爺の誕生日は2月
妻は誕生日は8月
そのせいがどうかわからないが
ふたりはすべてが対極
例えば汗
若かりし頃から
爺は大汗っかき
少し動くと汗が滴り落ちる
夏の葬式となれば
地獄の罰ゲーム
対して
そんな時汗ひとつかかない妻
それがどうだい
最近は爺が汗をかかなくなり
妻はと言えば
お前は田中角栄か?
大汗をかきながら扇子であおぐ
そうそうトイレ
毎日快便だった爺が
年とともに便秘気味に
対して妻は元々便秘だったのが
最近快便
お墓参りから帰った後
便意はないが
仕事の前に出たら言いなぁ~
淡い期待を持ってトイレへ
そこへあの能天気な妻がきた
「わたしねぇ さっき出たの」
「びっくりするぐらいモ~リモリ」
これ以上の幸せはない
そんな顔
便秘になってみて
妻のその喜びの気持ちも
わからないではないが
便秘で苦しんでる爺への
思いやりはない
少し便意が出て
ちょっとでるかなぁ~
そう思って力んでいると
モコ助がやってきた
悪い予感
爺の足元にある猫トイレ
なぜか中で一回転
爺に背中を見せる体勢
お尻があがったとおもったら
ブリブリブリブリ
人間顔負けの量
悪臭が足元から強烈
おまけに
後ろ足で爺に向かって
シャッシャカシャッシャカ
ウンチ交じりの猫砂が
飛んでくる
その間30秒ぐらい
爺になすすべはない
いつかこの2匹(妻とモコ助)
しめてやらねばならない
お墓の水汲み場
いつもあるバケツが一個もない
これがすべての始まり
この予想外が
爺の危機管理能力を曇らせた
ほどなく戻ってきたバケツ
お花の水を換え
ローソクや線香に火をつけるため
身をかがめたまさにその瞬間
「クックッククックッ」
押し殺した笑い声
なにかな?
そう思うまもなく
水しぶきが....ふりかかってきた
妻が腹を抱えて笑ってる
すべてが理解できた
やられてしまった
数年前
同じ状況で
お墓に水をかける妻に
水をかけられた
ただ違うのは
その時はただの偶然だったこと
しか~し味を占めた妻
翌年もやらかしたのである
これはまさに確信犯
それから今年までの数年間
妻がひしゃくを持ってるときは
爺は少し離れて見守る
ここ数年はこれで回避できていた
あ~それなのにそれなのに
いつもと違う状況
ただバケツがなかっただけで
爺の心にすきができ...
用心を怠ってしまった
くやしいくやしいくやしい
しか~し
開いた妻のバッグから
妻ご愛用のハンカチがのぞいてる
ちょっと泥で汚れた指先
こそっとふいてやりました
帰り道それで汗を拭いてる妻
こんな馬鹿夫婦を
ご先祖様は許してくれるのでしょうか?
妻の汗ダラダラの浴槽に
なんとか入りながら
俺の妻への愛情は本物だ
そう自画自賛
なら妻がゲロッタ風呂はどうか?
若いピチピチの女の子はOK
これはどう説明するのか?
などなど
この問題は奥深い
さてさて昨日のドタバタ劇
電話がかからないと言っても
色々とある
例えば呼び出しても相手が出ない
例えば相手が話し中
例えば何かのメッセージが流れる
お客様のご都合で.....とか
などなど
我々の夜食は居酒屋さんからの出前
毎日妻が電話でメニュ-を聞き
選んで再度注文の電話
毎日これの繰り返し
「電話がかからないわ」
「何度かけてもつながらないの」
「ちょっと行ってくる」
そういい残して
50メートルほど離れたお店へスタコラ
食い物が絡めば妻は迅速だ
帰って来た妻に聞いた
かからないって言ってたけど
相手への呼び出し音はするの?
「ううん」
「呼び出し音も何もしないのよ」
いぶかりの気持ちで
妻のスマホを借りて
ちょっと電話をしてみる
なるほど
何の音もしない
95%の人が
この時点で自分のスマホを疑う
妻の辞書にはそれはない
すぐにスマホを再起動
チチンプイプイ
電話がかかるようになりました
「昨日まで電話かかってたのに」
妻は何の反省もない
あまり突っ込むと
昨年買い換えたばかりのスマホ
買い換えると言いかねないので
これで一件落着
お騒がせした居酒屋さん
ごめんなさい
それまで気にしてなかったのに
ちょっとした一言で
その日その時から
妙に気になるようになる
...
そんなことはないだろうか?
妻がどんなに謙遜しても
爺と妻との力関係
如実にあらわしてるのが
二番風呂
もちろん一番風呂は妻
いつからか?
そう問われても
思い出せない
はるか昔
そう答えざるを得ない
若かりし頃から
汗とは無縁だった妻
超汗かきだった爺には
とてもうらやましいこと
そんな妻が
最近大汗をかくようになった
更年期障害らしい
障害と言えども
この汗の件に関しては
汗をかいた後の爽快感もあり
それほど嫌がってはいない
妻が入浴中
爺が食事を用意する
主役脇役が違うだけ
世間でよくある風景
汗だらだらで
風呂から出てきた妻
「汗が出てとまらないわ」
うれしそうに言う
次の言葉が
爺の耳になぜかひっかかった
「湯船につかってると
汗がでてとまらないの」
「びっくりするぐらい出るのよ」
思わず
「え!湯船の中に汗いっぱい?」
「それ汚くない?」
と言い終わるや否や
妻が口をとんがらせて言った
「ちゃんと体は洗って湯船に入ってるわ」
いやいやそこじゃないし
それにそれは当たり前
妻も気がついて
照れ隠しに大笑い
力関係で仕方なく
爺も連れ笑い
一件落着
だが爺の心ははれません
愛する妻の汗
何が汚いのだ
そう言い聞かせる爺
そっと湯を入れ替えたら
そうささやくもう一人の爺もいて
ちょっと憂鬱なのです