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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.55(制裁その3)

2011年01月23日 | 会社の法律ミニレッスン
企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第55回は、「制裁」その3です。

 懲戒を行うときの留意点の続きです。

□4.一事不再理の原則(二重罰の禁止)
 一つの事案に対して2つ以上の懲戒を行っていないこと。これを「一事不再理の原則(二重罰の禁止)」といいます。一事不再理とは、ある犯罪について判決が確定すれば、同一の犯罪について再度審理をしないという、刑事訴訟での原則です。会社における制裁処分でも、この原則が適用されるという考え方が、判例では主流になっています。

 例えば、減給処分を行い、同時に出勤停止処分をすることはできません。

 けれども、制裁事案が起こったときに、処分決定まで「自宅待機」を命じる場合があります。このときは賃金を支払っておれば、この自宅待機(=出勤停止)は正式な処分決定までの暫定措置であり二重処分にはなりません。
 また、以前に懲戒を受けていて、再び同じことを繰り返した場合に、前回以上に重い処分を課すことも二重処分にはあたりません。遅刻を何度もして譴責処分をして注意指導したけれど、再び遅刻を繰り返すので、今度は減給処分を課すことがあると思いますが、これは当然に大丈夫ということです。

□5.手続きの保障
 懲戒処分が適正とされるためには、就業規則に定めた懲戒の手続きに沿った対応が求まられます。特に、懲戒解雇等の重い処分を行う際には、弁明の機会を与える必要があります。

□6.平等主義(不当な動機や目的がない)
 これは、何度も遅刻を繰り返すAさんとBさんがいた場合、Aさんには譴責処分で、Bさんには減給処分では問題があるということです。同じ懲戒事由があれば同じ処分が必要になります。
 時期が前後して、異なる社員を同じ問題行動で処分されるときも前の問題行動の処分と後の問題行動の処分が平等に扱われるべきということです。


■減給制裁の制限
 減給処分はよく使われる懲戒処分ではないでしょうか。
 賃金を減額しますが、減給額が多額になると、社員の生活に大きな影響を及ぼすことになるので、労働基準法では、減給制裁の制限を設けています。『就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。』(労働基準法第91条)

 ところで、出勤停止という懲戒処分もあります。出勤停止期間中の賃金は支払いません。ノーワーク・ノーペイの原則です。出勤停止処分のために賃金が支払われなかったのは当然の結果になります。この場合は、上の第91条の規定(減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額以下、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一以下)とは関係がありません。