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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.70(深夜業その1)

2011年06月26日 | 会社の法律ミニレッスン
 会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!
 2週間お休みさせていただきました。

 第70回は、「深夜業」その1です。

■1.深夜業とは? 
 労働基準法では、午後10時から午前5時までの時間帯の労働を深夜業と言います。
 そして、この時間帯に働かせた場合には、その時間については、割増賃金を支払わなければなりません。割増率は2割5分以上です。

■2.所定時間内の深夜業は?
 よく割増というと「残業」のイメージがついています。朝の9時始業で夕方6時終業、それが深夜11時まで残業していた。そうすると
 9時から18時までは、所定労働時間8時間(休憩時間1時間)
 18時から22時までの残業には、時間外労働の割増2割5分(以上)が必要です。
 22時から23時までの残業は、時間外労働の2割5分(以上)+深夜業の2割5分(以上)の割増が必要です。すなわち5割(以上)の割増になり、割増賃金は150%(以上)の賃金の支払いが必要になります。時給1000円の人なら1500円と言うことです。

 うちは交替制を取っていて、C勤務は始業午後9時で終業は翌朝5時の7時間労働なんだけど、この場合はどうなるの?
 時間外労働はありませんから、時間外労働の2割5分(以上)の割増は必要ありません。ですが、この7時間はすべて深夜業の時間帯の労働になっていますから、深夜業の2割5分(以上)の割増が必要です。時間単価分については、所定労働時間として月給額に含まれていますので、2割5分(以上)の割増部分のみの支払いでよいことになります。

■3.深夜業の割増はは時間帯についている
 午後10時以降午前5時までの間に働かせたときには、深夜業の割増が必要です。
 いわゆる管理監督者などであっても深夜業の規定の運用は除外されていません。したがって、深夜の時間帯に部長が働いたら、2割5分増し(以上)の割増賃金を支払わなければなりません。

 フレックスタイム制や事業場外労働のみなし労働時間制、裁量労働制の適用者も同じことです。深夜業の時間帯での労働には(それが所定労働時間の範囲内でも)、深夜業の割増賃金の支払いが必要になります。

「協調型」から「自主行動型」に

2011年06月24日 | 社会保険労務士
【企業が求める人材、協調型より自主行動型 労働政策機構調べ】
               《日経Web 2011/6/24 2:23》より

 企業が求める人材は「協調型」から「自主行動型」に――。人材育成や採用で企業が重視する点について、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した調査でこんな傾向がわかった。これまでは「チームワークを尊重する人材」の育成に力を入れてきたとする企業が多かったが、今後は「指示されたことだけでなく、自ら考えて行動できる人材」を育成したいと答えた企業が78%(複数回答)を占めた。

 調査は従業員100人以上の企業に実施し、3392社から回答を得た。新卒者の採用でこれから重視する点について聞いたところ、「コミュニケーション能力が高い」という回答が69%でトップになった。これまで重視していた点では「仕事に対する熱意」「職業意識や勤労意欲が高い」との答えが多かった。

 今後、企業が重視する能力では「部下や後継者の指導」(73%)「組織や人を管理するマネジメント能力」(同)が上位に入った。組織をまとめる能力を従業員に求める企業が増えているようだ。

   ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 記事にもあるように、仕事への熱意、職業意識と勤労意欲、そしてコミュニケーション能力が新規学卒者の採用における重要ポイントでした。これら3項目は、今後も同じように重視されますが、調査では「チャレンジ精神があること」が3番目に入っていました。
 人材育成においても、今後は「指示されたことだけでなく、自ら考えて行動できる人材」を育成したい考える企業が多かったことと通じますね。

 さて、そのために必要な力とは?

 難しいですね。
 最近、数学が注目されています。数学を通じて鍛えられる力、「論理力」が一番最初に浮かびますが、それだけではなく、例えば「多段思考力」「場合分けの力」などなども必要な力になりそうですね。
 数学科卒の私も、改めて「数学力」に注目しています。


 最後に、調査から
■1.人材育成にあたって重視する能力
 《これまで重視してきた能力》
   経験をもとに着実に仕事を推進する能力…77.8%
   組織の中でチームワークを生み出すコミュニケーション能力…75.1%
   部下や後継者の指導をすることができる能力…57.5%

 《今後求められる能力》
   部下や後継者の指導をすることができる能力…73.1%
   組織や人を管理するマネジメント能力…73.0%
   既存の業務を見直し改善したり新たな発想を生み出せる能力…71.8%
   組織の中でチームワークを生み出すコミュニケーション能力…66.4%
   事業運営方針の策定や企画を行う能力…50.9%


■2.企業が重視する人材
 《これまで企業が育成、確保することを重視してきた人材》
   職場でチームワークを尊重することのできる人材…76.2%
   指示を正確に理解し行動できる人材…62.6%
   担当する職務の基礎となる技能や知識を十分身につけた人材…58.8%

 《今後、企業が育成、確保することを重視する人材》
   指示されたことだけでなく、自ら考え行動することのできる人材…78.0%
   リーダーシップを持ち、担当部署等を引っ張っていける人材…68.2%
   部下の指導や後継者の育成ができる人材…67.2%

「心の病」2年連続最多の1181人が労災申請

2011年06月23日 | メンタルヘルス
 14日に厚生労働省から平成22年度の「脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況」が発表されました。

■1.「過労死」など、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
(1)労災補償の「請求件数」…802件(前年度比35件増)、4年ぶりの増加。
(2)労災補償の「支給決定件数」…285件(同8件減)、3年連続の減少。

 □業種別…請求件数、支給決定件数の順、
  1.運輸業、郵便業…182件(請求件数)、78件(支給決定件数)
  2.卸売・小売業…132件、53件
  3.製造業…118件、35件

 □職種別の請求件数
  輸送・機械運転従事者…156件、事務従事者…110件、サービス職業従事者…85件
 □職種別の支給決定件数
  輸送・機械運転従事者…69件、事務従事者…44件、専門的・技術的職業従事者…40件

 □年齢別(請求件数、支給決定件数)
  1.50~59歳…279件、104件
  2.40~49歳…218件、96件
  3.60歳以上…203件、42件


■2.精神障害などに関する事案の労災補償状況
(1)労災補償の「請求件数」…1,181件(同45件増)、2年連続で過去最高。 
(2)労災補償の「支給決定件数」…308件(同74件増)、過去最高。


 □業種別…請求件数、支給決定件数
  1.製造業…207件、50件
  2.卸売・小売業…198件、46件
  3.医療、福祉…170件、41件

 □職種別請求件数
   事務従事者…329件、専門的・技術的職業従事者…273件、販売従事者…148件
 □職種別支給決定件数
   専門的・技術的職業従事者…73件、事務従事者…61件、販売従事者…44件

 □年齢別(請求件数、支給決定件数)
  1.30~39歳…390件、88件
  2.40~49歳…326件、76件
  3.20~29歳…225件、74件)の順に多い。 
 
 請求件数、支給決定件数ともに過去最高となりました。精神障害に係る労災請求事案の場合、精神障害の結果、自殺(未遂を含む)に至った事案もあります。22年度は1181件中171件(うち業務上認定65件)となっています。

 まずは予防のための対策は大丈夫ですか?
 「職場でのストレスが増大しており、特に人間関係の摩擦が増えている」と分析されています。
  私はコミュニケーションからスタート、「TA」が有効です。
 そして、御社の就業規則は大丈夫ですか?

 具体的に一つ一つ、労災という不幸なことが起こらないように準備・対策をしていきましょう!  

「今後の高年齢者雇用に関する研究会」

2011年06月22日 | 雇用
 久々のブログになります。
 がんばって復活します。今後ともごひいき下さい。

 さて、今日の気になるニュースは「今後の高年齢者雇用」です。

 20日に厚生労働省から「今後の高年齢者雇用に関する研究会」(座長:清家篤 慶応義塾長)の報告書が公表されました。

 再来年度(平成25年度)から、老齢厚生年金・報酬比例部分の65歳への引上げが始まります。60歳になっても年金がもらえない。年金が受給できるまで無年金・無収入となる可能性があるということです。
 また、働く人の数も今後減っていきそうです。労働力の確保を考えると、高年齢者の就業促進が重要な課題となります。
 以下、研究会の概要になります。

 今後の高年齢者雇用に関する研究会報告書~生涯現役社会を目指して~
【現状の課題】
■ 少子高齢化の進展による労働力人口の減少が見込まれる中、経済社会の活力を維持し、
 より多くの人々が社会保障制度などの支え手となりその持続可能性を高めるため、高年
 齢者の知識や経験を経済社会の中で有効に活用することが必要。
■ 現行の年金制度に基づく平成25年度からの老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年
 齢の引上げを目前に控える中、制度上、65歳まで希望者全員の雇用を確保することとな
 っていないため、無年金・無収入となる者が生じる可能性があり、雇用と年金との接続
 が課題。

【今後の高年齢者雇用対策の方向性】
■ 中長期的には、意欲と能力のある高年齢者が可能な限り社会の支え手として活躍でき
 るよう、年齢にかかわりなく働ける「生涯現役社会」を実現する必要がある。
■ 当面は、現行の年金制度の下で雇用と年金を確実に接続させるため、雇用される人の
 全てが少なくとも65歳まで働けるようにするとともに、特に、定年制の対象となる者に
 ついて希望者全員の65歳までの雇用確保を確実に進めることが急務。


【施策の進め方(ポイント)】
■1.希望者全員の65歳までの雇用確保
 希望者全員の65歳までの雇用確保のための方策としては、
  (1) 法定定年年齢を65歳まで引き上げる方法 あるいは、
  (2) 希望者全員についての65歳までの継続雇用を確保する方法
 を考えるべき。
 (1)について、報酬比例部分の支給開始年齢の65歳への引上げ完了までには定年年齢が65歳に引き上げられるよう、引き続き議論することが必要。
 (2)について、継続雇用制度の対象となる高年齢者に関する現行の基準制度は廃止すべき。
 また、雇用確保措置の確実な実施を図るため、未実施企業に対する企業名公表など指導のあり方を検討することが必要。
 (1)(2)のいずれの方策をとる場合でも、賃金・人事処遇制度について、労使の話し合いにより適切な見直しを行うことが必要。

■2.生涯現役社会実現のための環境整備
 生涯現役社会実現のための環境整備として、
  (1) 高齢期を見据えた職業能力開発及び健康管理の推進など
  (2) 高年齢者の多様な雇用・就業機会の確保
  (3) 女性の就労促進
  (4) 超高齢社会に適合した雇用法制及び社会保障制度の検討
 を行っていくべきである。


 今後の予定では、秋頃から労働政策審議会において希望者全員の65歳までの雇用確保策などについての制度的検討がなされるようです。

コンプライアンス経営へ No.69(労基法上の時効)

2011年06月05日 | 会社の法律ミニレッスン
会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第69回は、「労基法上の時効」です。

 労働基準法第115条(時効)
『この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。』

 退職手当に関する時効のみが5年、その他の請求権は2年。

 どうして2年?については、
 最も重要な賃金などの請求権を1年では、労働者保護に欠けます。逆に、10年では使用者(会社)には酷です。それで、2年と言うことのようです。

 賃金請求権、休業手当請求権、年次有給休暇時の賃金請求権、災害補償請求権などがこの適用(2年)をうけます。と言うわけで、未払い残業代の請求の場合もさかのぼれるのは2年になります。

 ただし、退職金については5年。高額になるし、労使間での争いも生じやすいことが理由でしょうか。

 年次有給休暇の請求権も、行政通達で「法第115条の規程により2年の消滅時効が認められる」(昭22.12.15 基発第501号)とされています。

□民法では
 一定期間の経過による権利を取得する「取得時効」と、一定期間の経過による権利が消滅する「消滅時効」の2つがあります。

 民法第162条(所有権の取得時効)
『二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。』

 所得時効は、
   悪意または過失による占有の場合…20年
   善意かつ無過失による占有の場合…10年

 民法第167条(債権等の消滅時効)
『債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。』

 消滅時効は、
   債権の時効…10年
   債権又は所有権以外の財産権…20年

 民法第174条(一年の短期消滅時効)
『次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
一  月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
二  自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
三  運送賃に係る債権
四  旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
五  動産の損料に係る債権』

 これによると、月給・週給・日給のように月単位より短い期間で決めた使用人(労働者)の給料の債権に関する時効は1年と言うことです。

 と先ほどの賃金請求権が2年になって経緯で出てくる1年と10年は民法から出てきています。民法は一般原則を定めていますが、特別法である労働基準法が、それとは異なる2年を時効と定めていますので、特別法の2年が優先されることになります。