お墓の水汲み場
いつもあるバケツが一個もない
これがすべての始まり
この予想外が
爺の危機管理能力を曇らせた
ほどなく戻ってきたバケツ
お花の水を換え
ローソクや線香に火をつけるため
身をかがめたまさにその瞬間
「クックッククックッ」
押し殺した笑い声
なにかな?
そう思うまもなく
水しぶきが....ふりかかってきた
妻が腹を抱えて笑ってる
すべてが理解できた
やられてしまった
数年前
同じ状況で
お墓に水をかける妻に
水をかけられた
ただ違うのは
その時はただの偶然だったこと
しか~し味を占めた妻
翌年もやらかしたのである
これはまさに確信犯
それから今年までの数年間
妻がひしゃくを持ってるときは
爺は少し離れて見守る
ここ数年はこれで回避できていた
あ~それなのにそれなのに
いつもと違う状況
ただバケツがなかっただけで
爺の心にすきができ...
用心を怠ってしまった
くやしいくやしいくやしい
しか~し
開いた妻のバッグから
妻ご愛用のハンカチがのぞいてる
ちょっと泥で汚れた指先
こそっとふいてやりました
帰り道それで汗を拭いてる妻
こんな馬鹿夫婦を
ご先祖様は許してくれるのでしょうか?