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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.57(懲戒解雇その2)

2011年02月13日 | 会社の法律ミニレッスン
 会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第57回は、「懲戒解雇」その2です

 今日は、解雇予告と懲戒解雇について確認をしていきましょう。

 労働基準法第20条は、労働者(社員)を解雇する場合は、少なくとも30日前に解雇の予告をすること、予告できない場合には30日分以上の平均賃金を支払うことを使用者(会社)に義務づけています。

 この解雇予告は、解雇の種類を問わずすべての解雇に適用されます。つまり、懲戒解雇を行う場合でも解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いが義務づけられています。

 ところが、懲戒解雇の場合は解雇予告はいらない「即時に懲戒解雇」と考えている経営者の方が多くいます。
 どうしてでしょうか?もう一度、第20条を読みます。

 労働基準法第20条第1項
『使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。』

 そうです。最後の『労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない』ですね。これを間違って理解されている場合が多くあります。

 労働基準法は、解雇の原因が労働者の責に帰すべき事由にある場合は、所轄労働基準監督署長から解雇予告の除外認定を受けることを条件に、解雇予告の義務を適用しないと定めています。

 ここで注意!
 「労働者の責に帰すべき事由」と会社の「懲戒解雇事由」が必ずしも一致していないという点です。
 会社が懲戒解雇処分を決定したら、「労働者の責に帰すべき事由」に該当して除外認定されるとは限らないということです。除外認定を受けることができなければ、解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要になります。

 一般に除外認定のハードルはそれなりの高さがあると言われています。
 (3戦3敗と頭をかきながら経験を話された先輩社労士さんを思い出します。)
 「労働者の責に帰すべき事由」に該当するには、労働者(社員)の故意、過失またはこれと同視すべき事由であって、解雇予告制度により保護を与える必要のない程度に重大または悪質なものであり、使用者(会社)に解雇予告義務を課すことが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定すべきものとされています(解釈例規にはこのように難しく書かれています)。バランスですね。

 勝手に「解雇予告なし」にはできない、所轄労働基準監督署長からの除外認定が必要ということを忘れないで下さい。

厚生労働省から来年度雇用保険料率が告示

2011年02月12日 | 社会保険労務士
 来年度(平成23年度)の雇用保険料率が10日、厚生労働省から告示されました。
 今年度(平成22年度)と同じです。
  一般の事業…15.5/1000
  農林水産及び清酒製造の事業…17.5/1000
  建設の事業…18.5/1000 となります。

 (雇用保険料率)=(失業等給付の料率)+(雇用保険二事業の料率)
 で、二つに分かれています。

 失業等給付の料率は、労使折半で負担します。また、雇用保険二事業の料率は、事業主のみが負担することになっています。

 失業等給付の料率は、法律では19.5/1000と定められています。しかし、雇用保険受給者実人員の状況や積立金の状況を勘案し、一定の範囲内で、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて変更することが可能とされています(「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」第12条第5項)。来年度の失業等給付の料率については、本年1月31日に了承された「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告書」の中で、平成22年度に引き続き、法定の料率から4/1000引き下げるべきとされました。来年度も今年度の同じ15.5/1000となりました。

雇用保険料率
 労働者負担 事業主負担(失業等給付の料率+雇用保険二事業の料率)
 一般の事業…6/1000 9.5/1000(6/1000+3.5/1000)
 農林水産清酒製造の事業
        …7/1000 10.5/1000(7/1000+3.5/1000)
 建設の事業…7/1000 11.5/1000(7/1000+4.5/1000)


インターバル休息制度

2011年02月10日 | 社会保険労務士
【三菱重工労組 「インターバル休息制度」を要求へ】
  《日経Web 2011/2/10 2:00》

 三菱重工労働組合は今春の労使交渉で、「インターバル休息制度」を要求する方針を固めた。同制度で仕事を終えてから次の日の仕事を始めるまで一定の休息時間を確保できるようにして、長時間労働を抑制して組合員の健康を確保する。年間一時金は、昨年要求を若干上回る45万円プラス4カ月を要求する見通し。

 新制度は時間外の勤務を終えてから翌日の勤務開始まで7時間連続で休息できるようにする。顧客からの問い合わせ対応など突発的な事情で7時間の連続休息が確保できない場合は、既存の制度を利用して翌日を休めるようにする。

 ただ三菱重工労組はインターバル休息制度が導入されても当初は、繁閑の差が激しい部門では導入が困難な可能性もあると判断。決算期の財務担当や短納期品の設計担当の部門などが対象になると見ている。このため、制度の義務化は求めない方針。対象者を限定せず、罰則も設けない「努力義務」として導入を求める。

 同労組によると、インターバル休息制度は欧州などで導入例がある。国内は他産業では例があるが、三菱重工業が導入すれば「製造業で初めて」(同労組)としている。

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 勤務終了してから次の勤務までの間、一定時間は休息する

 一昨年、昨年春闘において、情報労連は勤務間インターバル規制の導入に向けた取組を行っていました。いくつかの組合で実際に勤務間インターバル規制を盛り込んだ協定の締結に至っています。
 記事にあるように、製造業では初めてでしょう。

 同じく記事は、インターバル休息制度は欧州などで導入例があると…
 EUでは、加盟国はすべてEU指令の内容を国内法として規定する義務を負っています。
  (EU指令はEU諸国における共通の基準となっています)
 勤務間インターバル規制の発想のもとになった『EU労働時間指令』(1993制定、2000年改定)があります。その中で『1日の休息期間:24時間につき最低連続11時間の休息期間』を求めています。
 
 三菱重工労働組合の要求は連続7時間の休息…
 一歩一歩、でも画期的な一歩です。

 36協定も特別条項で青天井…。これで変わる可能性があります。
 例えば、EU指令の連続11時間休息期間だと、拘束時間上限は休憩時間を含めて13時間。
 13時間×6=78時間が週の労働時間の上限になります。そして、78-40=38時間が残業時間の上限になります。
 三菱の場合は、17時間×6=102時間が労働時間の上限、102-40=62時間が残業時間の上限となります。

 昨年4月から改正労基法で割増率引上げられました。コストアップからの残業抑制でしたが、こちらは働く人の命や健康を守るという視点に立っての物理的な労働時間を規制でしょうか?

 この後のインターバル規制の導入に広がりに注目ですね。

平成21年度国民健康保険(市町村)の財政状況

2011年02月08日 | 社会保険労務士
 先週の4日、厚生労働省は「平成21年度国民健康保険(市町村)の財政状況等」を公表しました。
 以下、抜粋で紹介します。

■1.平成21年度の市町村国保の財政状況は、
(1)収入額…12兆8,975億円(1,809億円、1.4%増加)
(2)支出額…12兆8,070億円(1,619億円、1.3%増加)
(3)単年度収支差引額…61億円の黒字(前年比32億円黒字額の減少)。
    ※市町村が一般会計から決算補てん等を目的として繰入している分を除いた実質的な収支
    ▲2,633億円の赤字(前年より赤字額は増加)

■2.被保険者数…3,566万人(31万人減少)

■3.平成21年度の国民健康保険保険料(税)収納率…88.01%(前年比▲0.34)
    ※平成20年度以降の景気悪化の影響が大きいと思われる。

  保険者規模別にみると、
   政令都市及び特別区…85.89%(前年度比0.08%ポイント減)
   中核市…87.16%(同0.32ポイント減)
   被保険者数が10万人以上の市…85.56%(同0.07%ポイント増)
   5万人以上10万人未満の市…86.69%(同0.82ポイント減)
   5万人未満の市…89.47%(同0.38ポイント減)
   町村部平均…91.88%(同0.20ポイント減)

■4.平成22年6月1日現在の滞納世帯数…436万世帯(前年比16万世帯減少)
    ※総世帯数も減少したため、滞納世帯割合は、前年と同じ20.6%
    ※短期被保険者証交付世帯…128.4万世帯、資格証明書交付世帯…30.7万世帯

■5.保険料(税)収納率の状況【都道府県別】(市町村国保)
 都道府県 平成20年度(順位)平成21年度(順位)対前年度増減率(順位)
 滋賀県…91.71%(8) 91.29%(10)-0.43(28)
 京都府…91.66%(9) 91.38%(8) -0.28(15)
 大阪府…85.49%(45)85.80(44) +0.31(2)
 兵庫県…89.94%(28)89.57(26) -0.37(25)
 奈良県…90.17%(24)90.05(21) -0.11(7)
 和歌山県…91.53%(11)91.40(7) -0.13(8)

【政令指定都市及び特別区(東京23区)の保険料(税)収納率(市町村国保)】
 京都市…90.86%(3) 90.66%(4)-0.20(21)
 大阪市…83.18%(28)84.30(22)+1.13(2)
 堺市……88.73%(6) 88.65(6) -0.09(16)
 神戸市…90.84%(4) 90.79(3) -0.05(14)

11年度雇用保険料を据え置き 1.2%(厚労省方針)

2011年02月02日 | 社会保険労務士
 厚生労働省は1日、雇用保険料率を2011年度は1.2%に据え置く方針を発表しました。労働者・使用者それぞれ0.6%ずつ支払い、事業主は雇用保険2事業の分(3.5%)を合わせると155%を払うということも変わりません。

 失業給付は引き上げます。算定の基礎となる賃金の下限額を日額2000円から2320円にするということです。これにより、失業等給付の基本手当の日額の最低ラインは1600円から1856円に上昇します。早期に再就職した人に支給する手当も増やす方針です

 1日に開らかれた労働政策審議会(会長・諏訪康雄法政大教授)で、11年度は保険料率据え置きすることなどが妥当と答申が出されました。厚生労働省はこの答申を踏まえ改正案を作成し、今通常国会に提出します。(いつも決定がギリギリにになることが多いのですが、今年はどうなるのでしょうか?)

 雇用保険料率は失業等給付に係る労使が折半する部分(今年度と11年度は1.2%)と事業主が負担する二事業に係る保険料率(0.35%)に分かれています。労使折半部分の原則は1.6%ですが、今年度は、弾力条項を用いて1.2%に引き下げられていました。
 12年度以降は失業等給付に係る法定の保険料率(1.6%)も見直して1.4%にするしています。そして弾力条項を用いて(景気が悪かったりしたら下げることができる幅)、最大1.0%まで引き下げることができるようにするとのことです。
 昨日、協会けんぽで健康保険料率は引き上がることを取り上げましたが、雇用保険はそのままですね。

 もう一つの目玉は「失業等給付の充実」となっています。
■1.賃金日額
  算定の基礎となる賃金の下限額を日額2000円→2320円が引上がり
  それに伴って、基本手当の日額の最低も1600円→1856円に上がります。

■2.早期に再就職した場合に支給される「再就職手当」
  給付率の更なる引上げを行い、これが恒久化されます。
   ▽給付日数を1/3以上残して就職した場合
     給付率30%→40%(現在の暫定措置)→50%(恒久化)
   ▽給付日数を2/3以上残して就職した場合
     給付率30%→50%(現在の暫定措置)→60%(恒久化)

■3.就職困難者(障害者等)が安定した職業に就いた場合に支給される「常用就職支度手当」
  給付率が暫定的(30%→40%)に引上げられているものが恒久化します。

 最後にもう一つ、雇用保険法は失業給付などへの国庫負担を本則で25%と定めていますが、現在は13.75%です。これについて労政審は「引き続き検討し、できるだけ速やかに法律の本則に戻すべきだ」との見解を示しました。

 まだまだ厳しい状況にある雇用失業情勢等を踏まえての雇用保険制度の検討でした。これによって、労働者みなさんの生活の安定や再就職の促進が図られるといいですね。