精一杯の笑顔で爺が話す
数個食したところ
黄身や白味が盛り上がり
市販のたまごと雲泥の差
あまりにおいしかったので
子供たちに連絡すると
またたくまになくなりました
ふらりとやってきたTさん
彼が「たまごどうだった?」
そう切り出される前のお礼の言葉
正直者の爺の素朴な感謝の気持ち
もうなくなったので
再度の受け入れもOK
それもさりげなくちりばめた
そこへ妻が降りてきた
瞬時に主役交代
爺は相づちマシーンに変身
会話は妻の独壇場
黄身が盛り上がってて違う
何といっても白味が違う
(黄身しかたべてねぇだろう)
(てか、割ったとこみてねぇだろう)
(それよりそのたまごは...)
市販のたまごはあぶなくて
たまごかけごはんができない
さっそくそれをして
とてもおいしかったです
(ラーメンに入れるのが
たまごかけご飯と言うのか?)
(それよりそのたまごは...)
最近の若い人は味を知らない
子供の頃からインスタント
かれらがかわいそう
(爺も全く同感)
(だけどアンタもかわいそう)
(それよりそのたまごは...)
たくさんの採れたてたまご
それをいただいた当日の夜に
市販の卵を買っちゃう妻
これぐらいは許されるかも
そう思いつつも
正直者の爺の小さな胸は
今にもはりさけそうでした
