墓まで持っていく事件簿
ファイルNo.5343
「嫁に食わすな採れたてたまご」
これに今日新たに加筆された
妻の賛同を得ての爺の命令で
新鮮なたまご群や
宅配の野菜群は
妻の実行の下
子供たちに全て配分された
おかげで食材はスッカラカン
血縁関係が濃い場合は
本来利己的な人間が
利他的行動をする場合がある
ホールデンがそう説く
まさにこれであろう
何にしようかなぁ~
そう思って冷蔵庫をのぞくと
奥のほうに小さな箱見っけ
箱には「黄身恋し」と書かれてた
中にはたまご6個が鎮座
Oisixから宅配されたものらしい
短い言葉でも全てがわかる
日本語は実にすばらしい
問いただす爺に妻の答えは
「えへへ...」
返す爺の言葉は
「ほほほ...」
他に何の言葉も要らない
かくしてラーメンではない
本当のたまごかけご飯が実現
色々な意味で
一味違った食事でございました
子供たちに配分するとき
我々にも少し残せば...
爺がそう思ったのは間違いない
だけど
爺には実行は出来ないだろう
「お主も悪よのう」
それをやり遂げた妻に贈る言葉
くどいようだか
人間は本来利己的
例外的に血縁が濃い場合は
利他的行動をとる場合がある
この説に一つ加えたい
食べ物が絡めば
その行動はちょっと微妙になる
と...
いずれにせよ爺たち夫婦は
似たもの夫婦かもしれない
精一杯の笑顔で爺が話す
数個食したところ
黄身や白味が盛り上がり
市販のたまごと雲泥の差
あまりにおいしかったので
子供たちに連絡すると
またたくまになくなりました
ふらりとやってきたTさん
彼が「たまごどうだった?」
そう切り出される前のお礼の言葉
正直者の爺の素朴な感謝の気持ち
もうなくなったので
再度の受け入れもOK
それもさりげなくちりばめた
そこへ妻が降りてきた
瞬時に主役交代
爺は相づちマシーンに変身
会話は妻の独壇場
黄身が盛り上がってて違う
何といっても白味が違う
(黄身しかたべてねぇだろう)
(てか、割ったとこみてねぇだろう)
(それよりそのたまごは...)
市販のたまごはあぶなくて
たまごかけごはんができない
さっそくそれをして
とてもおいしかったです
(ラーメンに入れるのが
たまごかけご飯と言うのか?)
(それよりそのたまごは...)
最近の若い人は味を知らない
子供の頃からインスタント
かれらがかわいそう
(爺も全く同感)
(だけどアンタもかわいそう)
(それよりそのたまごは...)
たくさんの採れたてたまご
それをいただいた当日の夜に
市販の卵を買っちゃう妻
これぐらいは許されるかも
そう思いつつも
正直者の爺の小さな胸は
今にもはりさけそうでした

ついに爺の命令が発せられた
息子たちへメールが飛んだ
命令は数年ぶりのこと
「採れ立てのたまごいらない?」
短いけれど毅然とした命令文
金貸せ
町内のドブ掃除に来い
などなど
今までは
爺の命令はことごとく無視された
驚くことにこの命令だけは
たった半日で履行された
子供たちを呼ぶときは
「採れたてドブ掃除に来い」
そう書くべきだったかも知れない
いただいたとれたて卵30個
その後なぜか妻が買ってきた
スーパーのたまご12個
これだけであれば
爺の命令は発せられなかった
半月にいちどの食品宅配Oisix
向こう任せの品揃え
一日に届いた食品のなかに
なんというこどしょうか
たまご12個ありんす
結果はまるで台風一過のごとし
今の爺たちに残った物
それはスーパーのたまご9個
採れ立てのたまごはと言えば
たった3個食べただけ
誰がそれを食べたかは
墓まで持ってくノートに記入された
ただただ残念なのは
楽しみにしてたOisixの食品
これもすっからかんになったこと
血縁関係が濃い場合に限って
動物は利他的な行動をとる
そう説く動物行動学の学者
これがそうなのか?
隠せばよかった
爺が作るラーメン
一言で言えば具だくさんラーメン
具の野菜などで麺は見えない
なかでも今日のラーメン
出来上がる直前にたまごをポトリ
それも黄身だけだよ~ん
それも3個だよ~ん
うんと精をつけるため...?
妻に同じものを作ったので
その意味では逆効果
なら?
土曜日に
Tさんから卵をいただいた
その白味はと言えば
妻には無縁のプリンプリン
黄身はと言えば
爺には考えられないモッコリ
まさに採れ立て
そしてその数なんと30個
こりゃ~毎日卵かけごはんネ
妻がうれしそうに語る
夕方冷蔵庫を開けて驚いた
スーパーの卵がワンパック
中央に鎮座していた
夕方妻が買ってきたらしい
ここでの判断はむずかしい
妻にその理由を問いただすのか
何も言わないのか
我が家庭平和のため
爺が選んだ道は後者
かくしてラーメンに3つの黄身
「やっぱり違うよね」と妻の声
それぞれ3つで6個の消費
だがスーパのパックのたまご
3個がない
その配分は記憶にない
ただ一つ
人間の味覚なんてたいした事ない
ふとそんな事を思ったのだけ
記憶してる