「え え~
」
文字で書くとこうなるが
どう表現したらいいだろうか
爺の頼みごとが意に沿わない時
我が家のダントツ序列第一位
その妻がもう一度聞きなおす時の言葉
意に沿わない度が高ければ
その声はヤクザのように迫力に富み
「いやもういいです」
そう答えそうになる
病院がくれた薬
便秘解消用に漢方の乙字湯と
痔の治療薬ネリプロテク軟膏で
お尻に注入する
特に軟膏は高濃度ステロイド
普段なら絶対に使用したくない
便秘は解消したものの
その都度の鮮血下血は止まらない
「神様 どうか大小便が出ますように」
それさえ解決できれば
もうなにもいりません的な
お願いをしておきながら
今ではどうか出血が止まりますように
さらにそう祈る
そうそう頼るわけにはいかないので
軟膏注入を決意
だが問題がある
小太りの爺は手が届きにくい
それに大昔の性初体験の時
その場所を間違えそうになったトラウマ
自分のとはいえ間違ったら大変
愛人はいない
となると妻しかいない
しか~し
序列ダントツ第一位の妻が
下僕の爺に
それもお尻に
意を決して妻にお願いをした
なんということでしょうか
まさかのふたつ返事
爺がこの挿入をとても嫌がってる
妻がそれに反応した
新婚の時熱いお茶を爺の股にぶちまけ
熱がる爺をよそに
一時間は笑い転げてた妻
そうなんです超ドS
それを刺激したらしい
爺も努力は惜しまない
記念すべき第一日目
すでに病院で少し慣れっこ
そんなことはおくびも出さず
挿入時に
「あは~ん」と強く声を出す
これが功を奏して
翌日は妻の方から「入れる?」
これで安泰と思うのはど素人
妻は超トSを上回る超飽き性
三日目にはその兆候が....
どうなるのか....
神様ありがとう
その三回で出血が止まり
一か月以上経過した爺は
花粉症の兆候が出始め
とても憂鬱
神様~
爺の病院嫌いは徹底してる
インフルエンザ流行のこの時期は
特に考えられない
それも人生初の肛門科医院
爺よ! どうかしてるぜ
入院はけがで2回
自慢じゃないが病気入院の経験なし
毎年何かで大騒ぎして
病院へ突っ走る妻とは対極にある
昨年受けたMRIは実に7回
だが決して病弱ではない
手遅れ型の爺だが医療制度には貢献
対して妻は
長生きしするだろうが保険料のUPに貢献
夫婦でバランスをとっている
忘れもしない1月13日金曜日午前9時
そうなんです
恐れられている13日の金曜日
その日爺はY肛門科医院にいた
それはまぎれもない事実
肛門が便でふたをされた感じ
3日ほど便が出なくて苦しかったから?
ノンノン
そのぐらいでお付き合いのない看護婦さんに
おしりは見せたくない
ましてこちらからお金を払うんだぜ
りきむたびに便器に真っ赤な鮮血?
ノンノンノン
確かにとても動揺はしたが
そのぐらいでは動かない
そのわけは一言で言える
前門の虎 後門の狼
今までの症状はまさに後門の狼
狼を軽んじるわけではないが
こん棒のようなもので対処できそう
何とか便が柔らかくなるように
素人考えの多量の水分補給
肛門の狼に意識が奪われていたが
当然尿意が発生
前門だけでもすっきりしようとトイレへ
感覚的にはいつもの小便の感じ
だがいつものトイレの音がしない
つまり小便が出ていない
これは苦しい
なんなら皮をつまんで用を足してごらん
この文言だけで爺が包〇だ
そう感ずる人には反論しない
余りの苦しさに救急車も考えた
便はともかく小便は何か悪い病気
前立腺?いったいなぜ?
それよりもとても気分が悪い
つまり前門にも虎
虎にはかなわない
爺もギブアップ
ともかく一つ一つ解決しよう
そして駆け付けた肛門科医院
つまりまずは狼退治
「どうしましたか?」
なぜか同じ部屋に二人の先生
奥に大先生
対応は息子さんらしい若先生
「便が出なくて苦しいのです」
「そのうえ小便も出ないのです」
小便も出ないのです
そう言い終えるやいなや
大生先生がぼそり言い放った神の声
「便が出ると小便もすぐ出る」
大便と小便
大便と漢字で書くのはなんとなくわかるが
なぜオシッコを小便と書くのか?
これで分かったぞ
つながってるのだ
爺と妻のように
「ズボンを下げてベッドに横向きにになって」
「足を抱えるように」
「もっとお尻を突き出して」
容赦ない注文の声
先生と看護婦さん
見られてる感満々の時間が流れ
「では浣腸します」
その声の後の何とも言えない挿入感
「しばらく我慢してトイレに行って下さい」
「出なかったらまた診察室へ」
これで解放される
数分後に向かうトイレ
そして数分後に味わう絶望感
全然でな~い
恥ずかしながら浣腸初経験
爺にとっての認識はそれは最終兵器
なんとそれが効かない
足取り重く引き返し
「出ませんでした」
たぶん蚊の鳴くような声
いったいどうなるのだろう
「じゃ~隣の処置室へ」
そして驚く言葉が続く
「指で掻き出します」
毅然とした先生の声
ほかの選択技わない
できたら先生にお願いしたい
そんなこと言える雰囲気はなく
看護婦さんに連行され
「力を抜いてください」
その声の後にまたあの挿入感
浣腸の時よりはるかに力強い
あぁ~なんということでしょうか
挿入と同時に感じた便意
これを逃してなるものか
「あまりいきむと血管が切れますよ」
そんな声も何のそのいきむこと数回
出た感満々の安堵感
これは言葉では表せない
掻き出したのではなく自力で
これも大きく作用してる
窓口で支払う6800円
数万円請求されても爺は払ったかも
一睡もせずに向かった肛門科医院
帰りの足取りは軽い
爺の危機をすくってくれた看護婦さん
できたら爺も
彼女のそのあたりを見せていただき
秘密の共有と言おうか
フィフティフィフティ感と言おうか
そんなかなわぬ夢を持ちました