび」とは違う。
・・・・・・(中略)・・・・・・
漢字辞典を見ていたときだった。「喜ぶ」とは、もともと人間がではなく、神が喜ぶことを意味したというのである。


また、若松さんは内村鑑三の著書の言葉を引用し、それを次のように解説してくれる。

しかし、神が本当に私たちに求めているのはそうした目に見えるものではない。神は、心を求めている。神は人が内なる、朽ちることのない何かに目覚めることを喜ぶ。だからこそ、悲しみや嘆きによって砕けたありのままの心をささげよ、というのである。


さらに、こんなことも。

大切に思う人との別離はときに、堪えがたい悲しみとなる。しかし、そう感じることができるのは、そこまで愛おしいと感じる相手に出会えているからだろう。出会うことがなければ、別れは存在すらしない。

・・・・・・(中略)・・・・・・
内なる悲愛の誕生をまざまざと感じること、人生にこれほどのよろこびがあるだろうか。


読みながらハッとした。あのときDEAN FUJIOKAの『Legacy』には特別な何かを感じ、自分の悲しみ、痛み、不安、恐怖をすべてさらけ出しながら祈るような気持ちで聴いていたような気がする。ひたすらすがりついていたのだと思う。クリスチャンソングだからかどうかはわからない。
そして、この本を読んで、死別直後は悲痛しかなかった気持ちから自分にも少しずつ変化が訪れているのだと気づいた。図書館で借りた本のしおりは再び「喜ぶ」のページに挟んで返した。

DEAN FUJIOKAの曲とディーンさんが紹介してくれた本の関係、ようやく書けた。この投稿を『DEAN FUJIOKA』の項目ではなく、『大切な人を失って』という新たに設置したカテゴリーに入れておこうと思う。


<Legacyの歌詞↓>
そして、何度も Legacy。 (2019/1/31の投稿)

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