もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

「万引き家族」

2018-06-13 22:25:50 | 映画
2018.6.12
ネタばれしないと書けない。


リリーさん演じる父親は優しいのと犯罪しか取り柄が無い。
働くのも嫌いななまけものだし、優しさもその場しのぎが繋がっているだけ。
ゆりを連れてきてしまったのもそうだ。
祥太に「おとうさん」と呼ばせようとする心の奥の隙間には
本人も気がついていない。

クリーニング工場でパートをしている妻は
最初こそゆりを返して来いと言うが
外にまで聞こえた「産みたくて産んだわけじゃない」というゆりの母親の言葉に
自宅に連れ帰り育てることを選ぶ。

狭く汚く、散らかり放題の5人が寝る場所や布団すらロクにない家で
盗んできたカップ麺を食べながら笑い合う生活にゆりが加わり6人家族になる。

祖母は古い一軒家で狭苦しく6人で暮らしていることを楽しんでいるようだが
民生委員には一人暮らしを装っている。
その祖母にベタベタと甘える妻の妹の姿がいびつだ。
彼女は売春の無い風俗で働いていて、仕事中は心が遠くにあるようだ。

つましく暮らしている片隅の家族の話にみえて
そうではなさそうなことが少しずつこちらが感じ出しだした頃
破滅はやってくる。

登場人物の誰にも親というか、家庭で育った痕跡が見えない。
想像の家族ごっこだけど子供たち以外は本気で
こういうの家族っていうんじゃないの?と手さぐりで生活していた。
痛々しかった。

自宅に戻されたりん(ゆり)の両親もそうだろう。
マスコミに取り囲まれる場面にふさわしい洋服が無かったのか、わからなかったのか
二人とも礼服(喪服)を着ている。

「妹には(万引きを)やらせるなよ」と祥太に声をかけた駄菓子屋のおじいさん、
ああいう人がもっといた時代があったのか。
あったとしてそれはもう少し生きやすい時代だったのだろうか?

悲惨に描けばきりがないのに
家族が楽しそうだから、あまりにも普通に生活しているから
そこここで笑えるのが良かった。


妻の妹ということになっていた亜紀の実家(それだけではないのだが)
あの、そこそこ裕福で賢くかわいい子供のいる家庭が幸せではないことが感じ取れれば
血縁もお金も家族の幸せに絶対必要なものではないと思える。
そして、幸せは永遠に続くのではなく
時折舞い降りてきて、それを大切にポケットに入れて日々を過ごし
取り出してまた味わいながら生きてゆく糧になるもの。
そう私は思いました。



安藤サクラちゃんは本当に凄い。演じてない。
信代を生きていた。
松岡茉優もかなりだし、池松壮亮が少ないシーンで印象深い。
子供たちの演じていなさが今回も胸に刺さった。
樹木希林はいうまでもなく、リリーさんはダメ男がぴったり過ぎ。
風呂場の全裸がリアル中年でクスクスしてしまったよ。
コメント
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