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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

改正派遣法は24年10月1日施行 1.日雇派遣の原則禁止について

2012年08月13日 | 労働法
 改正労働者派遣法は、今年4月に公布されましたが、施行期日は予定通り、平成24年10月1日に決まりました。

 私も先日、大阪での改正法説明会へ行ってきました。1000名定員の会場がほぼ満席という状況でした。関心の高さが伺えました。

 日雇派遣の原則禁止、グループ企業派遣、マージン率等の情報提供…、色々あります。労働契約申込みみなし制度は平成27年10月1日施行予定、3年後になります。



▼日雇派遣の原則禁止
 事業規制の強化の一つとして、日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者(日雇労働者)の労働者派遣(日雇派遣)を禁止されました。

 ここで注意しなければならないのは「日雇派遣は原則禁止ですが、直接雇用による日雇就労が禁止されているわけではない」ということです。
 また、派遣元と労働者の労働契約が31日以上必要と言うことです。派遣元と派遣先の派遣契約ではありません。ややこしいですね~。

 しかしながら、原則禁止の例外が(やっぱり)あります。
 「業務」と「場合」の2つ
1.日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務
  今の政令26業務のうちのいくつかが認められています。例えば、
  ○ソフトウェア開発 ○機械設計 ○通訳、翻訳、速記…、などなどです。

2.雇用の機会の確保が特に困難な労働者を派遣する場合
  こういう方々はオッケーですよ。
 □ 60歳以上の方
 □ 雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる昼間学生)
 □ 生業収入が500万円以上の方
    副業として働くのはオッケーですよ、と言う意味でしょうか
 □ 生計を一にする配偶者等の収入により生計を維持する者で、世帯収入が500万以上
    例えば、夫の収入が500万以上ある家庭の妻ですね 


 さて、改正法施行に向けて、御社の準備は大丈夫ですか?

改正労働契約法が成立

2012年08月05日 | 労働法
 改正労働契約法が3日午前の参院本会議で、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立しました。来年4月に施行する予定です。

 改正の大きなポイントは、同じ職場で5年を超えて働く契約社員らを対象に、本人の希望に応じて契約期間を定めない無期限の雇用に変えることを企業に義務付けたことです。
 改正は、有期雇用(パートや契約社員など)約1200万人の雇用安定や待遇改善が目的です。
 一方、企業にとっては雇用管理の見直しが迫られることになります。

 有期雇用(契約社員)の中で5年を超えて働く人が3割。この人たちが希望すれば無期限の雇用への切り替えが企業に義務づけられます。
 労働基準法は1回の雇用契約を原則3年以内と定めていますが、何度も契約を結んだ場合の雇用ルールはこれまで作られていませんでした。この法律により、契約更新を繰り返し、5年を超えて同じ職場で働いたパートや契約社員は企業から突然雇い止めされる不安がなくなくなります。

 「私は来年の5月で5年超えたから希望しよう」はダメです。改正法が来年度中には施行される見通しです。このルールは、施行後に結んだり、更新した契約が対象となります(そこからカウントが始まります)。施行直後に契約を結んだ契約社員の方が5年を超える勤務期間になるのは最短で平成18年度からです。


 企業にとっては、慌てる必要はありませんが、法改正への対応準備は始める必要がありそうです。


 さて、この法改正でパート等で働く方々の雇用安定と(理不尽な)待遇格差の改善への道が開けたといえるのか?

 「これからは契約社員を雇う期間を5年以内にする」という対策がすぐに浮かんできます。
 一方、長期間働いて「それなりにやる気があって、経験も積み重ねて、ウチの貴重な戦力」というパートさんも多くいらっしゃるでしょう。5年目直前での契約を打ち切ることは考えづらいが、負担増もつらいという会社も多く出そうです。

 いわゆるクーリングオフ期間があります。改正法では、別の会社で働くなど会社を離れた期間が6カ月以上あれば、5年の積み上げの対象にしない規定を盛り込まれています。つまり、途中に雇用契約のない空白期間を挟めば、企業が何度でも契約更新できることになります。
 もちろん、これを悪用されると雇用が不安定になるという指摘もあります。

 これを機会に「気持ちよく一生懸命に働く、働いてもらう」そんな良い労使関係を作るために必要なことを改めてじっくりと考えていきたいものですね!

派遣法改正案は、再び継続審議に

2011年09月02日 | 労働法
  厚生労働省は1日午前、社会保障審議会の特別部会の初会合を開き、「社会保障・税一体改革」で決定したパートら非正規雇用労働者への厚生年金と健康保険の適用拡大について、具体的な基準の検討に入りました。

 野田政権の判断が注目されます。

 さて、労働者派遣法の改正案(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」)について

 「ああ、そう言えば、ありましたね、そんなのが…」という感想をお持ちの方も少なからずおられるのではないかと思います。昨年の4月に、登録型派遣の原則禁止及び製造業務派遣の原則禁止などを主な内容とした改正案が出されていました。先月末に閉会した国会では、質疑が行われることもなく再び、会期末処理により継続審議となりました。

 法案は昨年3月19日に閣議決定され、4月6日に国会に提出されました。そして、審議途中で会期末を迎えたため、継続審議扱いとなりました。その後、昨年秋の臨時国会では質疑は行われず、再び継続審議となり、今年の通常国会でも質疑は行われず、再び継続審議となっています。

 一度、廃案にして、再度、法案の見直しをして、よりよいものにしてから再提出が良いと考えている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?!

「執行役員は労働者」労災不認定を取り消し

2011年05月20日 | 労働法
【「執行役員は労働者」労災不認定を取り消し】
    《PSRネットワーク 2011/05/20》より

 出張先で死亡した建設機械販売会社の執行役員の男性について、労働基準監督署が「執行役員は労災保険法上の労働者に当たらない」と遺族補償を不支給としたのは不当として、妻が処分取り消しを求めた訴訟の判決が19日、東京地裁でありました。青野洋士裁判長は、男性の勤務実態などから「労働者」と認め、処分を取り消しました。

 原告側代理人の弁護士によると、執行役員を労働者と認定した判決は初めとのことです。

 判決によると、男性は05年2月、出張先の福島県内で倒れ死亡しました。妻は船橋労基署に遺族補償の給付を求めましたが、労基署は労働者性がないことを理由に、死亡と業務の因果関係を判断せずに請求を退けました。

 労働者性の判断について、青野裁判長は「会社の指揮監督の下に業務を行い、報酬を得ているかを実態に即して判断すべきだ」と指摘。その上で、男性が経営会議への出席を除き執行役員としての独自業務がなく、取締役会にも参加していないことなどから「実質的に一般従業員と同じだ」と結論付けました。

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 労災保険は、労働基準法上の労働者を対象とするものです。
 労働基準法上の「労働者」は、憲法での「勤労者」の概念を前提に、「事業又は事務所に使用される者」という限定が加えられています。

 労働基準法第9条
『この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。』

 個人事業主は労働者ではありません。法人、組合、団体の代表者、執行機関たる者も労働者ではありません。一方、法人の重役などで業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は労働者となります。

 さて、執行役員制。(「ソニーから始まった」でよかったかな?)
 「経営に専念する人(取締役)」と「業務の執行に専念する人(執行役員)」を分けて、それぞれの役割分担を明確にする制度です。経営の意思決定・監督機関としての取締役会とその意思決定に基づく業務執行機能を分離し、双方の機能強化を目指しています。

 執行役員は、会社の業務執行に対する責任と権限を持つ役員です。しかし、役員といっても、「代表取締役の指揮命令下にある会社使用人」であり、法的定義のある取締役とは異なります。役員(取締役)は取締役会の意思決定に参加、一方、執行役員は意思決定に直接は参加しない。執行役員は(取締役会から与えられた執行権限を用いて)担当業務の執行を担っていることが多いのではないでしょうか。
 執行役員は法律上は定められていない会社内部の任意的機関であるため、その地位と権限、責任等については明確でない点もあります。

 裁判長の「会社の指揮監督の下に業務を行い、報酬を得ているかを実態に即して判断すべきだ」との指摘はその通りでしょうね。

最高裁判決:業務委託契約者も労働組合法上の労働者

2011年04月13日 | 労働法
【業務委託契約者も労働者=INAX子会社の敗訴確定-最高裁】
     《時事ドットコム 2011/04/12-18:51》より

 INAX(現LIXIL)子会社の修理会社「INAXメンテナンス」と業務委託契約を結んだ個人事業主は、労働組合法上の労働者かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は12日、労働者に当たるとの判断を示した。
 労働者と認められれば、会社との団体交渉が可能になる。同様の訴訟は日本ビクターの子会社でも係争中。実質的に会社の仕事しかできないのに、業務委託などの形を取るケースは少なくなく、影響を与えそうだ。
 問題となったのは、INAX製品の修理点検をするカスタマーエンジニア(CE)と呼ばれる個人事業主。CEの加入する労組との団交拒否を不当労働行為とした中央労働委員会の救済命令に対し、会社側が取り消しを求め提訴していた。
 第3小法廷は、会社がCEとの契約内容を一方的に決め、CEは会社側の依頼に応じなければならない関係にある上、報酬も業務との対価性があると指摘。労働者と認められるとして、救済命令を取り消した二審判決を破棄し、会社側の請求を棄却した。会社側の敗訴が確定した。

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 同じ日に第3小法廷で、劇場側と個人として出演契約を結ぶ音楽家の場合の労働者性についての訴訟でも労組法上の「労働者」に当たるとする判決が出されました。ただし、契約を更新しなかったことが不当労働行為かどうかをめぐっては、審理を東京高裁に差し戻しました。

 よく「使用者」と「労働者」が労働法の世界では出てきます。
 ・労働基準法では第9条で「労働者」を第10条で「使用者」を定義しています。
 ・労働契約法では第2条1項で「労働者」を第2条2項で「使用者」を定義しています。
 ・労働組合法では第3条で「労働者」を第7条で「使用者」を定義しています。
 
 労働基準法第9条の「労働者」と労働組合法第3条の「労働者」は違います。
 例えば、プロ野球選手を労働者とは考える方は少ないと思いますが、プロ野球選手は組合を作っています。ストをしたことがありました。と、労働組合法上は労働者と認められたと言うことです。

 労働組合法第3条
『この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。』
 職種を問わず、賃金や給料などの収入によって生活する人が労働組合法上の「労働者」です。

 労働者であると
(1)憲法で保障される「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三つの権利が認められます。
(2)労働組合が賃金や解雇等で使用者と交渉する権利が団体交渉権です。
▼労働組合が団体交渉を申し込むが
▼会社(=使用者)が正当な理由もないのに労働組合の代表者との団体交渉を拒めば、
(3)労働組合法では、不当労働行為になると定めています。

 業務委託や請負の方は個人事業主であって労働者ではないとなると、労働法の保護の傘から外れることになります。
 例えば、仕事中にケガをしても労災保険が使えない(これには特別加入という制度があります)。契約になるので、いわゆる最低賃金の保障もなくなります。社員同じように働いているのに社会保険に加入されない。

 個人事業主として自分の判断で自由にバリバリ仕事をやっている人もいるでしょう。一方で、社員と同じような労働になっている人もいるでしょう。「諾否の自由」があるかが一つの大きな判断基準だと考えます。
 今回の最高裁の判断は、契約より実態を重視したと言うことでしょうか?
 業務委託や請負の形式であっても、実態が「雇用」と同一視できるなら労働法の保護対象とすべきとの判断でしょう。企業にとっては、再度、実態を見直すことが必要になりそうです。

 「労働者性」の解釈に違いが起こり、問題が発生、最後は訴訟になる。これはそもそも、法律上の「労働者」の定義があいまいだからでしょうね。厚生労働省の研究会は7月に中間報告を出すことになっています。