会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!
第61回は、「休業手当」です。
労働基準法第26条(休業手当)
『使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。』
このたびの東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)で被害を受けた事業場(会社)では、事業が続けられないことや著しく制限される状況にあります。被災地以外でも、鉄道や道路等の途絶から原材料、製品等の流通に支障が生じていることや計画停電の影響で休業をしなけれなならない会社もあると思います。にわかに「休業手当」という言葉を目にするようになった方も多いのではないでしょう。今日は、休業手当について確認をしていきます。
さて、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業により労働者が就業できなかった場合には、その休業期間中、平均賃金の6割以上の休業手当を支払うことを使用者に義務つけています。
■「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは、どこまでの範囲でしょうか。
使用者の故意、過失または信義則上これと同視すべきものよりも広く解釈されます。
しかし、不可抗力によるものは含まれません。
次のような場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しません。
(1)このたびの地震のような天災事変などの不可抗力による休業
(2)労働組合が争議をしたことにより、同一事業場の労働組合員以外の労働者が労務提供し得なくなった場合にその程度に応じて労働者を休業させる場合
(3)使用者が各法令を順守することによって生ずる休業
なお、(3)の例としては、労働安全衛生法第66条による健康診断の結果に基づいて、休業や労働時間の短縮を行った場合などがあります。
ストとともに最も多く問題となるのが、いわゆる経営障害の場合です。
資材、設備等の欠陥がもとになる休業は営業設備の範囲内の事故となり、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。
例えば、~通達(昭和23.6.11 基収第1998号)から~
親会社からの資材資金の供給を受けている事業を行う下請工場が、親会社の経営難により資材資金を獲得できず休業した場合でも、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するとされています。
今回出された「地震に伴う休業に関する取扱いについて」の一部を再度掲載します。
なお、本ブログは3月23日分で記載しています。
■Q4
今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。
□A4
労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。
■Q5
今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていませんが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。
□A5
今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。ただし、休業について、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。
■Q6
今回の地震に伴って計画停電が実施され、停電の時間中を休業とする場合、労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
□A6
今回の地震に伴って、電力会社において実施することとされている地域ごとの計画停電に関しては、事業場に電力が供給されないことを理由として、計画停電の時間帯、すなわち電力が供給されない時間帯を休業とする場合は、原則として、労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当を支払わなくても労働基準法違反にならないと考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。
■Q7
今回の地震に伴って計画停電が実施される場合、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて1日全部を休業とする場合、労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
□A7
計画停電の時間帯を休業とすることについては、Q6の回答のとおり、原則として、労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられますが、計画停電の時間帯以外の時間帯については、原則として労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業に該当すると考えられます。ただし、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて、原則として労働基準法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当を支払わなくても労働基準法違反とはならないと考えられます。
「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!
第61回は、「休業手当」です。
労働基準法第26条(休業手当)
『使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。』
このたびの東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)で被害を受けた事業場(会社)では、事業が続けられないことや著しく制限される状況にあります。被災地以外でも、鉄道や道路等の途絶から原材料、製品等の流通に支障が生じていることや計画停電の影響で休業をしなけれなならない会社もあると思います。にわかに「休業手当」という言葉を目にするようになった方も多いのではないでしょう。今日は、休業手当について確認をしていきます。
さて、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業により労働者が就業できなかった場合には、その休業期間中、平均賃金の6割以上の休業手当を支払うことを使用者に義務つけています。
■「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは、どこまでの範囲でしょうか。
使用者の故意、過失または信義則上これと同視すべきものよりも広く解釈されます。
しかし、不可抗力によるものは含まれません。
次のような場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しません。
(1)このたびの地震のような天災事変などの不可抗力による休業
(2)労働組合が争議をしたことにより、同一事業場の労働組合員以外の労働者が労務提供し得なくなった場合にその程度に応じて労働者を休業させる場合
(3)使用者が各法令を順守することによって生ずる休業
なお、(3)の例としては、労働安全衛生法第66条による健康診断の結果に基づいて、休業や労働時間の短縮を行った場合などがあります。
ストとともに最も多く問題となるのが、いわゆる経営障害の場合です。
資材、設備等の欠陥がもとになる休業は営業設備の範囲内の事故となり、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。
例えば、~通達(昭和23.6.11 基収第1998号)から~
親会社からの資材資金の供給を受けている事業を行う下請工場が、親会社の経営難により資材資金を獲得できず休業した場合でも、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するとされています。
今回出された「地震に伴う休業に関する取扱いについて」の一部を再度掲載します。
なお、本ブログは3月23日分で記載しています。
■Q4
今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。
□A4
労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。
■Q5
今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていませんが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。
□A5
今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。ただし、休業について、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。
■Q6
今回の地震に伴って計画停電が実施され、停電の時間中を休業とする場合、労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
□A6
今回の地震に伴って、電力会社において実施することとされている地域ごとの計画停電に関しては、事業場に電力が供給されないことを理由として、計画停電の時間帯、すなわち電力が供給されない時間帯を休業とする場合は、原則として、労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当を支払わなくても労働基準法違反にならないと考えられます。なお、Q2、A2もご覧ください。
■Q7
今回の地震に伴って計画停電が実施される場合、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて1日全部を休業とする場合、労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
□A7
計画停電の時間帯を休業とすることについては、Q6の回答のとおり、原則として、労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられますが、計画停電の時間帯以外の時間帯については、原則として労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業に該当すると考えられます。ただし、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて、原則として労働基準法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当を支払わなくても労働基準法違反とはならないと考えられます。