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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.68(記録の保存)

2011年05月29日 | 会社の法律ミニレッスン
会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第68回は、「記録の保存」です。

 労働基準法第109条(記録の保存)
『使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。』

 労働者名簿と賃金台帳はわかりますが、以下がわかりにくいですね。
  雇入…雇い入れ通知書
  解雇…解雇通知書
  その他労働関係に関する重要な書類…出勤簿、タイムカード、36協定書など
 以上のようなものが該当します。

■いつから?
 記録保存期間の起算点(などと難しく言いますが)、要は、いつから3年間なのか?
 これが、書類によって異なります。労働基準法施行規則第56条に定められています。
(1)労働者名簿…労働者の死亡、退職または解雇の日
(2)賃金台帳…最後に記入した日
(3)雇入、解雇または退職に関する書類…労働者の解雇、退職または死亡の日
(4)災害補償に関する書類…災害補償が終わった日
(5)賃金その他労働関係に関する重要な書類…その完結の日

 今やペーパーレスの時代、パソコンで保存も多いでしょう。
 保存が義務つけられている書類(労使協定以外)については
(1)画像情報の安全性が確保
(2)正確に記録、長期間にわたって復元可
(3)労働基準監督官の臨検など、保存書類の閲覧、提出などが必要なときに、直ちに必要事項が明らかにされ写しを提出できる
 がすべて満たす場合は同条違反になりません。

労働基準法での記録の保存は以上ですが、他にも多くの法令があります。さて、他の法令では?
■労働安全衛生法関係
  安全衛生委員会議事録…3年間
  健康診断個人票…5年間
  粉じん作業環境測定記録…7年間
  特別管理物質製造・取扱作業記録…30年間
■雇用保険
  被保険者に関する書類…4年間
  その他の関係書類…2年間
  60歳到達時賃金月額証明書の事業主控え…7年
■労働保険徴収関係…3年間
■健康保険に関する書類…2年間
■厚生年金に関する書類…2年間
□税法関連の書類…原則7年間(源泉徴収票。扶養控除申告書など)
□商法関連…10年間(株主総会議事録、取締役会議事録、決算書など)  

労働相談、助言・指導件数は高止まり

2011年05月26日 | 社会保険労務士
 昨日、厚生労働省から「平成22年度個別労働紛争解決制度施行状況」が公表されました。
 
 「個別労働紛争解決制度」は、今年10年目を迎えます。労働関係についての個々の労働者と事業主との間の紛争を円満に解決するために設けられた制度ですが、22年度も「労働相談、助言・指導件数は高水準を継続」のまとめられており、大きな役割を果たしていると言えるでしょうね。

 公表された平成22年度の状況をまとめたから

【平成22年度の相談、助言・指導、あっせん件数】
 □総合労働相談件数…113万234件(前年度比0.9%減)
 □民事上の個別労働紛争相談件数…24万6,907件(同0.2%減)
 □助言・指導申出件数…7,692件(同1.1%減)
 □あっせん申請受理件数…6,390件(同18.3%減)

(1)相談、助言・指導件数は高止まり
 総合労働相談、民事上の個別労働紛争に係る相談、助言・指導申出受付件数は、過去最高を記録した平成21年度と同水準で高止まりしている一方、あっせん申請受理件数は減少した。

(2)相談内容は『いじめ・嫌がらせ』が増加し、紛争内容は多様化
 『いじめ・嫌がらせ』、『その他の労働条件(自己都合退職など)』といった相談が増加する一方、『解雇』に関する相談が大幅に減少、紛争内容は多様化した。

(3)制度利用者の内訳は、正社員が減り、非正規労働者が増加
 相談、助言・指導、あっせんの利用者は主に労働者であるが、正社員の割合が減少し、パート・アルバイト、期間契約社員といった非正規労働者の割合が増加した。

 □平成22年度の民事上の個別労働紛争相談の相談者
  労働者(求職者を含む)…81.2 %、事業主…11.4%
  ●労働者の就労状況は、
   『正社員』…44.0%、『パート・アルバイト』…17.6%、
   『期間契約社員』…10.2%、『派遣労働者』…4.0%

(4)迅速な処理を実現
 助言・指導は1カ月以内に97.6%、あっせんは2カ月以内に93.6%が処理終了しており、『簡易・迅速・無料』という制度の特徴を活かした運用がなされている。

 高止まりの中で、相談者は正社員、派遣労働者が減り、パート・アルバイト、期間契約社員が増加とのこと。今後も今まで以上に「パート・アルバイト、期間契約社員の雇用管理」が大切になるように感じます。手前味噌ですが、弊社主催のセミナーもご活用下さい。

 有期雇用法制化の声が聞こえる今こそ重要
   ~パート・契約社員の有期雇用管理を再点検~

   【MIU勉強会5 労務管理基礎講座(パートタイマー編)】   
  日 時:平成23年6月7日(火)午後6時30分~午後8時30分
  場 所:クレオ大阪中央3F研修室2 (大阪市天王寺区上汐5丁目6番25号)
  参加費:3000円(当日、お支払いをお願いします)

 ※ご参加の連絡:
   弊オフィスホームページの「お問い合わせ」からお申し込み下さい。
   お問合せ内容のところに「6月7日セミナー参加希望」とご記入下さい。
   または当オフィスHPよりチラシをダウンロードの上FAXをご送付下さい。
      
 当オフィスホームページおよび詳細はこちらから↓↓↓
   6月7日(火)「パート・契約社員の有期雇用管理を再点検」セミナー

今春の大卒就職率、氷河期並み-最低水準の91%に

2011年05月25日 | 社会保険労務士
【今春の大卒就職率、氷河期並み-最低水準の91%に】
   《PSRネットワーク 2011/05/25》より

 大学を今春卒業した就職希望者のうち、4月1日現在で就職した人の割合が91.1%になり、前年同時期を0.7ポイント下回ったことが24日、文部科学省と厚生労働省の調査で分かりました。東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県分は除いた暫定値ですが、比較可能な1996年度以降、就職氷河期と呼ばれた過去最低の2000年卒の水準に並びました。内定を得られなかった大卒者は約3万3000人とみられます。

 調査は全国の大学と専門学校など112校の計6250人が対象で、被災3県の6校320人分は改めて集計することとしています。

 就職率低迷の背景には、グローバル化に伴う大企業の国内採用の厳選や、採用意欲が高い中小企業と大手志向が強い学生とのミスマッチ問題などがあります。

 大卒で就職を希望した人の割合は66.4%で前年を0.4ポイント下回りました。就職率は男女別、国公私立、文系・理系を問わず前年を下回りました。昨年10月時点の内定率は前年比4.9ポイント低下し、57.6%でしたが、最終的な就職率は0.7ポイントの低下で9割台を確保しました。

 文科省は「未内定者を採用した企業に奨励金を出すなど、支援を強化した成果が出た。震災の影響による内定取り消しも懸念したほど多くはなかった」と分析しています。

 一方、厚労省によると、学校やハローワークを通じて求職した高校新卒者の3月末の内定率は95.2%で、前年同期比1.3ポイント上昇。就職を希望する高卒者全員を対象にした文科省調査でも1.6ポイント上昇し93.2%になりました。厳しい就職状況を踏まえて学校側が対策に力を入れた結果です。

   ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 1人前になるまでには、何年間が必要です。新卒を採用しようと考える企業は体力のある企業です。
 そして、将来の自社を背負う人材を育てようという意欲あふれる会社です。大企業だけでなく、力のある良い中堅中小企業がたくさんあります。

 まだ決まっていない人もあきらめずにがんばって下さい。
 まずは(もうすでに訪問しているでしょうけれども)「新卒応援ハローワーク」へ

□社長さん、採用担当者のみなさんには、 
 「3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金」
 「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」
 「既卒者育成支援奨励金」
 3つの奨励金の活用も今一度考えて下さい。

コンプライアンス経営へ No.67(未払い賃金の立替払制度)

2011年05月22日 | 会社の法律ミニレッスン
会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第67回は、「未払い賃金の立替払制度」です。

 「会社が倒産をした。今月の給料はどうなるの???」
 そんなときに「未払賃金立替払制度」があります。

■未払賃金立替払制度とは?
「未払賃金立替払制度」とは、「賃金の支払の確保等に関する法律」(以下「賃確法」という。)に基づき、企業が「倒産」したために賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、その未払賃金の一定の範囲について、国が事業主に代わって支払う制度です。

■立替払を受けることができるのは?
 使用者(会社)が
(1)労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業で1年以上事業活動を行っていた
   (法人、個人の有無、労災保険の加入手続きの有無、保険料納付の有無は問いません。)。
(2)法律上の倒産又は事実上の倒産に該当することとなったこと。
 ▽法律上の倒産
1.破産法に基づく破産手続きの開始
 2.会社法に基づく特別清算の開始
 3.民事再生法に基づく再生手続の開始
 4.会社更生法に基づく更生手続の開始
     について裁判所の決定又は命令があった場合
 ▽中小企業における事実上の倒産
 事業活動に著しい支障を生じたことにより、労働者に賃金を支払えない状態になった
 1.事業活動が停止
 2.再開する見込みがない
 3.賃金支払能力がない状態になった
     ことについて労働基準監督署長の認定があった場合

■立替払の請求ができるのは?
 労働者が、次に揚げる日の6か月前から2年の間に退職していること
(1)倒産について裁判所への破産申立等が行われた日
(2)事実上の倒産の場合は、労働基準監督署長への認定申請が行われた日
 ※未払賃金の総額が2万円未満の場合は立替払を受けられません。

■立替払される額は?
1.対象となる未払賃金
  退職日の6か月前の日から立替払請求の日の前日までの間に支払日が到来している「定期賃金」及び「退職手当」で未払のもの
 ○対象にならないもの
  *賞与その他臨時的に支払われる賃金
  *解雇予告手当
  *賃金に係る遅延利息
  *慰労金や祝金名目の恩恵的又は福利厚生上の給付、実費弁償としての旅費等
○税、社会保険料、その他の控除金の控除前の額です。
  ただし、社宅料、会社製品の購入代金、貸付金返済金等については控除します。

2.立替払される賃金の額は、未払賃金総額の8割
  ただし、上限設定あり。
   未払賃金総額には、退職日の年齢に応じて限度額が設けられています。
   未払賃金総額が限度額を超えるときはその限度額の8割となります。

 基準退職日
  45歳以上…限度額は370万円(上限額296万円)
  30歳以上45歳未満…220万円(176万円)
  30歳未満…110万円(上限額88万円)


■東日本大震災に伴う未払賃金の立替払制度についてQ&Aから
Q2 震災により賃金に関する書類はほとんど残っていませんが、立替払の請求はできますか。
【A】
 勤務していた会社のことや給与に関係する書類は存在するものは何でも結構ですので、ご用意ください。それがなくても、これまでの賃金の支払状況などが確認できれば請求の手続は可能ですので、労働局又は労働基準監督署にお尋ねください。

Q3 震災前から支払が滞っていた賃金や退職金も立替払されますか。
【A】
 立替払の対象となるのは、毎月の給与支払日に支払われる定期賃金と退職金であって、賞与(ボーナス)は対象になりません。給与支払日が来ているのにまだ支払がされていない賃金が対象になりますが、そのうち退職日の6月前の日以降の未払賃金が対象になります。
仮に、今回の震災発生日(3月11日)に退職した場合、平成22年9月11日以降の給与支払日に支払われるべき賃金が対象になります。

Q5 外国人、パートタイマー、アルバイトは立替払の対象となるのですか。
【A】
 立替払を受けることができる方は、労働者として雇用されてきて倒産に伴い退職し、未払賃金が残っている方であり、国籍やパートタイム労働者、アルバイトなど正規・非正規社員などを問わず対象となります。ただし、法人登記簿に登記されている役員で役員報酬を受けていた方など労働者でない方は対象となりません。

Q6 申請できる期間はいつまでですか。
【A】
 まず、企業が倒産状態にあることについて、労働基準監督署長の認定を受けていただくことが必要になりますので、罹災証明書などの企業が倒産状態にあることがわかる資料がある場合には、これらとともに最寄りの労働基準監督署に、退職してから6月以内に申請してください。
 仮に、震災発生日(3月11日)に退職した場合、平成23年9月11日までに、退職した方のうちどなたかお一人でも申請していただければ結構です。

Q7 会社の代表者が行方不明ですが、立替払の請求をすることは可能でしょうか。
【A】
 会社の代表者の方が行方不明の場合でも、立替払の請求は可能です。

Q8 今回の震災により、夫が勤めていた会社が倒産し、賃金が未払となっているのですが、夫は死亡してしまいました。私が代わりに立替払の請求をすることは可能でしょうか。
【A】
 ご遺族がその方の名で申請することが可能です。なお、亡くなったことがわかる死亡診断書などの書類や続柄がわかる戸籍謄本などの書類をご用意ください。

Q9 私は会社の代表者ですが、今回の震災で事業場が大きな被害に遭い、労働者に給与が払えない状況です。多くの労働者やその遺族が各地に避難していますので、私が給与未払いとなっている労働者の給与についてまとめて申請し、各労働者等に配付したいと思っています。このようなことは可能ですか。
【A】
 会社が倒産状態にあることを認定するための認定申請は労働者の方から行っていただくことが必要ですので、連絡のつきやすい労働者のどなたかお一人で結構ですので、申請をお勧めしてください。なお、各地に避難していらっしゃる労働者等の方々についての情報をいただければ、頂いた情報で事務処理がより円滑に進むものと考えますので、ご協力ください。

「執行役員は労働者」労災不認定を取り消し

2011年05月20日 | 労働法
【「執行役員は労働者」労災不認定を取り消し】
    《PSRネットワーク 2011/05/20》より

 出張先で死亡した建設機械販売会社の執行役員の男性について、労働基準監督署が「執行役員は労災保険法上の労働者に当たらない」と遺族補償を不支給としたのは不当として、妻が処分取り消しを求めた訴訟の判決が19日、東京地裁でありました。青野洋士裁判長は、男性の勤務実態などから「労働者」と認め、処分を取り消しました。

 原告側代理人の弁護士によると、執行役員を労働者と認定した判決は初めとのことです。

 判決によると、男性は05年2月、出張先の福島県内で倒れ死亡しました。妻は船橋労基署に遺族補償の給付を求めましたが、労基署は労働者性がないことを理由に、死亡と業務の因果関係を判断せずに請求を退けました。

 労働者性の判断について、青野裁判長は「会社の指揮監督の下に業務を行い、報酬を得ているかを実態に即して判断すべきだ」と指摘。その上で、男性が経営会議への出席を除き執行役員としての独自業務がなく、取締役会にも参加していないことなどから「実質的に一般従業員と同じだ」と結論付けました。

   ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 労災保険は、労働基準法上の労働者を対象とするものです。
 労働基準法上の「労働者」は、憲法での「勤労者」の概念を前提に、「事業又は事務所に使用される者」という限定が加えられています。

 労働基準法第9条
『この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。』

 個人事業主は労働者ではありません。法人、組合、団体の代表者、執行機関たる者も労働者ではありません。一方、法人の重役などで業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は労働者となります。

 さて、執行役員制。(「ソニーから始まった」でよかったかな?)
 「経営に専念する人(取締役)」と「業務の執行に専念する人(執行役員)」を分けて、それぞれの役割分担を明確にする制度です。経営の意思決定・監督機関としての取締役会とその意思決定に基づく業務執行機能を分離し、双方の機能強化を目指しています。

 執行役員は、会社の業務執行に対する責任と権限を持つ役員です。しかし、役員といっても、「代表取締役の指揮命令下にある会社使用人」であり、法的定義のある取締役とは異なります。役員(取締役)は取締役会の意思決定に参加、一方、執行役員は意思決定に直接は参加しない。執行役員は(取締役会から与えられた執行権限を用いて)担当業務の執行を担っていることが多いのではないでしょうか。
 執行役員は法律上は定められていない会社内部の任意的機関であるため、その地位と権限、責任等については明確でない点もあります。

 裁判長の「会社の指揮監督の下に業務を行い、報酬を得ているかを実態に即して判断すべきだ」との指摘はその通りでしょうね。