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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.24(1ヶ月単位の変形労働時間制)

2010年05月30日 | 会社の法律ミニレッスン
 企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第24回は「1ヶ月単位の変形労働時間制」です。

 まず、復習です。
 労基法の労働時間に関する規制の基本は1週40時間、1日8時間です。そして、業務の繁忙に応じた効率的な時間管理を可能にするのが「変形労働時間制」でした。
 変形労働時間制には、変形期間内の所定労働時間を平均して週の法定労働時間(40時間)を超えない限り、その期間内の一定の日や週に法定労働時間を超える所定労働時間を設定しても、時間外労働にはならないという効果があります。

 労働基準法第32条の2
「使用者は、労使協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えない定めをした場合においては、特定された週又は特定された日において法定労働時間を超えて、労働させることができる。」

 【1ヶ月単位の変形労働時間制】
 1ヶ月以内の一定期間を平均して週40時間の法定労働時間以内であれば、特定の日・週に1日8時間または週に40時間を超える所定労働時間を設定しても違法になりません。(法定労働時間を超えた時間でも所定労働時間とすることができ、時間外労働になりません)

□例…21日以降が時間外労働にはなりません。
 1.1日~20日は、
  始業時刻9時、終業時刻16時、休憩時間は1時間…所定労働時間6時間
 2.21日~25日
  始業時刻9時、終業時刻19時、休憩時間は1時間…所定労働時間9時間
 3.26日~末日
  始業時刻9時、終業時刻20時、休憩時間は1時間…所定労働時間10時間

 ※休日は、1日~20日の間に6日、21日~25日の間に1日
   26日~31日の間に1日あるとする。31日までの月の場合、
 1日~20日の総労働時間……84H 6H×(20-6)=84H
 21日~25日の総労働時間…36H 9H×(5-1)=36H
 26日~31日の総労働時間…50H 10H×(6-1)=50H
 この月の総労働時間は、170時間になります。

□総労働時間
 変形期間(1ヶ月以内の一定期間)における労働時間の総枠
   =週法定労働時間×(変形期間の暦日数÷7日)
 31日の月…177.1時間(=40時間×31日÷7日)
 30日の月…171.4時間(=40時間×30日÷7日)
 28日の月…160.0時間(=40時間×28日÷7日)

 と言うことで、170<177.1で先の例は問題がないことが確認できました。
 時短にもつながりますね。残業代対策では基本中の基本です。

□導入するには
 1.就業規則その他これに準ずるものに必要事項を記載する
 2.労使協定に記載する
 のどちらかの方法で行わなければなりません。
2の労使協定の場合には、
 ア、労使協定の有効期限を定めること
 イ、労使協定届(様式第3号の2)を所轄労働基準監督署へ届け出ること
 加えて、就業規則の変更届けも必要になります。
1の就業規則その他これに準ずるものによる導入の場合も、就業規則の変更は必要になります。

 今日も長くなりました。要件以降は次へ回します。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

過労死訴訟、社長の賠償責任も認定

2010年05月29日 | 社会保険労務士
 先日、全国チェーンの飲食店の店員がなくなったのは過労が原因として、店を経営する会社と社長ら役員4人に、約7800万円の支払いを命じる判決が言い渡されました。

 原告側代理人の弁護士によると過労死をめぐって大手企業トップの賠償責任を認めた司法判断は初めてとのこと。従業員の健康と安全を守ることは、企業にとっての最大の責務であることはいうまでもありません。

 憲法第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 文化的な最低限度の生活の前にしっかりと「健康」と明記されています。

 判決理由では、同社の基本給が、厚生労働省による過労業務の認定基準である月80時間の時間外労働を前提としていると指摘し、「労働時間について配慮していたとは全く認められない」と結論付けられました。

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《asahi.com 2010年5月25日より引用》
 過労死問題に詳しい森岡孝二・関西大教授(企業社会論)の話 働き過ぎを強いるような「殺人的給与体系」をとっていた企業と、それを改善しなかった経営者の賠償責任をともに認めた点で、画期的な判決だ。長時間労働が半ば当たり前になっている外食業界などでは、実際には一定の残業時間や販売ノルマなどを超えないと受け取れない給与を「基本給」であるかのように示して雇用する例が少なくない。この行為は、労働条件の明示義務を定めた労働基準法の趣旨に反する。今回の判決は、過労死を防ぐための企業の安全配慮義務に沿って判断しており、すべての企業経営者に与える衝撃と影響も大きいだろう。(以下略)
 
  ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 厚生労働者は、脳出血や心筋梗塞(こうそく)などによる過労死を労災認定する際の基準は
 労働時間の目安(時間外労働)が
□「業務と発症との関連性が強い」
 発症前1カ月間に約100時間、または
 発症前2~6カ月間に1カ月あたり約80時間を超える場合。
□業務と発症との関連性が徐々に強まる
 発症前の1~6カ月間に時間外労働が1カ月あたり約45時間を超える場合。
としています。

総合労働相談件数 過去最高を更新

2010年05月27日 | 労働法
 厚生労働省は、平成21年度個別労働紛争解決制度施行状況を発表しました。

 「個別労働紛争解決制度」は、平成13年10月の施行されました。労働者と企業のトラブルを裁判に持ち込まずに迅速に解決することを目指す制度としてスタートしました。全国の総合労働相談コーナーが設けられ、昨年の寄せられた総合労働相談の件数は約114万件(昨年度比6.1%増)に上りました。

 発表から
 ■総合労働相談件数………1、141,006件(昨年度比6.1%増)
 ■民事上の個別労働紛争相談件数……247,302件(昨年度比4.3%増)
 ■助言・指導申出件数……7,778件(昨年度比2.4%増)
 ■あっせん申請受理件数…7,821件(昨年度比7.5%減)
  ※増加率としては、年度途中にリーマンショックが発生した平成20年度と比べると低下
   しかし、件数としては、引き続き増加し、いずれも過去最高を更新とのことです。

 紛争の内容は、
 例年同様「解雇」が全体のほぼ4分の1を占める24.5%(同0.5ポイント減)で最多
 「労働条件の引き下げ」が13.5%(同0.4ポイント増)で目立ちます。
 「いじめ・嫌がらせ」は12.7%(同0.7ポイント増、2年ぶりに過去最多を更新)
  …パワハラにご注意下さい!
 
 相談者別は、
 期間契約社員(15.6%増)とパート・アルバイト(10.5%増)が急増しています。
 正社員は6.1%増、また、派遣労働者は38.5%減でした。

【参考】として全国地方裁判所でも
 平成21年労働関係民事通常訴訟事件の新受件数 3,218件(平成20年2,441件)
 平成21年労働審判事件の新受件数 3,468件(同2,052件)

 総合労働相談件数は約114万件で個別労働紛争相談件数は約24件、残りの89万件はどこに行ったのでしょうか?労働基準法や労働者派遣法違反などの相談なので、各地の労働基準監督署などが対応しています。あっせんが減少しました。これについては、「前年度に深刻な相談が減り、あっせんに至らず助言・指導で済む案件が増えている可能性がある」と厚労省は分析しています。

育児休業後の職場復帰支援サービス広がる

2010年05月26日 | 社会保険労務士
6月30日からの改正育児・介護休業法の施行が近づいてきました。

【育児休業後の職場復帰支援サービス広がる 研修など提供】
           《日経Web 2010/5/26 1:06》より
 6月末の改正育児・介護休業法の施行をにらみ、育児休業を取得した従業員の職場復帰を支援するサービスが東京都内で広がっている。企業と契約し、従業員の研修を手がけたり、社内の制度作りを助言したりする。行政も支援を拡充しているが、不足する保育園の整備など、働きながら子育てできる環境を整えるにはなお課題も多い。

 職場復帰の支援サービスを提供するウィウィ(東京・新宿、山極清子社長)はネットでの講座などサービスを強化する。同社は資生堂の育児支援事業から派生したベンチャー企業。すでに育児休業を取得している人向けに、英会話やIT(情報技術)、マネジメントなどを学べる講座をネット上で実施したり、育児や職場復帰に関する悩み相談に電話で24時間対応したりしている。

 育児・介護休業法の改正などで「中小や地方も含め育児を支援する制度を導入する企業は増える」(山極社長)とみており、中小企業などの取引先開拓を強化する。現在約360社・団体と契約しているが、3年後に1000社・団体に増やす目標を掲げる。(以下略) 

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 育児休業を取得している人にとっては、スムーズに職場復帰できるか心配です。

 休業中に自分スキルは落ちていない?大丈夫なのか?うまくやっていけるのか?小・中学生のときに長い休みが終わって久々に登校するときの不安は誰もが経験しているのではないでしょうか?そのときは同時に学校へ行ける、友達に会えるという楽しみを伴っていましたが、育休明けには楽しみはなくて、ただただ不安いっぱいの方も多いのではないでしょうか?

 パパママ育休プラスの制度も、スムーズな職場復帰を応援する制度です。復帰時のひと月ふた月の支えは大切だと考えます。この制度が有効に活用されるといいですね。

 育児休業制度を導入する企業に対し助言するサービスを様々なところで始まっていることを記事は紹介していました。ビジネスチャンスでもあるわけですね。就業規則や労働協約の作成や、行政への助成金申請手続きの支援、短時間勤務制度を導入する企業向けの支援サービスなどが本格的に始められています。私たち、社会保険労務士も専門家として支援することができます。

 私も先日「育児・介護休業法セミナー」として改正内容の勉強会を実施し、多くの企業で関心が高まってきていることを感じました。あと1ヶ月です。準備は万全でしょうか?
 お気軽にお問い合わせ下さい。

平成21年度の未払賃金の立替払総額は約334億円

2010年05月24日 | 社会保険労務士
 厚生労働省が昨年度(平成21年度)の未払賃金の立替払事業の実施状況を公表しました。
 厳しい状況を表すかのように、利用が急増していました。ただ、下半期は上半期と比べ、支給者数も立て替え額も10%以上減っていました。峠は越えたのでしょうか?
 
 企業数…4,357件 (対前年度比9.7%増加)
  ※これは、制度発足(昭和51年)以来過去2番目に多い件数
 支給者数…67,774人 (対前年度比24.5%増加)
  ※これもまた、制度発足以来過去2番目に多い人数
 立替払額…333億92百万円 (対前年度比34.5%増加)
  ※制度発足以来過去3番目に多い額で、立て替え総額は4年連続増加です。
   平成15年度以来6年ぶりに300億円を超えました。
 1人当たりの平均額…49万3千円
 業種別…製造業(立て替え総額の31.5%)、建設業(同16.5%)、商業(14%)
 企業規模別…従業員300人未満の中小・零細企業が立て替え総額の88.9%


 「賃金支払い確保等に関する法律」に規定される未払賃金の立替払制度は、企業倒産に伴い、賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、未払賃金の一部を国が事業主に代わって立替払する制度です。
 対象となる未払賃金は、退職日の6ヶ月前の日から機構に対する立替払請求の日の前日までの間に支払日が到来している「定期賃金」及び「退職手当」で未払のものに限られます。
 30歳未満の者には、110万円の8割
 30歳以上45歳未満の者には、220万円の8割
 45歳以上の者には、370万円の8割(=296万円)
という上限設定があります。

 立て替え払いを請求する人は、独立行政法人労働者健康福祉機構へ一定事項を記載した請求書を提出します。なお、立て替え請求ができるのは、倒産等があった日の6ヶ月前から2年間の期間内に退職した場合に限られます。法的整理に入った企業や、事業活動停止など事実上の倒産状態となった中小企業などの労働者が対象と色々と要件はあります。詳しくは、独立行政法人労働者健康福祉機構のHPで確認して下さい。

 ちなみに、この事業は労災保険法に規定する社会復帰促進等事業として行われています。
(このことも、社労士受験生の皆さんは押さえておいて下さいね!…出ないかな?)

 独立行政法人労働者健康福祉機構のHPは、こちら↓↓
http://www.rofuku.go.jp/kinrosyashien/miharai.html
 厚生労働省の発表は、こちら↓↓
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000006f4x.html