6月28日(木)
このところ日本では食の安全に関するモラルがなっていない。
お隣の中国の食が危険だ、とばかり言えなくなった感がある。
雪印、不二家などにつづき、今度は北海道・苫小牧にある小さな町工場・ミートホープ食品卸会社が、20年以上も前から牛肉のひき肉に、豚、鳥、鴨などの肉を混入販売したり、原産地や賞味期限などを偽っていたという。
また、偽装がばれて取引先から損害賠償請求されると、保険金請求を保険会社に行い、その得た金で賠償するという手法を使い、これがばれないように次々と保険会社を変えていたというから、悪質この上ない。
このミートホープ社は、とんでもないワンマン社長が経営する同属会社で、この悪質社長の指示ですべての悪事が20数年間おこなわれていたというのだからあきれ果てる。突然の解雇に困惑する従業員にも今後の生活のことを考えるとお気の毒の面もあり、ワンマンの下で一切抵抗ができなかったという事情は理解できないではないが、20数年の悪事の続くなかで、もっと速く何とかならなかったものか。
あるとき、余りにもひどいことの繰り返しに良心がとがめた社員が内部告発を役所にしたという。
ところが、これを受けた北海道農政局(農水省の出先機関)や道庁がこれを放置し何もしなかったという。何という怠慢か。怠慢も甚だしい。平成16年には、内部告発者を保護する法制も整備されたというのに(正式名称は「公益通報者保護法」)、役所側がこういう態度ではせっかくの法整備も空振りに終わってしまう。社保庁同様の怠慢さだ。
何しろ、食は、人の健康・生命などに係わる重要な事柄であるから、このような業務に携わる人々は、利益追求を優先するのではなく、衛生上の危害の発生の防止および国民の健康の保護につき最大限の注意を払うのが当然で、これは、これらを生業とする者のモラルでもある。これを欠く者はこれらにかかわる資格はない。そして、これらに違反した者に対しては厳罰を以って対処すべきである。
ところが、今回の事件でも、法的制裁は、せいぜい不当表示防止法違反(個人・法人とも最高で、50万円以下の罰金)、または食品衛生法違反(最高で、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金。法人は1億円以下の罰金)が問題となる程度である。そして、場合によっては、その成立要件は厳しいが、詐欺罪(10年以下の懲役)で立件ができるか、が問題となるくらいである。
ちなみに、一般消費者の保護を目的とするJAS法違反(最高で、懲役1年以下又は100万円以下の罰金。法人は1億円以下の罰金)に問えるかどうかについては、今回の事案は、問題の会社が卸なので、その適用は考えにくい面がある。
今回の事件に限らず、まだまだこの他にも同様なことが表には出ていないだけで沢山行われている可能性がある。いま、内心ドキドキの者もいることだろう。
既述のとおり、現在の食の安全に関する法制の罰則は軽すぎる。
罰則を厳しくしたからといってこの種の事件が無くなるとは思えないが、このようなことが頻繁に起こる以上、少しでも消費者の健康、食品の安全を守っていくためにも、この際、このような違反行為に対して厳罰を科す新法の整備を考える時期なのかもしれない。
※不当表示防止法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」です。
※JAS法の正式名称は「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」といい、JAS規格(日本農林規格)と食品表示(品質表示基準)の2つのことを定め、その適正表示により一般消費者の選択に資することを目的にしています。