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もぐらスコープ

見たこと思ったこと、日々の生活

『蝉しぐれ』

2007年02月20日 | 本と雑誌

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藤沢周平作品を、今まで一度も読んだことはありませんでしたが、今度『蝉しぐれ』を読みました。きっかけは、NHKニュース「おはよう日本」での、児玉清さんをゲストに迎えた藤沢周平特集を見たことです。映画化されたり、今あらためて注目されているという藤沢作品。ゆかりの地を訪ねるツアーが人気を集めていること、そして愛読者の男女一人ずつが紹介されました。
何よりも引きつけられたのは、児玉清さんの「藤沢作品のない人生なんて!」と言わんばかりの力説ぶりでした。そんなに良いのか・・・それならば。あの人が言うのだから間違いはない・・ということありますよね。音楽のことは、ピーター・バラカンさんが良いと言ったら、だいたい信じています。。。それはいいとして、早速図書館で『蝉しぐれ』を借りて読みました。
いやホントに、特集で児玉さんが言われたこと・・・・まず何よりも物語として面白いのが第一で、ミステリーみたいな謎解きもありハラハラドキドキすること、自然の描写により目の前に豊かな風景が広がること、そして教えられることがたくさんあるのに全然説教臭くないこと、その通りでした。人生の機微や人情が丁寧に描かれておりホロリとしました。そして読み終えてから「人は誰でも何かしら後悔の気持ちを抱えて生きている」というような言葉に一番ひかれて、この本を読んだ・・・と思いました。自分の人生を生きるということ、100%思った通りになんていかないけれども、それで良いのですよね。

『蝉しぐれ』は海坂藩の藩士 牧文四郎の物語です。逸平、与之助という仲間と道場で剣の腕を磨き、塾で勉学に励む毎日。両親との生活。淡い恋。様々な困難に耐えながら武士として成長していく姿が描かれています。

ところで特集では『蝉しぐれ』のドラマで主役の文四郎を演じた内野聖陽さんが出演し、ドラマの1シーンも流れていました。それを見て文四郎=内野さんになってしまった私。本を読んでいても、頭の中で内野さんが動いていました。ところが読んでいくと文四郎はまだ元服前の15歳の若者ではないですか!イメージ修正が大変でした。。。


「ららら科學の子」 矢作俊彦

2006年10月13日 | 本と雑誌

今日新聞で知ったのですが、「ららら科學の子」が文庫化されたとか。はじめて読んだ矢作俊彦さんの本で、読み終えてすぐ、もう一度読みました。最近は図書館で借りて読むことが多く、返してしまうと中々もう一度読むことはないので「面白かったけど少し難しくてわからないところがある」時や「その本の世界を心に刻みつけたいとき」に「二度読み」します。この本は後者で、私の憧れる世代の物語です。それは、学生運動をやっていて、長髪で、くたびれたGパンをはいて、という完全に私のイメージの世界。政治信条のことは、ひとまずおいておいて、その世代は泥くさくて「生きてる!」感じが、とてもあると思っています。

ストーリー : 1960年代、学園紛争のさなかに事件を起こして指名手配され中国に逃れた主人公が、30年後に日本へ戻ってきます。そして自分の頭の中にある祖国と現在の日本とのギャップに戸惑いつつ、日本の自分の家族をさがします。現在の出来事と、30年前と中国での出来事が交互に出てきます。

矢作俊彦さんは、ハードボイルド作家として有名で、この本でもスリリングな場面が多く、ハラハラさせられます。もう一つは、日本人だけれど、30年もの長い間、日本の様子を全く知ることなく過ごし、現在の日本に突然飛び込んだ主人公の目を通して「いま」を描いていること。それにより、当たり前に思っている現在に、「少し変なのかも」と疑いの気持ちを持ちます。(実際は、1998年くらいの連載なので、いまよりも少し前のことです。)私は、主人公と一緒になって、戸惑い、人生を振り返り、家族を懐かしみます。


「からくりからくさ」 「りかさん」 梨木香歩

2006年09月07日 | 本と雑誌

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「からくりからくさ」 4人の若い女性が、共同生活をすることになります。草木染めで糸を染めたり、はたを織ったり・・、この物語で描かれる、庭を大切にして、季節や自然に寄り添うような生活にとても憧れます。そんな静かな生活の中にも、色々なことが起こり・・・、読んでいくうちに、不吉な胸騒ぎがしてきます。もう、このままで・・・、できることなら時間をもどして欲しいけど、どんどん前に進むしかない。そして悲しみが・・・。それでも又、そこから前へと進んでゆける。

「りかさん」 りかさんという名前の人形と、ようこちゃんのお話。人形達の見てきた物語・・・。泣いてしまって、ちょっとすんなりとは読めませんでした。私が子供の頃大切にしていた人形のことを思い出しました。
「りかさん」は時代的には「からくりからくさ」の前の話ですが、後から書かれたようですし、内容的にも「からくりからくさ」を先に読んで正解だったと思いました。

梨木香歩さんの本を読むと、いつも深く感動するけれど、なぜだか前よりもピッタリとくるような気がする。私に梨木香歩さんのマインドが積もっていって、心の中の梨木香歩ワールドがどんどんひろがっていくようです。


「われら海を渡る」 深田祐介

2006年07月23日 | 本と雑誌

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海外で仕事をした人たちの事を取材して、著者が物語にまとめました。普通でも苦労は多いのに、異国で仕事をし、生活していくのには様々な苦労がともないます。その中でどのように生きてきたのかが、描かれています。みんな困難な局面にあたることはあります。でも何とか工夫して立ち向かう力は誰でも持っている、それを遠い国の人でもなく、昔の人でも偉人でもない、私のおじいさんのように近い人たちが証明してくれているように思うのです。とても勇気づけられます。また、外国の暮らし、考え方、そして日本人がこんな風に海外に出て行ったという歴史、今まで知らなかったことが多くありました。それを知ることも面白いです。

『日本航空欧州支配人』、『ドイツで寿司職人として働く江戸っ子』、『ヨーロッパの航空会社で働く日本人客室乗務員』、『ドイツのルールの炭坑で働いた日本人男性たち』、『オーペアという海外留学の仕組み』、『戦前の帰国子弟のその後』

中でも、客室乗務員として働いた女性たち、ドイツの鉱山男の話が強く印象に残っています。


「家守綺譚」 梨木香歩

2006年07月12日 | 本と雑誌

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NHK FMラジオで、この本の一部分が朗読されているのを聞いて、面白そうだと思い、読んでみました。亡き友の父親から留守宅の守を頼まれた青年の話で、何とも不思議な世界が日常生活として描かれています。

掛け軸が・・・、池が・・・、犬が・・・。

淡々としてはいるけど、かなり現実離れしているので、はじめはどんな風に読んだらいいのだろう?と、とまどいが・・・。でも多分、その通りに素直に読めばいいのかなと思い、そして梨木香歩ワールドへ・・・。なつかしい様な、ものがなしい様な気持ちで一杯になり梨木さんのファンになりました。