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ふぅん

闇閃閑閊 ≡ アノニモス ≒ 楓嵐-風

おとぎの中で

2010-02-03 19:19:47 | 日々随想
あざみ野で 乗換えて
ブルーラインという名の地下鉄に乗って 南へ
横浜の地下で もぐらになった


駅を出て 林立するマンションに
反比例する 人影の少なさに
なんとなく ソウルの街を思い出した


小さな子が お母さんと一緒に 
オニはーチョト フクワーウチ


ふうん


そっか 節分なのか
でも 鬼って いったい なんなんだろう
悪魔や天使と同じくらい
実態が無いのに 疑問視されない架空





ツチノコは 別にしても
カッパとか オニは
日本の歴史の中で よく知られた 架空の動物


有名な 昔話の中に
あれだけ鬼が 登場するのに
誰も そんな架空を嫌悪しないのが
この国の素敵な ところかもしれない


おにごっこ


鬼なんて サンタクロースくらい 眉唾なのに
なんの疑問もなく 受け入れて
遊びでも 空想でも 浸透している


鬼は きっと 西洋人なんじゃないかな
白人の顔は 赤く見えるし 身長高いし ホリは深いし
言葉は違うし 髪の色だって不思議だし


でもね そんな分析は きっとナンセンス


ブレーキだって 鍵盤だって
ちゃんと あそび がある
機能するまでの わずかな余裕


現代では 科学という宗教の下に
そんな あそび という
架空や おとぎが なくなってしまった


いや ピコピコ操作している
小さな液晶の ゲームの中には
あるのかな


人間は 現実という絶壁の前に
いつだって 架空という あそびを創ってきた
時には 遠心力となり 時には 求心力となり


オニはー チョト


僕だって
本当に鬼が 現れたら
腰を抜かすだろう


でも それが ヴァーチャルと解ってるから
鬼でも ツチノコでも 麒麟でも
話の中に 織り交ぜられるのだと思う


福は内


そして これだって ヴァーチャル
畏れるものと 憧れるもの
そのバランスが コミュニティの均衡を作り上げる


6時間にも及ぶ メンテの後
僕はまた ブルーラインに乗った


読んでいた本を閉じて
昔作った楽器を ピアノへ改造できないか
いろいろ空想をめぐらす


どうやら それが 僕のあそび
人間は いつになっても
架空やおとぎと 一緒にいたほうが
うまくいくのかも知れない

闇より暗い影

2010-02-02 22:01:13 | 夜々懐想
あの頃とは すっかり変わってしまった
かつて 少しだけ 住んでいた街
でも それは ほんの駅前だけのこと


ちょっと 路地を入って
消防車も通れないような ぎっしりした
アパートの密集地


そこは あの頃と同じ
なんだか 覇気のない 静寂の澱
陽の当たらない道は 昨日の雪が凍っていた





浜松での修行を終えて
調布の音大で 仕事を始めた頃
2年ほど住んでいた 立川


今日は 近くで仕事だったので
スタッフを駅に送った帰り
記憶を頼りに かつての住居を見に行った


1階が コインランドリーで
風呂も 換気扇もない
4畳半一間の 神田川の唄の世界


あの 音大時代の二年間
僕は 暗い記憶しかないのは 何故だろう
技術を磨いたり チェンバロと出逢ったり
それなのに 生活の記憶に太陽は出てこない


貧しかったからかな
ううん きっと違う
何かが きっと違う


毎日 銭湯に通っていたっけ
網戸が無い窓に すだれをかけて
汗だくになりながら 蚊取線香をくぐらせていた夏


石油ストーブを 背中であび
綿の半纏を着込んでるのに
部屋の中でも 息が白かった 凍える冬


初めて自炊を始めて 
レバーで死にかけたり
揚げ出し豆腐で 火事になりかけたり


全てが みじめに思えて
自分を 哀れんでいたんだろう きっと
誰かに 認められたかったんだろう きっと


ふうん


暑さや熱さはあったけど 温かくなかったんだ
寒さや冷たさはあったけど さわやかじゃなかったんだ
飢えてはいなかったけど 満たされてなかったんだ


そして 心のどこかで
そういう哀れな自分に 酔っていたんだろう
悲劇の主人公になりきって


そうやって 鍛えられたのは
暑さと寒さに強くなった体だけ
あの頃から 風邪などひかなくなっていったんだ


それから とにかく
なんでも料理するようになったし
一人で生活することが 基本になった


あの頃の夢は 
独立して 音楽の傍で仕事をすることだった


古ぼけた かつて住んでいた 2階の部屋の窓を見つめ
かつての自分に 聞いてみたかった
どうだい あの頃の夢は叶ったけど 満足かい?


今の僕を見て きっと彼は首を横に振るだろう
そんな暗い目をしてるようじゃ ダメだなって
だから あの時 将来なんか見えなくて よかったのかも知れない


でも 今は 
温かい時も さわやかな時も あるんだぜ
満たされてる瞬間も あるんだぜ
こんな目をしていても


闇は 決して光を生み出せないけど
光は 必ず影を生み出すんだ


あの頃の暗さは 闇だったかも知れないけど
今の暗さは ただの影なんだ


そんな 弁解を 過去へぶつけながら
滑らないように クラッチをつないで
ウインカーをつけた


後方を確認すれば
ミラーの上に 紫のネコがちょこん
ほら 僕には今 たくさんの光がある



白い気配

2010-02-01 08:04:07 | 日々随想
今夜から 関東も化粧をするらしい
氷点下のファンデーション
無限の結晶の白粉


ふうん





よく晴れた 白い朝は美しい
全ての偽りを 糊塗するかのように
シュールでモノクロな世界へ


人工の配色も輪郭も
ふんわりと 静かなグラデーション
デザイナーは この星の引力


サク サク
新しい雪の上に
僕の靴の跡がくっきり


普段 見ることのない
靴の裏の模様が くっきり
シュールな白は 遺すものも非日常


でも やはり
うわべだけの美しさなんて
以前より汚く 醜く 溶け出していく


溶け出した雪を踏むのは 大嫌い
だから 雪なんて 降らなければいいのに
化粧なんて しなければいいのに